本当にあった怖い話~真夜中、風呂、独り。
いつの間にか眠ってしまっていた。
時計を見ると
日付も変わりそうな時刻だった。
家族も床に就き、
私ひとり、世界に取り残されたような…。
さておき、身を清めたい。
風呂は毎日入るものだ。
遅くなってしまっても。
静かな家の中を歩く。
疚しいこともないのに音を潜めてしまう。
真夜中とはそういうものだ。
ごそごそと脱衣場を這い出し
一日の汚れやしがらみをシャワーで流す。
ロール式の蓋を半分ほど開け
まだ温かい湯船に浸かる。
これくらいの湯温なら十分だ。
あまり熱いと逆上せてしまうからな…。
…5分ほども経っただろうか。
不意に、
悪寒が襲ってきた。
外はやはり、至って静かだ。
本当に家の者がいるのだろうかと
疑ってしまうほどの静寂。
寒気はひやりと背筋を伝い、
温かいはずの湯をも侵蝕する。
動悸が早まる。
何が起こっているのか…。
湯船の、蓋の奥の暗闇から
何かの気配が漏れ出ているかのように
ひやりとしたものは太腿を撫ぜ回す。
鳥肌を立てながら
乱れかける呼吸を抑え
もう一度辺りをよく見回した。
そして
給湯器の電子パネルに目をやった時
ぎょっとして身が固まった。
『凍結防止🔄』
そう、気温の低さを感知した給湯器が
ポンプが凍結しないよう
冷たい水を回していたのである!
なんという賢さ!
この時刻に入る者などあるまい、と…
悪いのは…そう…私…
そうして惨めな、凍えそうな心を抱え
温もりと決別した身体で
逃げるように風呂を後にしたのだった。
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