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暁遙かなり

今回はマブラヴシリーズのスピンオフSLG「暁遙かなり」について紹介したい。このゲームは非常に出来が良く、既に攻略や考察はされつくしているので、特にあたらしい考察というほどのものはないので、ただ魅力を紹介するだけと思ってください。

暁遙かなりはそもそもマブラヴオルタードフェーブルという作品に含まれているミニゲーム作品である。だが、ミニゲームとはいえ、その完成度と難易度はそれ単独で何十時間でもやり込めるレベルである。もはやこっちが本編と言う人もいるくらいだ(多分)。

マブラヴの本編自体は基本的にノベルゲーであり、ストーリーを追うという仕様なのだが、反面戦術機を操ってBETAを実際に倒すという遊び方を求めるプレーヤーが居ても不思議はない。近年になって、ソシャゲやSteamプラットフォームでいくつかそれに類する作品が出ているが、ゲームジャンルの違いこそあれ「実際のBETAとの戦闘のリアル」を最も突き詰めているのはこの「暁遙かなり」であると断言できる。

ソシャゲ(多分3作品くらい過去にあったが全部終了(予定含む)している)に関してはどうしても戦闘パートの作りこみは不可能であり、マブラヴを追求してきた人間としては、あれはもうそういう別ジャンルのゲームと思うしかないというのが実際のところである。Project MIKHAILは一人称の操作ゲーとしてその点を追求した作品となっており、一定の評価ができる一方で、マブラヴ世界の「戦争の実態」という点ではどうしても乖離があるだろう。

「暁遙かなり」では、その「戦争の実態」を嫌というほど体験できるし、本篇の細かい設定を反映した戦略性の高さが本当にすごい。ターン性SLGの形式であるため、ごちゃごちゃとした乱戦が表現できるか疑問かもしれないが、実際にプレイすると本当にBETAとの乱戦を実感させてくれる出来になっているのだ。

マブラヴでは戦術機とBETAの戦いが、各BETA種の特徴を踏まえて展開される。「暁遙かなり」でもその細かい設定は忠実に再現されており、それぞれの硬度や速度、旋回性、向きによる弱点などが事細かに設定として反映されている。また、武器の威力や射程、弾数、兵科、推進剤の残量、果てはフィールドに存在する障害物の高さや耐久度なども戦略の要素であり、光線級が居れば当然高さと障害物の計算を基に射線が通れば撃ち落とされる。

そして、他の作品とは異なり、実際のゲーム通り、敵も味方も基本的に簡単に死ぬ。何も考えず、他のSLGのように突っ込むと一番簡単な難易度でもクリアできないだろう。敵も簡単に死ぬのだが、これも本編の通り「物量」がBETA最大の武器であることがよく分かる。そもそも敵のHP的な要素は「個体数」で表現されており、難易度の違いは単純に個体数の違いだけで表現される。それなのに上記の各種制限が絶妙に作用し、難易度が段違いに上がっていくのである。味方のHP的要素も中隊戦術機の数で表される(12機が0になったらそのユニットは消滅)。なのでキャンペーンモードではストーリー中に一度減った機体数は回復しない(笑)。死んだ機体は蘇らないからだ。なのでユニット間の連携はそのまま部隊間の連携を意味しており、その点でも中隊編制が揃っていることの重要性や部隊間連携の意義がよく分かる。熟練度が低い部隊での突撃級撃破などは正面でひきつける部隊と、それを後ろから撃つ部隊の連携などが重要な要素になるのだ。

また、「暁遙かなり」の評価したい最大の点は「飛行」要素である。この作品は戦術機が飛べる。本編でもある通り、空さえ飛べればBETAは無力である。この作品でも飛行すればBETAの攻撃は全て無効化でき、一方的に殲滅できる。一方で、光線級が居る状態で飛行すると当然一瞬で落とされる。付近に光線級が居なければ戦域の光線級を全滅させた時点で飛行が可能となり、無敵モードに入るのだが(推進剤の問題はあるが)、この時の勝利感は堪らない。逆に言えば、光線級吶喊を再現して敵の最奥にいる光線級を先に倒すという戦略が取れるステージもあるのだが、この基本事項はマブラヴ本編で繰り返し語られている要素であり、これをキッチリ表現しているのは凄いと思う。逆に言えば、他の戦術機ゲーム作品で移動が噴射地表面滑走(サーフェシング)ばかりで立体的な機動がほとんどできないのは意味が分からない。光線級さえ居ないなら飛べばいいのに。戦術機は立体的な機動ができて初めて価値があるという教えを思い出せと言いたい。

また、武の得意としたアクロバティック機動の重要性を再現できているのもすごいと思う。このゲームでは戦術機の熟練度的なレベルが設定されており、レベルが低いと普通の移動や攻撃しかできないが、高くなると反転噴射跳躍や噴射降下などの機動が使えるようになるし、回避率も上がる。SLGだと派手さは無く、向きがすぐに変わったり障害物を飛び越えたりという意味合いになるのだが、この機動で光線級のレーザーを空撃ちさせて相手の攻撃間隔を発生させ、その間に接近して倒すなどの戦略が重要になる。SLGでよくここまで対BETA戦の要素を詰め込み、高いゲーム性を維持したまま再現できたものだと感心する。

あと個人的にこのゲームで好きなポイントは難易度設定の名称である。
VeryEasyから始まり、徐々に難しくなっていくのだが、Hard⇒VeryHard⇒Hellと難易度が上がっていき、最上位の難易度が「Real」となる。ゲーム上では「この世界の人類が直面している現実の難易度です」と表現される。現実が地獄より上にあるのが、実態を如実に表していて好きだ。

ちなみに難易度Realの敵の物量は半端ではなく、マジで難しい。私も結構やりこんだが、Realのキャンペーンモードを無傷でクリアした記憶は無い。この世界だと目的達成が最優先で衛士の生還はラッキーなおまけというセリフがあるが、まさにその通りだと思う。実際途中までは戦力温存のために生き残りを優先したプレーをするのだが、最後の方は、クリアを確実にするために逆に囮に使った方が楽になるのだ。この辺りもマジでRealだと思う。

この、あまりの難易度の高さは恐らく一般向けではないのでミニゲームという枠組みでしか実現できなかったクオリティのゲームなのだろう。機会があれば遊んでみてほしい。いきなりRealで始めてみると、オルタ世界の初陣の現実が本当に体験できる。8分以内に全滅すると思うから。


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