父のセーラーカラー
今日は8月15日。
この時期思い出すのは、父が亡くなった年の暮れ、実家に帰った時に母が出して見せてくれた父のセーラーカラー。
親を早くに亡くした父は、血のつながらない親戚の家に身を寄せていた。子どもながらに考えたのだろう、戦争中、まだ徴兵対象の年齢ではなかったのに、志願して海軍に入った。いつだったか、軍隊に入れば食べるものと住むところが確保できるからだと確か聞いた。
結局、訓練しているうちに終戦を迎え、彼が戦地に赴くことはなかった。それどころか、もともと住んでいた場所は空襲で焼け野原になり、遠くに疎開に行ったような形になってしまったらしい。
父は昔のことに関しては寡黙だったけれど、軍隊でのことは断片的にポツポツ話してくれることがあった。
船は狭いので、食事をする時もギュウギュウで隣とくっつくように座ったこと、狭いから敬礼も肘をあまり広げないこと、敵国語でも海軍では必要なので英語もちょっと勉強したこと。
本当は飛行機に乗りたかったけれど、視力で引っかかってしまい、海軍に入ったこと。
私が近眼で乱視も少し入っているのは遺伝かもしれないけれど、もし彼の目がよかったら、私は生まれていなかったかもしれない。
父のセーラーカラーは実際に見ると本当に小さくて、こんな子どもが戦争へ行こうとしたのか、と思うとたまらなかった。
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