平原慎太郎率いるダンスカンパニーOrganWorkは、社会と芸術とのしなやかな接着剤である

これを解き明かす4つのキーワードをまとめました。OrganWorksを、みなさんに身近に感じていただければ幸いです。

(1) 社会とのオルタネイティブな関係性

作・演出・振付の平原慎太郎氏の創る作品は、時に人間という純粋な存在が社会というヴェールに飲み込まれてゆくような危うさを、時に人間が社会という地面に足をつけて立つ凛々しさを想起させます。それは平原氏の視線が、「社会性」という外部と「芸術性」という内部を激しく交錯しているからであると考えます。人間と社会という、帰属や服従を求めがちなこの危うい関係性に対し、平原氏は私たちにオルタネイティブな思考を誘発し、社会の多様性についての示唆をもたらしてくれます。

(2) 有機的に増殖する創作手法

平原氏は高度なコンタクトダンスと空間上のフォーメーションを駆使する、有能な振付家であることは間違いありません。特筆したいのは、平原氏の創作は舞踊的な手法だけに止まらない、という点です。古代詩や古典文学などのテキスト、能などの構造性の高い伝統芸術、ヒップホップなどのストリートカルチャー、巨大彫刻などの現代美術を繋げ、増殖をくりかえす細胞のように進化してゆきます。それはコラボレーションというものではなく、一つの明確なビジョンと綿密なコミュニケーションで成立しています。平原氏のこの有機的な手法によって、革新的で唯一無二とも言える作品を私たちは享受することができます。

(3) 高い技術力と強固な集団性が生み出す芸術性

OrganWorksというダンスカンパニーは、バレエ、現代舞踊、ストリートなど、ダンサーの出自は様々ですが、それぞれの技術は非常に高いレベルにあります。それは日常的にカンパニーでレッスンを行い、ダンスメソッドの共有とスキルアップに力を入れているからこそ為せるのです。このような鍛錬は芸術団体には非常に重要であり、結果的に平原氏を中心とした強固な集団を形成し、創作活動サイクルのエンジンとなっています。集団で創造する芸術がいかにかけがえのないものであるか、OrganWorksは私たちに教えてくれます。

(4) オープンな活動姿勢

OrganWorksは公演活動のみならず、「Terra Co.」という振付家養成講座、「トリセツ」という鑑賞入門イベント、「ブレスト」という創作解説イベント、学生向けオープンリハーサルなど、社会に開いたイベントを数多く開催しています。これは、芸術団体が「社会の公共財産」であるという明確な姿勢に基づいていると考えます。現在OrganWorksは、障がいを持つ人たちやダンス未経験の人たちとの共同創作事業を、日本各地の公共団体から数多く請け負っています。平原氏の明るい性格やダンサーたちの謙虚な姿勢は、参加者からの温かい支持を得ています。OrganWorksは世界中のどこで活動しても、そのコミュニティーに溶け込み、触れ合う人たちの心を掴むことでしょう。

2021/2/27


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