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北に飛ぶ③ 雪の妖精、シマエナガ
生でシマエナガを見たい!
そう思って、気がついたら札幌にいた。
北海道最大の都市は真っ白だった。
南関東出身の感覚からすると、街に雪が積もる風景は物珍しくてワクワクする。
親しい人に教えてもらった居酒屋でイッパイやる。たらふく飲み食いした割にニセコで食べたカレー+αくらいのお会計だった。食べ物が安くてウマい、これ、これが北海道だよ。
日の出と同時にホテルを出て、地下鉄とバスを乗り継いで札幌郊外の公園に出向いた。里山を整備したような感じで、シマエナガの観察実績があるところだ。
当たり前だが、市街地のように雪かきがされていない。階段は雪に埋まって急坂になる、ということを知った。手すりを掴みやや強引に突破した。展望広場と書かれた場所は、なまらでかい雪山になっていた。ここを散策するとかなりの運動量になりそうだ。
それでも雪道を歩き回るのは楽しい。
2日にわたり、この公園に通った。
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鳥を探し、耳を澄ませながら歩く。ガサゴソガリガリ…と不思議な音が聞こえる。
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北海道らしい生き物に出会えてテンションが上がる。
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…といろいろな鳥さんを見かけるものの、肝心のシマエナガの声はしない。
大砲レンズを抱えた現地のオジサマいわく、「今年は出が悪いねー。いつもなら会える場所でも、なかなか見れない。」だそうだ。ううむ。
だが来たからには。そう思って歩き回ること数十分。林にさしかかると、「ジュリリ」とシマエナガの声がした。心臓が跳ねる。音の聞こえる方に進む。「ジュリリ、ジュリリ…」間違いない。いる。どこだ! 逃げられないようにそっと、しかし必死で歩き、首を振る。
木立の奥に、小さな雪の妖精を見つけた。綿玉のような体に長細い尾羽。間違いない。好きでたまらない人に会うときの、緊張と高揚が入り混じった感覚。カメラを構え望遠レンズを伸ばす。高鳴る心臓と震える手を押さえつけながら必死でシャッターを切った。
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2日のうち、3回もシマエナガの群れに遭遇した。しかも(ブレつつも)飛翔写真まで撮れている。年始早々この豪運。今年はとんでもなくいい年になるのではないか。その前にちゃんと飛行機に乗って帰れるんだろうか。不安が先立つあたり、わたしは小心者だ。
公園訪問2日目、もう帰らなければいけないというタイミング。
バス停へ向かう道すがら、「ジュリリ…ジュリリ…」と妖精の声がした。発車まであと10分、ラストチャンス。探せど探せど姿は見えない。「ジュリリ…」そんな気持ちを知ってか知らずか、シマエナガは鳴き続ける。乗るべきバスが来た。「ジュリリ…ジュリリ…」声はすれど姿が見えない。結局、後ろ髪全部引きちぎられそうになりながらバスに乗った。あれはきっと「またおいで」という妖精の誘いに違いない。今度はもっと立派なレンズ抱えて、また来ます。だから待ってて。春になったらたくさん元気な子を育てて、また連れてきてね……。
カメラをバッグにしまいながら、わたしは何回でもこの土地を訪れるのだろうなと思った。