(二十四)歌には七五調が多い
短歌・俳句が七五調なのはそうだが、都々逸もそうである。その他はどうなのだろう。歌謡曲などにも七五調は沢山ある。ヒット曲「千曲川」を次に掲載しよう。
水の流れに花びらをそっと浮かべて泣いた人
忘れな草にかえらぬ恋を思い出させる信濃の旅よ
七五の単純な繰り返しだ。作詞は山口洋子であるが、彼女の詞は七五、或いは七七調の作品を多く残している。
・折れた煙草の吸いがらで 貴方の嘘が分かるのよ
・川は流れる橋の下 まるで二人の恋のように
・女心の悲しさなんて分かりゃしないわ 世間の人に
この他にも、歌謡曲には七五調は多い。また、文部省唱歌は、七五調の歌が多い。
(紅葉)
秋の夕日に照る山紅葉
濃いも薄いも数あるなかに
松を彩る楓や蔦は
山の麓の裾模様
(こいのぼり)
甍の波と雲の波 重なる波の中空を
橘かおる朝風に 高く泳ぐや鯉幟
(茶摘み)
夏も近づく八十八夜 野にも山にも若葉が茂る
あれは茶摘みじゃないか 茜だすきに菅の傘
(我は海の子)
我は海の子白浪の
さわぐいそべの松原に
煙たなびくとまやこそ
我がなつかしき住家なれ
この様に、限りがないので、この辺でやめておく。
日本の歌は、七五調が非常に多い事は否定出来ない。七五調が多い理由は、それが日本語のリズムに合致している事が最も大きな理由であるが、それと、歴史・故事を記録するのに覚え易い歌謡の形式を採用した時、その歌謡形式が七五調であったため、長く伝統の形式として生き続けたからである。