【エリコン特別企画】会期終了までひたすら務川慧悟を推していく!(セミファイナル編)
無事務川さん、セミファイナリスト12人に残りました! わ〜パチパチパチ。というかすんばらしい第一次でしたからね〜当然というか。いや、まあ単なる1ファンにすぎない私がプロのピアニストさんの、しかも世界のエリコンに出てくるようなハイレベルのピアニストの皆さんのことをあれこれ言えるわけもないのだが。
でも言わせてもらう! 務川さん、最高だよおおおおお。
というわけで、エリコン応援企画第二弾。セミファイナルの演奏を振り返ってみようと思う。尚セミファイナリストには日本人が他にもいらっしゃるが、もうここは務川さんに特化させてもらうのでよろしく。
セミファイナルは現地日時5月10日(月)から毎日2人ずつ15日(月)まで行われ、最終コンテスタンツの演奏を終えてから約1時間後にファイナリスト6名が発表される。
セミファイナルでは、
1)コンテスタンツはまずモーツァルトのピアノ協奏曲第15番(KV450)、17番 (KV453)、18番(KV456 )、23番(KV488)27番(KV595 )の中から1曲をフランク・ブラレイ指揮ワロニー王立室内管弦楽団と演奏する。
2)引き続きソロリサイタルを行う。各自はコンクールのために委嘱されたピエール・ジョドロフスキ作曲「ノクターン」を含むプログラムを二種類用意し事前に提出する。当日、審査員が1つを指定するので、そのプログラムを演奏する。
ちなみに務川さんが事前に用意した2種類のプログラムは以下の通り。
A ショスタコーヴィチ プレリュードとフーガ第15番変ニ長調Op,87-15
ラフマニノフ コレルリの主題による変奏曲Op.42
ピエール・ジョドロフスキ ノクターン
ラモー ガヴォットと6つのドゥーブル
B ヘンデル シャコンヌHMV435
ラヴェル 高雅で感傷的なワルツ
ブーレーズ アンシーズ
ピエール・ジョドロフスキ ノクターン
で結局プログラムAが選ばれた。
協奏曲は第27番で、ラモーを除いては全て今年に入ってからのコンサートで披露されている。
セミファイナル4日目の5月13日23時15分(ベルギー時刻16時15分)、今回は第一次より早い時間だーと喜ぶ日本のファンの声を背に、務川慧悟さんのセミファイナルが始まった。女性司会者のコールの後、黒いスーツにダークブラウンのシャツと黒マスクを着けた務川さんが、続いて指揮者のブラレイ氏が長髪なびかせながら登壇。ピアノは第一次と同じく側面に「Steinway & sons」、その下に「MAENE」と書かかれている。
モーツァルトピアノ協奏曲第27番。オーケストラの演奏が始まる。この後ピアノ登場まで約3分くらいかかるのだが、務川さんはオーケストラの方に顔を向けたり軽く微笑むなど、表情はリラックスしているように見える。が、配信を見守るこっちは心臓バックバック(笑)。ピアノが入り可憐な第一主題を奏でる。響きを抑えた美しく正確なパッセージ。私は務川さん演奏のこの曲を今年1月に聴いており(2021年1月29日しらかわホール、山下一史指揮セントラル愛知交響楽団)その時より装飾音が多めに入り華やぎが増した気がしたが、華美になりすぎているわけではない。
澄んで可愛らしい音は転調を加え、そして再現部へ。務川さんはブラレイ氏とオケに頻繁に目を配りながらも、美しい装飾音や少しルバートをかけた演奏で「らしさ」を出す。しっかし他のピアニストにも言えることだが、みんななんであんなに鍵盤から目離して演奏できるんだ?笑。
カデンツァはルバートかけた入り、そこから一気にスピードアップのスケールが続き一転、オルゴールのような可憐な音色、そこから一旦完全にピアノから手を離しての休止の後、正確で美しいアルペジオが続き、まるで思い出を語るようにゆったりとしたパートを経て、ラストはトリルで駆け抜ける。
第一楽章が終わり、ブラレイ氏と目を合わせ、はにかんだような笑顔を見せる務川さん。それもそのはず。ブラレイ氏はパリ音楽院でレッスンを受けた師匠。厚い信頼関係があるのだ。
髪をファッサーとブラレイ氏がやったのを確認し、務川さんのピアノソロから緩徐序章の第2楽章。丁寧に静かに穏やかに。入り込む表情の務川さんの右手が静謐な世界を創り出し、左手が夢のように舞う。
第3楽章アレグロ。軽快なロンド主題が何度も繰り返されるが、どの音型もとても丁寧に扱われ、キビキビと明るく楽しく歌っている。カデンツァでは務川さんの魅力が存分に発揮されていた。速いパッセージと焦らすような間は、時にジャズを思わせる大人でお洒落な作り。フィニッシュ! 師匠と交わすホッとした笑顔が素敵っ!
短い休憩の後、リサイタル形式が開始。楽譜を片手に務川さん登場。
最初の曲は、コンクール委嘱のピエール・ジョドロフスキ「ノクターン」。楽譜を置き、おもむろに開始。静かに、執拗に取りすがるような音型の合間にFFの和音が鳴り響く……それが数回続いた後、務川さんは途中で投げ出したかのように1度両手を上に向ける。しかしそこから開始のように曲は次第に盛り上がっていく。乱打、ページめくる、ショットガン、乱れ飛ぶ光線、ページめくる、いや大変。 ペダルを効かせた和音の応酬の後、残り火のように蠢くパッセージを経てFF和音で終了。正解は分からないんだが、いやこれが正解だ。音のコントロールがシャープでカッコよかった。
楽譜を片付け譜面立てを倒し、鍵盤をハンカチでさっと拭き、気持ちを入れる。2曲目ラモー「ガヴォットと6つのドゥーブル」。トリルの装飾音が儚い美しさのガヴォットに6つの変奏(ドゥーブル)。この曲は2018年に務川さんが出場した浜松国際ピアノコンクールの第一次予選で弾き、2020年盟友反田恭平氏とのオンラインコンサート「Hand in hand」でソロ演奏した曲。美しさと切なさで織りなす音のカケラが、聴く者の心と体に次から次へと降り注ぎ堆積していくよう。音数はますます増え、自分の中に音のカケラが堆積していくのを感じると、どうしようもない後悔の念が沸き起こってきた。私は今までどれだけ多くの彼の演奏を聴き逃し、あるいは聴きながらも流してしまったのかと。せつな〜。雨の町を抜けていくような第5曲が終わり、オルゴールが切れるような第6曲があまりに尊い。
3曲目はラフマニノフ「コレルリの主題による変奏曲Op.42」。2020年9月に浜離宮で行われた、東京でのホールデビュー公演で演奏され、その後も演奏会の中心的存在で弾かれ続けてきた曲。バロック時代の作曲家コレルリの古い舞曲をモチーフにした作品を主題とし、ラフマニノフが間奏を挟む20変奏をコーダ付きで作曲した。目まぐるしく変化する曲調に務川さんはバッチリ対応、一曲一曲の密度が濃く、曲が進むごとにどんどんこちらも引き込まれていく。第20曲の暗闇に轟かすような力強い左手の和音の連打。非常に聴き応えがあり手に汗握ったのに、全ては幻だったのだと伝えるようなコーダの余韻。
ここでなんと審査員1名が拍手してしまうハプニング。いやあ気持ちは分かるけどね。務川さんは「もう一曲あります」というように審査員席に頷いてから、すぐにラストの曲ショスタコーヴィチ「プレリュードとフーガ第15番」。この曲も務川さんが演奏会でよく弾いている。歯切れよく軽快なプレリュードはリズミカルだが、一定のテンポで様々な奏法が出てくる難しさに満ちている。間断なくフーガが演奏され、狂乱するようなテンション&高速で一気に駆け抜けて行った! かっこいい! 審査員からもすぐに大拍手! もちろんネット民も大拍手! いやー凄い。精密にはめ込まれたモザイクのようなプログラムだった。
その後なんとインタビューがあるんだよね。フランス語の質問にフランス語で答える務川さん。さすがフランス暮らしが長い! 笑顔多めに、えっと日本にいるときよりめっちゃ喋ってる(笑)。
ここで明らかになったのはプログラムについてで、どうやら愛するバロックをキーワードに、ラモー、コレルリ、プレリュードとフーガ(バッハ平均律の影響)でまとめたということだ。とても完成度の高い、まさに神がかったリサイタルだった。
この後ツィートが興奮したファンによって大荒れになったこと、興奮のあまり我を失ったファン(まあ私だが)が、意味のないツィートを連ツィし思わず仰け反って頭を強打したことは書き記しておこう。
この三日後の5月16日早朝6人のファイナリストが発表され、我が推し務川慧悟氏もめでたく選ばれた! パチパチパチパチ。ということで、どうやら【ファイナル編】まで書き進められそうなので良かった〜。務川さん、ファイト〜!