スカンディナビア半島の記録 #3

 2020年2月19日、ついに僕と友人Hは、フィンランドの首都ヘルシンキに向けて、成田空港を出発した。何事もなく、順調なすべりだしといきたかったのだが、Hの持っていたアイゼンが手荷物検査で引っかかっていた。

 フライト時間が10時間もあるので、現地到着時間(19日の15時頃)に合わせるように半分くらいは寝ていた。Hはすぐに機内サービスで強めの酒を頼み、「高度が高いところだと、酒が早く回るから、(気持ちが)飛べるんだよな」みたいなことを言ってた。うるせえなと思いながら、空返事した。彼は、酒やたばこ等が多分かなり好きなので、正直結構詳しい。知ってることをしゃべりたくなる気持ちはよくわかる。知っていることについて話すときのうるさい度合いを比べたら、多分僕のほうがうるさい。だけど、飛んでいる飛行機の座席にばっちり張り付きながら「飛べるわ」なんていわれても。

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 飛行機がヘルシンキ・ヴァンター空港に到着した。予定よりも30分ほど早かった。ヴァンター空港は、かなりきれいな空港でかなり大きい。荷物を受け取って、入国の手続きを済ませる。入国手続きを抜けてすぐのところに、スーパーがあったので少しのぞいてみた。北欧の物価が高いのは去年既に経験積みなので、あまり値段には驚かないようにしていた。僕たちは「スーパーは案外高いものばっかじゃないんだよ」なんて感じで、北欧知ってますよをいきなりみせた。恥ずかしい男たちである。

 ヘルシンキには国鉄以外に、HSLという市営の交通機関が存在する。ヴァンター空港は中心地からはかなり北に位置するので、電車を使って移動する。HSLの電車には、日本のような乗車前の改札口のようなものはない。駅のホームにある券売機かアプリでチケットを購入する。購入するためには出発地の駅から目的地の駅まで、自分たちがどのゾーンを移動するのか調べなくてはならない。例えば、ヴァンター空港は、ゾーンCの中にある。僕たちが目指すヘルシンキ中央駅はゾーンAの中にあるので、チケットはゾーンAからCまで有効なものを買わなければならない。

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 しかし僕たちは、ヘルシンキ中央駅がどこのゾーンなのかわからなかった。電車が来そうだったので、てきとうにゾーンB・Cのチケットを買って乗り込んだ。電車にのっていると、ヘルシンキ中央駅はゾーンAの駅であることに気がつく。フィンランドでは改札がないが、車内で係員が抜き打ちでチケットを確認することがある。僕は、自分の買ったチケットが中央駅まではいけないと気づいた時、「もし、抜き打ち来たらどうしよう」と思いながら、少し緊張した。小心者なのだ。近くにおそらく同じ便で来た、日本人で同年代くらいの女性が何人かいたので助けてもらおう、それとも車両の清掃をして見逃してもらおうと考えた。

 結局係員がくることのないまま中央駅まで無事にたどり着いた。僕たちは降りると同時に、かけあしで駅の外へ出た。知らない土地へきて、いきなりダッシュ。でも考えてみたら、僕はそんなことばっかりしている。

 高校生の時から、一人でちょっと遠い場所に出かけることが多い。高校一年生の時に、普段は年に一本、ドラえもんやクレヨンしんちゃん以外のアニメを、見るか見ないかの僕が、「あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。」にどハマりした。その時、秩父まで電車を使って、聖地巡礼をしようと出かけたことがある。いろいろとスポットをまわることができたのだが、羊山公園に最後に行こうと思っていた。しかし、それぞれのスポットがかなり離れていて、徒歩で移動していた僕は、かなり時間がたっていることに気がついた。あんまり帰りが遅くなるのも嫌だったし、新秋津の駅で蒙古タンメン中本にいこうと思っていたので、ものすごい勢いで走った。羊山公園の入り口の坂を、車に抜かされながら走った。やっと到着して(アニメの有名なカットでもある)市内が一望できるスポットについた時、secret baseをイヤホンから流した。しかし、イチャついてる大人がいて、全然泣けなかった。僕が外でイチャイチャしている人が嫌いな、小さい小さい原因の一つ。

 中心地についてから、僕たちはまずロッカーを探した。移動が多い今回の旅では、キャリーケースではなくバックパックに荷物を詰めていたが、そいつが10キロもあり、背負い続けるのは軍隊の入門編のようなものである。そして初日は、ヘルシンキで宿泊せず、寝台列車で北部ロヴァニエミへ向かう予定だった。ロッカーの標識をたどって、みてみるとすべてコインロッカーだった。北欧はキャッシュレスがかなり進んでいて、ほとんどの支払いに現金は必要ない。だから現金は持っていなかった。Hが2ユーロだけ持っていたが、2ユーロでは預けることはできない。

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 ここから、今回のすべての期間の中で1,2を争う、本当にキツイ時間が始まる。

 深夜11時に出発する電車がくるまでの間およそ7時間近くを、合計15キロの荷物(バックパック)を持ちながら、ただひたすら待つのであった。

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