【Ratopia】ゲームレビュー
現在Steamで販売中のゲーム、Ratopiaが面白かった。
どのくらいかと言えば、二週間以上の間仕事や睡眠など生活に必要な時間以外をすべて費やし、こうしてnoteに登録して記事を書いてしまうくらいにはのめり込んだ。
執筆時点で総プレイ時間は約150時間。普通難易度、三回目の建国でエンディングを迎えた。Steamの実績も大方解放し、やりたいこともある程度やったにも関わらずRatopiaへの熱が冷めないためレビューを書くことにした。
Ratopiaにストーリーはほとんど存在しないが、ゲーム内容にはある程度触れるため、完全所見で楽しみたい方はぜひこの記事ではなくSteamの販売ページへ行ってみてほしい。
Ratopiaについて
読み方は「ラットピア」
韓国のインディーゲーム開発会社Cassel Gamesが開発している。リリース日は2023年11月6日。現在早期アクセス中で定期的にアップデートが入っている。日本語対応有。
早期アクセスゲームとは正式リリース前の開発段階のゲームのこと。Ratopiaも現状ではバグや最適化不足を感じる部分はあるが、Steamでの評価は9/10と非常に好評で、私も早期アクセスと値段を考慮すれば十分満足いくゲームだと思う。
ゲームジャンルとしてはコロニーシミュレーションが一番該当するだろう。街づくり系とも言えるか。さらに上記の謳い文句のようにMinecraftやどうぶつの森のようなサンドボックス要素、にゃんこ大戦争やDungeon Warfareのようなタワーディフェンス的な防衛戦闘も存在する。
プレイヤーはネズミの国から亡命してきた王女を操作して、都市国家を統治する。
Ratopiaの魅力
コロニーシミュレーションゲームの起源はどこにあるのだろうか。私はプレイしたことがないが噂に聞くDwarf Fortressか。著名なところではRimWorldやFrostpunkが挙がるかもしれない。最近ではTimberbormというビーバーが主役のゲームが素晴らしく、私は300時間以上プレイした。
溢れんばかりの魅力と可能性の詰まったジャンルだと私は思うが、ジャンルとして確立されたのは意外と最近に感じる。もっと賑わうことを期待している。
コロニーシミュを構成する要素としては
1.新天地に入植して生活基盤を構築する
2.外敵や厳しい自然環境を乗り越えるために策を巡らせる
3.共通の敵に対しての脅威が薄れ出すと内部でも問題が起き始める
4.それらの問題を上手くコントロールしながらコロニーを発展させる
5.勝利条件がある場合はそれを目指すし、なければひたすら発展させる
こんなところだろうか。
Ratopiaも上記の要素を含んでおり、複数の勝利条件が存在する。達成するとエンディングを迎えることもプレイを続行することもできる。
さて、私の思うRatopiaの魅力についてだが、大きく分けると政治と経済、都市開発、戦闘、可愛いネズミ達の4つだ。
政治と経済
1.為替と貿易
Ratopiaの経済システムは、私がこれまで触れてきたゲームと比較して独特だった。ネズミ達の知能は高く、金属を加工した独自通貨を使用している。
建国した都市には自国通貨の「ピア」が流通しており、離れた都市では「ダール」という通貨が流通している。
この2つの異なる通貨を利用した外国為替要素がRatopiaの世界には存在する。と言っても、リアルで個人が通貨価値の差を利用して利益を出す手法とは違う。プレイヤーは都市国家を経営する身だ。立場としては中央銀行、日銀に近い。
国債金利や政策金利という表現は出てこないが、自国通貨の価値をある程度操作できる。国債のような要素は一応存在するのだが、他の都市国家から借り入れという表現になっている。国の借金なので現代的には国債と言えるか。
変動相場制であることは確かなのだが、現状ではどうやって操作しているのかは不透明だ。現代で通貨の価値を左右する要素は金利の差、景気と物価、政治的要素、実需取引などと言われるらしいが、Ratopiaには「貿易」も存在する。
このシステムによって、ピア安、ピア高の相場を作り出して物の輸出入で都市を豊かにする戦略が生まれている。早期アクセス中ゆえに通貨と商品価格の変動、輸出入に複雑さが欠けている部分はあるのだが、要素として非常に面白いと感じる。予定されているアップデートで内容が強化されるようだ。
2.政治
Ratopiaでは「独自の法律」を導入することができる。分類は税法、商法、福祉法、労働法の4つ。
私はこの仕様を見たとき非常にテンションが上がった。こういう具体的なシミュレーションシステムを自分で設定できるのはワクワクする。
それと同時に最初に躓いた要素でもある。おそらくRatopiaを初めてプレイした人が最も苦戦するのは、資金管理の部分だと思う。私はシステムを理解するまでに最初の都市を壊滅させて、新たな都市を半壊させてしまった。
まず、Ratopiaでは市民は特定の業務に従事することになるのだが、なにをするにもお金がかかる。
食事、娯楽、施設の利用に自身の仕事で使う資材の調達にもだ。その代わり労働にはしっかり対価が発生する。公務員には賃金が支払われ、他の職業では製品を納入もしくはサービスを提供すると利益が発生する。
採掘や採集、運搬といったあらゆる要素に対価が発生するため、序盤は税金を徴収しなければ国庫は空になるしか道はないのだ。国庫が空になれば国家は存続できない。
税金を徴収できるようになるまで進めてもそれで安定とはいかず、誰に何パーセントの税金を課すのか、所得に対してか資産に対してかなど設定が可能だ。この税収だけではバランス調整が難しく、特定の補助金や給付金を支給するなどして市民の保有するお金と、国庫のお金の比率を調整する。
しかもこれだけではマネーサプライ(流通通貨供給量)は増加しない。国庫と国民の懐を豊かにするためにはさらにアクションが必要になる。
私はこういう表を眺めるのが大好きなので、試行錯誤しながら収支の調整をするのが本当に楽しかった。A列車で行こうを思い出した。
都市開発
Ratopiaは2Dのブロックで構成されたフィールドが舞台。さらに複数のバイオームが存在しており、場所によって異なる資源を獲得できる。ネズミらしく地下も地上も自由に探索と建設が可能。
序盤は採掘と採集を行い生活領域の拡大と食料の確保をする。
ある程度土地を切り開いたら、施設を建設して市民に仕事を振る。
建造物には原材料、生産、サービス、軍事などの分類があり、研究ツリーで順次開放していく必要がある。このシステムも楽しい。
1.幸福度
都市開発を進めていく最中でも、ただ掘って建築するだけではない。市民達には「幸福度」という数値があり、この数値が低下すると犯罪者になったり王政に反旗を翻すのだ。プレイヤーは常に市民達が幸福を感じられるような国家経営が求められる。
「幸福度」は複数の要素から構成されており、食べ物、娯楽、衛生、生活用品、収入、税金と多岐に渡る。ちゃんと衛生にも気を遣えるネズミ達。
敵の襲撃から都市を守りつつ、厳しい冬を乗り越えて市民達の幸福にも気を配る。適当に都市を拡大していくと、国庫と食料が底を尽き、襲撃で施設は破壊されて散々な目に遭う。Ratopiaの難易度は可愛い見た目に反してシビアな部類だと思う。
この「幸福度」に加えて、都市開発をさらに面白くする要素が3つある。
2.市民名簿
市民数が少ないうちは用途がわからなかったが、市民をグループ分けするための「市民名簿」という機能がある。
これを使うことにより、都市の中で居住区や生産区を分けて、特定のグループに対して法律を施行することも可能になる。
この機能によって、部署や区、棟やギルドなんかを作成することができてシミュレーションが捗る。ちなみに画像で紫の帽子を被っているのはキノコ栽培所のベティちゃん。
3.階級制度
なんとネズミ達の世界には社会階級が存在する。
階級は貧困層、中産階級、上流階級の3つで、市民達の名前の横についている葉っぱマークの色で見分けがつくようになっている。
階級は市民の所持金と生活用品数で決定され、階級ごとに利用できる施設や購入できる商品が違う。どの階級を優遇する政策を実施するのか、搾取するのかはプレイヤー次第だ。
4.装飾品
コロニーシミュや街づくりゲームではシビアな世界観も多く、Ratopiaも難易度はそれなりにシビアなのだが、雰囲気は可愛らしい。どこにどんな施設を置くのか、どんな部屋にするのか、都市のレイアウトには個性が出るだろう。
可愛い小物を配置して自分好みのレイアウトを考える楽しさは、有名なところではどうぶつの森に似ているかもしれない。のちほど紹介するが、市民と女王の衣装も豊富にある。
戦闘
ネズミ達には外敵が存在する。
2024年6月10日時点での敵はゾンビラットとイタチ族の2種。今後さらなる敵が追加されるらしい。
序盤は王女自ら敵を討ち取る機会が多いが、都市が発展すれば罠を使って大半の敵を処理することが可能になる。ここらへんで防衛戦闘がTDゲームのようなスタイルになる。
複数の罠と兵士を使った戦闘は、昔狂ったように遊んだDungeon Warfareを思い出した。設置した罠が綺麗に動作して敵を残滅するのは楽しい。
個人的にはもっとTD的な方向に戦闘の複雑さを上げてくれたら嬉しい。現状では戦闘バランスに物足りなさを感じるし、操作性も良くはないのでそこは今後のアップデートに期待するところだ。
可愛いネズミ達
これまで3つの魅力を紹介してきたが、一番気に入っているのはネズミ達の可愛さだ。
好みの分かれる部分だが、私はどんなにゲームシステムが面白くても絵柄が気に入らないと購買意欲は湧かないし熱中も難しい。それゆえにRimWorldやOxygen Not Includedは買う気になれないし、海外のゲームは苦手な物も多い。
Ratopiaはとにかく市民のネズミ達が可愛い。
物を買えば「いいでしょー!」と言わんばかりに見せてくれるし、ベッドがあっても疲れたらその辺で寝てしまう。
よくわからないところで急にドヤるし、作物を育てるときは変な踊りをする。可愛すぎか。
ネズミ達にはそれぞれ性格が存在しており、職業適性などに影響する。
仕立屋を営むアヤちゃんは潔癖ぎみな平和主義者。砂漠地帯の出身でお母さんが仕立屋をしていた(これは私の妄想設定)。綺麗好きで、戦闘が発生すると幸福度が下がってしまうが、きっと彼女の仕事は繊細で素敵なお洋服を作っていることだろう。気難しそうなお顔もとても可愛い。
診療所のリリーちゃんは、ネズミ医学を履修した遊び手で依存的な医師。……なんだかちょっとエッチに感じてしまう。彼女は我が国の狩人が未熟だった頃いつも治療に奔走してくれた頼りになる存在。
このように市民達にはそれぞれ個性があり、職業ごとに制服が用意されている。王女には完全にただのコスプレ衣装もあって、制作者のネズミ愛を感じる。
※画像が一部ボケてしまっているのは私が拡大して無理に解像度を上げたため。ご容赦いただきたい。
以上が私の思うRatopiaの魅力。10段階評価なら現状で8.5点をあげたい。
Ratopiaの不満点
大変面白いと言えるゲームだが、不満点もあって一番はバグ。市民達の行動に不具合が生じる場合がある。特定のバイオームか距離まで離れると帰って来れなくなったり、市民の挙動がおかしくなったりなど。
これは開発途中かつインディーゲームなので理解はできるが改善を強く望む。
二番目は操作性の悪さ。特に戦闘面での操作はキーボードマウスのデフォ設定だとクリックと切り替えの回数が多く、煩わしいと感じる場面もあった。この二つの部分で低評価を下す人は一定数いると思う。惜しい。
あとはイベント数や他国との関係性、戦闘面、終盤楽しめる要素などに物足りなさはあるが、これはリリースから定期的にアップデートが入っているので今後に期待できる。
あとがき
実に楽しい二週間だった。こんなに熱中したゲームは前述のTimberborn以来だ。時間はかかるだろうが、Ratopiaがより洗練されて正式リリースするのを心待ちにしている。楽しいゲームをありがとう。
それでは、Ratopiaの未来に乾杯。