「芝居中に自身がスパークしている感覚を味わえることが役者の魅力」役者・永田崇人のはじまりと現在
養成所在学中の2015年に「東京ワンピースタワー『ONE PIECE LIVE ATTRACTION “Welcome to TONGARI Mystery Tour”』」で役者デビューを果たして以降、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』の孤爪研磨役をはじめ、舞台に映像作品にと出演の続く永田崇人。実は名門大学を中退して役者の道へと飛び込んだという彼の、芝居への情熱を聞く。
■若さ故の無知は、夢に飛び込む時には無敵
――役者になろうと心を決めるきっかけになった存在や作品を教えてください。
「高良健吾さんです。作品は映画『横道世之介』ですね。すごいなぁって思いました。高良さんも掲載されていた地元のタウン誌に僕も載っていたのですが、その頃に “俳優になったら?”と言われたこともあって役者になりたいと思って見たのが『横道世之介』でした。すごく衝撃を受けましたし、役者という職業を面白そうだと思わせてくれたのが高良さんでした」
――役者を志すと決意して大学を中退。上京して養成所でお芝居を学ぶことを選択されましたが、今振り返るとその原動力はなんでしたか?
「若さと青さです。怖いもの知らず。それしかないです。当時の自分を振り返ると、何もないところに飛び込むなんてすごいなって自分でも思います。でもあの時の自分には芝居の道しか見えていなかったんですよね。でも今の自分ならきっと飛び込めなかったです。いろいろなことを知識として知った以上、失敗に対する恐怖心や不安が出ると思うんです。なにも知らなかったからこそ飛び込めたと自分でも思います」
――養成所に入ってからの日々。なにも知らないが故の面白さと、だからこそ大変だったことを教えてください。
「お芝居は未経験ですし、未知のものだったんですよね。それに僕は実はシャイなので、恥ずかしさもある。当時は人前でなにかをすることそのものが難しいなと思っていました。でも養成所での日々はずっと楽しかったです。もう一度青春が来たような感覚がありました」
――学びながらもたくさんの壁にぶつかることもあったかと思います。それでも役者の道を諦めない、やっぱり夢を掴みたいと思われたのはなぜですか?
「“やっぱり”という気持ちは微塵もなかったです。最初から役者になるという気持ちしかなかったですから。辛いこともちょこちょこありましたが、お芝居をしていたりお芝居について考えたりする時間が自分にとっては楽しいんです。人生が一番豊かになる時間なような気がしているので、客観的に見てどうなのかはわからないですが自分自身としては天職に出会えたような気がしています」
■役者人生に影響を与えた二人の人物
――その後、東京タワーのイベントで「ONE PIECE」のモンキー・D・ルフィとして約1年に渡るステージを踏みました。あの経験は今のご自身にどのように生きていると感じますか?
「人に見られるということに対して強くなりました。毎日公演があって、千数百回やったので、その経験はすごく大きかったです。稽古も公演も心の底から楽しかったです。まだ養成所の生徒だったので、全てのことが吸収されていくような感覚でした」
――そしてハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』の音駒高校・孤爪研磨との出会い。長年ひとつの役を向き合った経験はいかがでしたか?
「めちゃめちゃ大きいです。原作者である古舘春一先生が寛容なこともあって、自由にお芝居をさせてもらえました。すごくいい作品に出会えたなと今でも誇りに思っていますし、向き合っていた時間は青春でした。何回青春するんだ?ってくらいに青春できることは役者の魅力でもありますね」
――お芝居に対して楽しさを知った経験や気づきを与えてくれた作品を教えてください。
「全ての作品です。ずっと楽しさを感じていますし、どの作品からも気づきの機会をもらっています。いろんな人の考え方に触れたり他者の表現を見たり、自分なりに“こういう感じかな”と考えることも好きです。たまたま偶然に起きたことがいい芝居に繋がってもいきますし、なにが起きるか、なにが生まれるかわからないからこそ芝居は面白いですよね。中でも鈴木裕美さんとの出会いは衝撃的でした。本を読み解くことがどれだけ大事なことかを教えてくれた方です。それからウォーリー木下さんとの出会いです。ウォーリーさんはまさに恩師だなと感じています。ルールがないことを教えてくれたのはウォーリーさんで、ルールがあることを教えてくれたのが裕美さん。これはすごく矛盾していますが、両方がとても大事なことだと思っています。ウォーリーさんはクリエイティヴで、ゼロからみんなで作っていく人ですが、裕美さんは演劇オタクで脚本の読み方をはじめ人に伝えるための形式という芝居のルールを教えてくれました。そのおふたりから身をもって学んできた先にあるのが今の自分だと思います」
■常に「今が一番の勢い」でいられるように。
――現在29歳の永田さん。30歳が目前に迫る今のご心境は?
「30歳になることに対して、ちょっと不安はありますが反面ちょっと嬉しくもあります。20代ってイメージとしても輝きがありますよね。サッカーが好きなのですが、選手のプレイを見ていても20代は人生で最も強い輝きを放つような印象があるんです。30代というとサッカーのプレイヤーとしては旬が過ぎるようなイメージもありますが、30代にしかない輝きやそこにしかないものもあると知っているので楽しみでもあります。自分自身が常に“今が一番勢いがあって楽しい”と思えるメンタルを持ち続けていきたいです」
――そんな永田さんはこのたびミュージカル「バンズ・ヴィジット~迷子の警察音楽隊~」にパピ役で出演されます。舞台への意気込みをお聞かせください。
「僕は警察音楽隊とは違う立場ではあるのですが、そんなパピを掴むために模索しているところです。ただ音楽隊のみなさんがすごく素敵なんですよ。特に本来は俳優ではない楽隊のみなさんが、演奏だけではなくお芝居もめちゃくちゃいいんです。本当に素敵で、見ていてドキドキしちゃいます。役者では出せない空気を持っていらっしゃるので、見入ってしまいますし、音楽もすごくいい曲ばかりなんです。音楽の魅力もあるこの作品で、パピとして一生懸命頑張ります」
【リーズンルッカ’s EYE】永田崇人を深く知るためのQ&A
Q.役者のスイッチをオフにしたときの永田さんが最近“楽しい!”と思うのはどんなことですか?
「サッカーです。ちょっとワールドカップには出られなかったんですけれども……。会見を見ながら代表に呼ばれるのを待っていたのですが、僕ではスタミナがちょっと足りなかったのかもしれないです(笑)。ワールドカップを見ていたら、とんでもないスタミナを要求される試合でしたよね。そんなことを考えながら、オフになるとサッカーをしに行っています。あとはトレーニングをちょこちょこやっています。トレーニングすること自体が楽しくて、今ではすっかり趣味のひとつになっています」
Qトレーニングをはじめたきっかけというと?
「30歳になったら体力作りの意味もあって筋トレをしようと思っていたのですが、その年齢になる前に始めました。先程もお話をしたようにトレーニングすることが楽しいですし、メンタル的にもすごくいい影響があるなと思っています。サッカーもそうですが、やっぱり運動はいいですね」
<編集後記>
芝居の話をするときの目の輝き。同じようにサッカーのことを話すときもキラキラと少年のような瞳を向ける。仕事も趣味も両方を大事に、ライフワークバランスを意識しながら日々を楽しみたいという彼の言葉に、自分も2023年はそんな時間にしたいと思った。そのポジティヴな光で周囲に良き影響を与えるのもまた永田崇人の魅力かも!?
<作品プロデューサー談>
演出の森新太郎さんの猛稽古に対して、ひたむきに、悩みながら挑んでくださっています。
永田さんに演じて頂くパピは、女の子が苦手。彼の実直さがピッタリですし、そんなパピを導く色気ある大人な男性、カーレドを演じて頂くのは、新納慎也さん。ミュージカル『HOPE』で演出:新納さん、主演:永田さんという関係性でしたので、正にこの舞台の関係はピッタリです。二人のデュエットも、永田さんのソロも必聴です!
<作品詳細>
取材・文/えびさわなち
写真/溝口裕也
スタイリスト/東正晃
ヘアメイク/眞弓秀明
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