レイヨンヴェール

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最近の記事

虚構の身体の痛みの虚構〜「Processing and Tuning」についての雑感

この作品は「キャッチボール」から始まった。 開場中にジャグリングのボールを投げて受けるというワークショップが行われた。ジャグリングのボールは手に乗せるとずっしりと重く、そして生き物のように柔らかい。私も誰かからの視線を受け、ボールを受け、さらに誰かに視線を投げかけ、そしてボールを投げる。時に緩やかに、時に急激に、時に遊び心を持って。繰り返されるこの楽しい動作の中で、私は無意識に誰かの意思を受け取り、身体でその重みを感じとり、誰かに何かを伝えようとしていた。 作品は「他己紹

    • 光を失う時とは〜&ルフィン「月蝕 lunar eclipse」

      2022年7月29日から31日までの3日間、BankART Stationにて、振付家・遠田誠のプロジェクト、&ルフィン(エンドルフィン)の新作公演「月蝕 lunar eclipse」が開催された。 場内に入ると、BankART Stationのカフェのカウンターが照明で照らされている。 しばらくすると一人の女性が現れ、忙しく掃除を始める。 場内が暗くなるとラジオからは爽やかな音楽とDJの声が流れてきて、景色のいいオープンカフェにいるかのようだ。 DJは、日常のささやかな不

      • 愛されるダンス〜新人Hソケリッサ!について

        この冬から大規模なツアーを敢行する、新人Hソケリッサ!の魅力を勝手に語ります。よろしければご一読をお願いいたします! 「この『魅力』という手垢のついた言葉をもう一度、思いだして欲しい。いくらよく考えられた概念にもとづき、いくら巧みに作られていても、文句なしに人をひきつける力を欠いた表現は、芸術とは言えないのだ。その魅力とは、人々を生きる気にさせる。これは大切なことなのだ。」 これは故・多木浩二が1993年「季刊アート・エクスプレス」にて、ウイリアム・フォーサイスを、そして

        • 平原慎太郎率いるダンスカンパニーOrganWorkは、社会と芸術とのしなやかな接着剤である

          これを解き明かす4つのキーワードをまとめました。OrganWorksを、みなさんに身近に感じていただければ幸いです。 (1) 社会とのオルタネイティブな関係性 作・演出・振付の平原慎太郎氏の創る作品は、時に人間という純粋な存在が社会というヴェールに飲み込まれてゆくような危うさを、時に人間が社会という地面に足をつけて立つ凛々しさを想起させます。それは平原氏の視線が、「社会性」という外部と「芸術性」という内部を激しく交錯しているからであると考えます。人間と社会という、帰属や服

          「魔法にかかるまで、あと5分」 フィリップ・ドゥクフレ / カンパニーDCA 『CONTACT-コンタクト』公演手記

           2016年10月22日・23日、りゅーとぴあ劇場は迷宮と化した。フィリップ・ドゥクフレという男の仕業だ。80年代のヌーヴェルダンスの黎明期にデビューし、フランス革命200週年記念祭パレード、アルベールヴィル冬季オリンピックのセレモニー、パリのキャバレーCRAZY HORSEの演出などを手掛ける、フランスが誇る才能だ。彼の最新作『CONTACT-コンタクト』が新潟にやって来たのだ。  バウハウスを想起させる幾何学に制御された空間。そこに躍動する肌の色の違うダンサー。Nosf

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          『Sutra』はスペクタクル性から離れ、想像の旅を喚起させる

          今日からオーチャードホールで上演されるシディ・ラルビ・シェルカウイの『スートラ』。私のささやかなダンス観劇歴において、5本の指に入る名作だ。実は2008年の初演をアヴィニョンで観ていて、当時在籍していた会社でこの作品を招聘すべく書いた企画書の中に、フランスの情報誌のラルビのインタビューを転載していた。『スートラ』の創作方法とラルビの思想を読み解くための、非常に重要な鍵をここで公開します。拙訳お許しを! 『Sutra』はスペクタクル性から離れ、想像の旅を喚起させる  シデ

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          新・港村CAFÉ LIVE2011

          喧騒ざわめくカフェ。ある時そこにアーティストがやって来る。艶やかな音色を奏で、優美に踊り、煌びやかなひとときを人々に与える。彼らは私たちに一瞬の夢を降り蒔いて、そして去ってゆく。それは映画「ラスト・タンゴ・イン・パリス」のワンシーン。  舞台は新・港村Dゾーン。昼間は生のままの港湾の風景を、夜は遠くの仄かな港の灯りを借景としたカフェテリア。その空間には、有名建築家が設計しBankARTのスタッフが施工した未来の住宅が軒を連ねる。新・港村を訪れた人々にとっての憩いの場所。そこ

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          小川水素の目指すものとは

          小川水素は振付家として日本では非常に稀な存在です。 小川水素の作品と活動の最大の特徴は「コミュニケーション・アート」だということです。 彼女の作品において「振付」は「ルール」という名前に置き換えられます。そこには鍛えられた肉体や卓越したテクニックは必須ではありません。「出演者」は「参加者」であり、誰もが彼女の作品に参加できます。そして参加者にルールを通じた関わり合いを持たざるを得ない、という状況を作ります。そしてそのルールは参加者の同意の下で、さらに変化や発展をしてゆきま

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          抱容力のある社会づくりを目指して

          「芸術は社会の役に立つのだろうか?」 先の震災の際には、多くのアーティストやアートに従事する者がこのことを自問していました。生死の境をさまようような体験をし、大切な人を失い、家も財産も失ってしまった人たちに対し、芸術は何ができるのか、私も本気で考えていました。そして今も答えは見つかっていません。ただ今言えるのは、経済や教育や福祉と同様に、芸術文化とは「生死の問題」である、ということです。 「芸術団体は公的な助成や補助を受けるに値するのだろうか?」 この問いかけに的確に答

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