小川水素の目指すものとは

小川水素は振付家として日本では非常に稀な存在です。

小川水素の作品と活動の最大の特徴は「コミュニケーション・アート」だということです。

彼女の作品において「振付」は「ルール」という名前に置き換えられます。そこには鍛えられた肉体や卓越したテクニックは必須ではありません。「出演者」は「参加者」であり、誰もが彼女の作品に参加できます。そして参加者にルールを通じた関わり合いを持たざるを得ない、という状況を作ります。そしてそのルールは参加者の同意の下で、さらに変化や発展をしてゆきます。つまり、作品中出演者は、自分以外の誰かとコミュニケーションを取らざるを得ないという環境に身を置くのです。

そのコミュニケーションは観客にも波及します。舞台上で展開するムーブメントを注視しつつ、観客はそこにあるルールを解釈しようと努め、出演者の個性と差異を観察し、人と人が交わることと支えあうこととは一体何なのかを発見します。そこには出演者と観客の無言のコミュニケーションが生まれるのです。

この仕掛けを作り上げることが小川水素の作品の特徴です。

彼女が考えるミッションとは、国籍や性別など背景の異なる人々がそのルールの中で発見した身体感覚を通じ、各々個人の文化背景や価値観に改めて気かせることです。またその活動を通じて、統一されがちな社会に対し、誰もが多様な人種や文化に対し寛容力を持つことができる社会作りをとヴィジョンとして掲げています。

小川水素はコミュニケーション・アートという概念を発展させ、包容力のある社会作りのために貢献できるアーティストだと考えます。

2012/3/5


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