核戦争が起きた世界で、映画「渚にて」・「サクリファイス」など
ロシアのプーチン大統領が核兵器の使用を示唆する発言を繰り返したことで、核戦争は非現実的ではないと感じた方も多いと思います。
核戦争という言葉で思い出したのが映画「渚にて」(スタンリー・クレイマー監督)と「サクリファイス」(アンドレイ・タルコフスキー監督)です。
「渚にて」では大規模な核戦争が起こり、世界は破滅的な状況になります。オーストラリアを主な舞台として、終末へと近づく日々を生きる人びとの姿をじっくりと描いています。
「サクリファイス」の主人公アレクサンデルは、言葉を発することができない息子と共に枯れ木に水を与えながら暮らしています。ある日、核戦争が勃発したというニュースが流れます。アレクサンデルは人びとを救ってくれるように神に祈願して、自らを生贄(いけにえ)とする儀式を始めます。物質世界の巨大な暴力に「聖」の世界がどのように向き合うことができるのかを問いかけているように感じました。息子が初めて言葉を発する最後の場面が印象的です。「サクリファイス」は世界の映画史上の名作だと思います。
漫画『火の鳥2 未来編』(手塚治虫)では、未来の世界で人びとはいくつかの巨大なAIに政治などの意思決定をまかせて暮らしています。そのAIが「暴走」して核戦争を起こしてしまいます。「火の鳥」シリーズは生命、文明、人間性、戦争などについて読者に深く鋭く問いかける作品です。
核兵器(原子爆弾)の被爆者となった人びとの惨状を描いた絵画「原爆の図」。丸木位里・丸木俊夫妻の共同制作による作品です。丸木美術館(埼玉県東松山市)に第1部~第14部が常設展示されています。
もし本当に大規模な核戦争が起きたら、地球はどうなるのでしょうか。1980年代にはいわゆる「核の冬」説が唱えられました。核爆発によって生じた煤煙や塵が大気圏の高いところまで上昇して太陽光線をさえぎることになる。そのため地上の気温は大幅に低下して地球上の生物は危機的な状況に追い込まれるという予想です。ただし、この説に対しては否定的な見解も有力なようです。また、核爆発の影響でオゾン層が破壊され紫外線放射量の増加が深刻な影響をもたらすという予想もあります。
映画「渚にて」(スタンリー・クレイマー監督、1959年) 冒頭と最後の場面
映画「サクリファイス」(アンドレイ・タルコフスキー監督、1986年) 予告編
丸木美術館(埼玉県東松山市)
最新シミュレーションモデルで「限定核戦争による影響」を予測(WIRED)
『渚にて(新版)』 ネヴィル・シュート 佐藤龍雄訳 東京創元社(創元SF文庫)
『火の鳥2 未来編』 手塚治虫 KADOKAWA(角川文庫)