世界史の大逆転が見えた20240731
「イランでハマス最高幹部イスマイル・ハニヤ政治局長が暗殺」
7月31日未明に知らされた一報は世界全体を震撼させた.
イランとイスラエルの関係悪化は1979年にイランで起こったイスラム革命に遡る.
当時、イランは1925年から続くパフレヴィー王朝による独裁政治が長く続いていた.その後イランに眠る莫大な天然資源を使い米国との貿易を行うがパフレヴィー一族による資源独占が民衆に怒りを蓄える.
遂に1979年にイスラム革命を起こしパフレヴィー王朝の打倒に成功、シーア派だったホメイニ氏が主導で進める.
しかし、シーア派にとって最大の聖地だったエルサレムの土地はイスラエルによって奪われた、という価値観が作り出されてしまった.
それにより両国では国交断絶が行われ、常に緊張が走る状態になった.
この緊張状態をさらなるフェーズに持って行ったのがバラク・オバマ大統領だった.
オバマ大統領は当時、イラク戦争や中東で起こっていた戦争の戦士引き上げを主導し、生命至上主義の政策を打ち出していた.
そこでイランに対し経済制裁を解く代わりに、核開発の制限を設けたのである.
これはアメリカ、欧州連合とイランで結ばれイラン合意と呼ばれる.
しかし、この合意はイランにとっては思いもよらない好転だった.核制限以外は制限されないイランにとって財務の健全化は、レバノンのヒズボラやシリアのアサド政権などのシーア派への支援が可能になる最高の話だった.
この合意をオバマ大統領は「イランの核への道は途絶えた」と自己評価していたが、完全にイランに足元を見られた結果だった.
その後、2016年にアメリカ大統領に就任したトランプ氏によってイラン合意脱退が実現したが、これほどまでの失態は無いと歴史に名を残すことになる.
このイラン合意に対してもイスラエルは強く抗議し、実際中東地域の武力格差による不均衡がいつ爆発してもおかしくない状態だった.
そして今日に至る.
シーア派のハマスの最高幹部が暗殺された事件は、シーア派にとっては侮辱以外に何もない.
イランにとっても報復以外の手立ては考えられない.イスラエルとイランの関係はイスラエル革命を期に一気に冷え込むが、一度も直接的な武力闘争が起こったことはなかった.
今回の暗殺がイラン・イスラエル革命の発端となり、宗教戦争である以上、周辺国を巻き込んだ中東戦争が起こってもおかしくない状態が続く.
4月にすでにイランはシリアのイラン大使館空爆に対してイスラエルへの報復を行っている.この時はイスラエル側に報復通知を出し、避難の時間を与えていたが、今回はイランの首都であり政治の中心であるテヘランで暗殺が起こっている.
今回のようにイランでの政治式典が行われる中での暗殺はイランの面子の部分でも大きなダメージがあり、安全面で政治の不安定化が考えられる.
そのためサプライズ的報復が予想されるが、この報復が中東全土の引き金にならないかが十分な懸念材料になる.
我々日本人は蚊帳の外で「no more war」と訴えるが、戦争を止めるだけが最適な解決法とは言い難いのが中東情勢であり、帝政ロシアによる占領、土地破壊のモノカルチャー経済の台頭、中国の中東進出など先進国側にも多くの問題があり、今の中東情勢を作ってきた.
アメリカや中国と関係を持つ日本としても問題を蚊帳の外で見守るのには限界がある.現在議論される集団的自衛権や日米安保条約、核武装の議論などが早急に急がれる.
特に、中国の台湾進出による情勢は西側資本主義諸国と東側共産主義諸国との関係を悪化させ、日本は厳しい立ち位置に陥ることになる.
日本にも徐々に悪い煙が立ち込めてきているのである.