スカンディナビア半島の記録 #1
2020年2月19日から3月5日までの約2週間、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーの三ヶ国へ行った。
その時点では、新型コロナウイルスの影響はまだ、いまのように世界規模で深刻なものとなってはいなかった。北欧旅の記録を振り返ろうとなんども思いながら、結局手をつけないまま時間だけが過ぎた。時間とともに流行病も、急速に勢いを増し、2020年3月を一区切りにして、人々を移動、旅行から切り離した。自由に旅行ができるのはいつになるだろうか。
本当は、北欧をめぐりながら、その場で記録を残そうと思っていた。そのために小さめのノートまでもっていった。でもやっぱり、普通そんなことできない。実際できなかった。そんなことできたらかっこいいだろうなという感じだったが、やっぱりそんな簡単にかっこよくはなれなかった。
そもそもなぜ北欧を旅行先に選んだのか。僕は去年、アイスランドに行った。アイスランドには、中学生の時からかなりの関心を持っていた。それには「LIFE!」(主演:ベン・スティラー)という映画が大きく影響している。
この映画では、主人公がグリーンランドとアイスランドを訪れるシーンがある。そのなかで主人公は、ある男を追うために、絵にかいたようなバイキング風の大男が、黒板消しのクリーナーくらいでかいジョッキに入ったビールを飲みながら運転する、ヘリコプターに乗ったり、周囲が自然だけに囲まれた車通りのない道路を、スケートボードで猛スピードで降りたり、エイヤフィヤトラヨークトル火山の噴火に巻き込まれたりする。そんな人間が自由で、自然に囲まれた生活があるんだ、と大きな衝撃を受けた。映画を見た後で、撮影はすべてアイスランドでおこなわれていたことを知った。
そこから僕は、アイスランドという国が、自分の住んでいる日本とはまったく違う場所で、未知の領域であり、憧れであった。氷河なのに火山とかいうゲームの最終ステージだけに許された環境が実在し、しかもそんな場所を、あふれんばかりの車や人間の数に惑わされることなく、味わうことのできる場所は他の国にはないと思った。
そして2019年2月から3月にかけて、ついにアイスランドを訪れることができた。一言でいえば、アイスランドは観光名所で魅せるのではなく、自然と、それらが生み出す厳しさ、それらが魅力である。もちろん首都レイキャビクの街並みや人々も、海外旅行自体が初めての自分には魅力的だった。
アイスランドのお土産屋に売っているシャツや帽子には「アイスランドの天候は10分に一回変わる」という意味の英文が書かれたものがよく売っていた。実際はそこまで頻繁にではないが、確かに天候は変わりやすい。特に風が強かった。永遠に消滅しない台風が、永久に上陸しているとレベルの風が吹き続けていた。気温自体は実はそんなに低くないが、風によって体感温度はとても低くなる。雨が降ってもだれも傘は差さない。もし、雨が降ったら傘を差さなければならない法律があったら、国が傘を専売することで、毎秒年末ジャンボミニの3等が当たり続けるくらいは稼げる。
そんなアイスランドの寒さは、体力的には厳しいものであったが、気分的にはそうでもなかった。ちょうどそのころは大学生活も最低レベルで沈んでいて、日々の生活が一秒も楽しくなかった。アイスランドというあこがれていた場所にいたこと、初めての海外といった要因もあるだろうが、その寒さは、そして寒さにあらがうことは、自分の人間としての感覚を支えたんだなと地獄精神を抜け出したときに強く感じた。
帰るときには、寒さが精神的に働いたことなんてまったく思っていなかった。だけど日本とは社会環境が違い、自然環境も全く違うこと、そして寒いこと、これはいいなと思っていたのかもしれない。次はNordic 5制覇しようと思った。(このNordic 5という言葉は広く使われているものかと思ったら使ってたsimカードのパッケージくらいでしか使われていなかった)
そしてちょうど一年後に、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーにいくことになった。