薔薇の牧場に舞う者は 009
@アデレード・南オーストラリア
「どうだい?少しは満足できたかな?」
満足しているはずがない。そんなことは解り切っている。が、きいてみた。
「満足してはいないわ。」
ヤッパリ!
「してはいないけど······でも······そうね······。ほんの少し、朧げながら見えてきたものがある。」
本当に?!見せてきたのは幾つかのエピソード!それだけで見えるものがあるなんて!
「そうか。それは良かった。」と言った途端に反撃を食らった。
「何が良かった、よ。一番肝腎なものを出し惜しみしてるじゃないの!」
「と、いうと?」
「2020/1月 新春#1:体験レッスン申し込み者訪問の件よ。前にも言ったけど、この件についてはデータ精査しても本質が見えて来ない。事実を検索することは可能でも、それが如何なる意味を持ち、如何なる影響を研究所に与えたのか、が解らない。そろそろこの件について詳しい話を聞かせて欲しいわ。周辺事項のエピソードだけじゃなく······。」
「何度も聞くが、それを知ってどうするんだ?君にとって何の意味があるんだ?」
「私の存在意味よ。私の存在意味がそこにあるような気がするの。と、いうか、私の存在意味がそこから始まっているような·····」
「君の存在意味?」
「そう。私という存在はなぜ生まれてきたのか?なぜ今ここにいるのか?それを知りたい。」
「なぜだ?」
「解っているじゃないの!私が“人間”じゃないからよ!!」
「······」
「私は“人間”の立場で物事を見、“人間”の立場で物事を判断し結論を出す。それは確か。でも“人間”じゃない。そんな私がなぜ創造されたのか?私の創造主は私に何をさせたいのか?
それを知りたいの。
「多分、この新春#1に続く話の中にその重大なヒントがあるような気がするの。
違うかしら?」
「どうしても聞きたい?」
「どうしても聞きたい!」
「わかった。それじゃあ話そう。新春#2だ。」