昭和歌謡を愛する“平成生まれ女子”が集結 カセットガール、野望はでっかく「海外でライブしたい!」
近年、Z世代の間で「昭和歌謡」の人気が高まっている。ショート動画をはじめとするSNSなどで、当時の名曲に触れ、「初めて聴くのにホッとする」「メロディの耳残りがいい」と、身近になっているようだ。
そんな中、歌唱力に定評があり、昭和歌謡を愛するホリプロ所属のタレントたちで結成されたユニット「カセットガール」が誕生。レギュラー出演する『GINZA CASSETTE SONG』(BS-TBS)や、EPOのヒット曲をカバーした「土曜の夜はパラダイス」のリリースなど、現在精力的に活動している。今回、メンバーの山内鈴蘭、山崎エリイ、竹野留里、飛香まいが、思い入れのある昭和歌謡曲、そしてグループの野望を語ってくれた。
■オーディションで披露した思い出の松田聖子の曲
ーーまず、カセットガールのメンバー構成はどうなっているんでしょうか。先輩でもある山崎裕太さんも一緒に番組に出ていることがありましたが。
山内「最大8人ぐらいですね。番組の回ごとに入れ替わりがあって、柔軟性のあるユニットなんですが、基本の活動はこの4人ですね」
ーー今日ここにいる皆さんは平成生まれですが、昭和歌謡曲との接点はどこにあったんですか。
山内「私、元々スナックに行くのが好きで、お客さんには50代、60代の人たちが多いので、カラオケで昭和歌謡を聴く機会が多かったんですよ。番組収録の前にスナックに行けば、どの曲が盛り上がるのかを、反応を見て学べるっていう。それこそ、エリイちゃんが好きな(松田)聖子さんの曲は、みんな横に揺れてしっとり聴くんだなとか。新小岩、上野にはボトルキープをしている行きつけの店が何軒もあります(笑)」
飛香「ちょうど今度、番組で卒業ソングのメドレーがあって、その中で聖子さんの『制服』を歌うんですけど、私の父はガッツリ世代で、歌うことがすごく嬉しいみたいなんですね。年配の方たちに“刺さる”曲を届けられるのが、光栄だなと思っています」
山内「エリイちゃんは、それこそ昭和歌謡がホリプロに入るきっかけだもんね」
エリイ「そうなんです。私が、ホリプロタレントスカウトキャラバンの『次世代声優アーティストオーディション』を受けたときに、自己PRで周りの子がアニソンを歌う中、この業界に憧れたきっかけでもある聖子さんの『天使のウィンク』を歌わせていただいたんです。たまたま審査員の方々が世代だったので、『すごい印象に残った』って言ってもらえて。番組が始まって、はじめて歌う曲もまさかの『天使のウィンク』で……」
山内「あれはかわいかった」
エリイ「また数年後に、思い入れのある曲をカメラの前で歌うときが来るとはと思って、すごいことだなと思いました」
■リハビリテーション施設で昭和歌謡を歌ったところ「そこの娘、ちょっと来い!」
ーー以前カセットガールで放送していた『オールナイトニッポン』では、エリイさんの「天使のウィンク」はじめ、それぞれが昭和歌謡の推し曲を挙げていましたね。山内さんは岩崎宏美さんの「シンデレラ・ハネムーン」でした。
山内「この曲は、お父さんが車の中でずっと流していて、移動中一緒に歌ったりもしていました。当時、ものまねの番組で、コロッケさんが岩崎宏美さんのものまねをしていたのを見て、そこから私が“岩崎宏美さんのものまねをするコロッケさんのものまね”をするようになったんです(笑)。それを学校でもやっていたら、周りから『コロッケ』って呼ばれるようになって、昭和歌謡がきっかけで“人を笑わせる楽しさ”というか、自分のキャラが出せるようになったんです」
ーーそのものまね、どんな感じなのか気になります。
山内「『山内鈴蘭 コロッケ』で検索すると画像が出てくるので、ぜひ調べていただければ。ちなみに、AKB48時代、番組にコロッケさんがゲストで来てくれたんですよ。そこで真横で一緒にやらせてもらって、ご本人から100点をもらうぐらいでした」
ーー調べます(笑)。飛香さんは中森明菜さんの「北ウイング」でしたね。
飛香「中森明菜さんを気になったきっかけは、これが不思議なんですけど、弟の影響なんです。16歳のデビューしたばかりの中森明菜さんの画像を見て『やばい、初恋かもしれない』って言ったんですよ。確かに、その姿が本当にかわいいし、昔の動画を見たら『なんて素敵な人なんだろう』って思って、どんどんハマっちゃいましたね。もともと家にはあみんさんの『待つわ』とか、寺尾聰さんの『ルビーの指環』などのレコードがあって、家族でカラオケに行ったときにも昭和歌謡を歌いますし、常にそばに昭和歌謡がある生活でした」
ーー皆さんそれぞれエピソードがありますね。竹野さんはイルカさんの「なごり雪」を紹介していました。
竹野「私は4歳の頃から民謡を習っていて、高校生の頃に、『なごり雪』をみんなの前で“民謡の節回し”をわざと入れて披露したんですよ。そしたら、音楽の先生から大変好評をいただいて、嬉しくなってそこからいろんな昭和歌謡を歌うようになりました」
ーー竹野さんは、芸能活動の他にも作業療法士として病院で働かれているんですよね。
竹野「そうなんです。そこでも昭和歌謡のエピソードがあって、治療の方法に『音楽療法』っていうのがあるんですね。患者さんの馴染みのある歌を一緒に歌ったり、演奏したりすることで脳を活性化させるっていう。そこにいつも目を瞑って動かない患者さんがいるんですが、私の歌を聞いたら『ちょっとそこの娘来い!』と呼ばれて行ったら『あんた歌うまいな』って褒めてくれたんです。ほかの先生からは、『あの人がこんな活動的になったの初めてだよ』と言ってくれて、『ああ、歌謡曲が歌える人間でよかったな』と」
■「2作目」「紅白」「レコ大」「世界進出」目標はたくさん
ーー昭和歌謡でこんないろいろ話が出てくるとは……。ちなみにカセットガールで描いている野望みたいなものはありますか?
山内「本当に夢のまた夢ですけど、プロデューサーが『紅白目指す』って言ってたんですよね」
飛香「レコ大獲るみたいなことも言ってましたね」
ーーエリイさん、困惑の表情浮かべていますが。
エリイ「……知らなかった(笑)」
山内「ずっと言ってるんですよ。ホリプロの偉い人たちも期待しているらしくて、日本だけじゃなくて海外でもライブしたいですね。昭和歌謡、シティポップがいま海外からすごく注目されているので、チャンスはあると思っています」
ーー具体的にどの国で歌いたいですか?
山内「みんな海外でライブしたことある?私はシンガポールと、ジャカルタ、台湾とか」
竹野「私はサウジアラビアで歌ったことがあります」
エリイ「私はアジア」
飛香「私はないです」
山内「そうか、アジア圏が多いのか……」
竹野「“ザ・海外”なところに行きたい。ニューヨークとか」
山内「ちょっとそれは大きすぎ!本場過ぎる」
竹野「(気にせず)エッフェル塔の前でも歌いたい」
山内「そこはもう一人で歌ってきてもらって。アジア圏内は日本のカルチャーを愛してくれるのがわかってるから、まずはシンガポールとか、アジア進出ですね。ただ、まだ日本でもスタートしたばかりで、何なら次のCDが出るのか出ないのかもわからないから、まずそこからですね。一作で終わらないようにしたいです!(笑)」
<編集後記>
元AKBの山内さん、声優の山崎エリイさん、民謡歌手兼作業療法士の竹野さん、俳優の飛香さん……と、バックグラウンドもキャラクターもバラバラな性格の4人が集まったので、リハ途中の短い時間のインタビューながら、ワイワイと話は盛り上がっていました。そんな個性的なメンバーをつないでいるのが昭和歌謡なわけで、いかに「共通言語」として優れているのかがわかります。目標はデカいですが、どこまで高みに行くのか注目していかなければ。
<マネージャー談>
元 AKB でグイグイ系の山内鈴蘭、マイペースで松田聖子さんに憧れる山崎エリイ、良くも悪くも平和主義 の女優 飛香まい、そして民謡一筋で日本一の称号を持つ竹野留里。この4人でユニットを組むと聞き、個性が強すぎるのではないかというのがマネージャー陣の最初の印象でした。
この 4 人が果たして同じ 1 曲の中で交じり合うことはできるのだろうかと。 とにかく裏では“不安”という文字がよぎっておりました。
しかし最初のリハーサルでその不安はすぐに吹き飛び、同時に4人の個性が活かされた、 見事なまでのハーモニーが響き渡りました。
BS で放送されていた昭和歌謡を歌う番組で一緒に歌い合っていたこともあり、それぞれが 互いの特性を理解し助長していました。
このような通常ではなかなか編成しない異業種ユニットで EPO さんの名曲を歌わせてもらう喜びと、 オリジナルに引けを取らない贅沢な曲になったのではと自負しております!
<撮影の様子はこちら!>
取材・文/東田俊介
写真/武石早代