(2)君臣の義とは、君主と臣下の間の1対1の契約を意味した

義の字は、我の上に羊が置かれている。羊は神の代理人なので、これを神と看做すと、「己より神を優先する」を意味する。実際、義には、義務、約束、契約、道理という意味が付加されている。別な言葉で言うと、義務、約束、契約、道理は、どれも、自分のしたい事より優先すべき事柄である。
 古代中国では、君臣の義が強調されているが、この言葉の本来の意味は君主と臣下が1対1の君臣の関係を結ぶ契約という意味である。それでは、君臣の契約とはどのような契約であろう。春秋時代、仕官する際に、君侯と臣下が雇用契約書を交わすわけではないので、明確な内容はない。朝廷に出仕して、君侯の言葉を解釈して、自己の利益より君侯の利益になることを実行するという意味に解釈できる。
 往々にして、「君臣の義」と「夫婦の別」が並べられ、同じような意味として捉えられているかも知れない。しかし、この両者は全く似ていない。夫婦の別とは、男女が結婚して夫婦となり、互いに異なる役割を分かち合い、補足し合う関係を言うのである。君臣にはその様な関係はないのである。
因みに、現代漢語の「義務」の意味として、中英辞典(商務印書館)では次の三つを挙げている。
・duty, obligation 義務。
・voluntary ボランティアの。 義務労働
・compulsory 強制的な。〜education 義務教育
 
 

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