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#小説
【霊能探偵怪奇譚】空っぽになる少女・5(終)
『ところで瀬織、あの時何を見たの?』
ファミレスから出て自宅兼事務所であるマンションに戻る途中、泪が瀬織に尋ねた。
「あの女性の記憶……」
『記憶?』
瀬織は頷き見たものをかいつまんで話し始めた。
「幸せから絶望に変わる記憶だった……。幸せな結婚式、可愛い子供。でも……」
瀬織は言葉を詰まらせた。その記憶は彼女の心を痛めるものだった。
「ある日暖炉の火が原因で顔に火傷の傷ができてしま
【霊能探偵怪奇譚】空っぽになる少女・4
白い光が消え、ミタマと瀬織の意識が現実世界に戻ってきた。二人は同時に目を開けた。
「うっ...」
瀬織が小さくうめいた。
『大丈夫か?』
ミタマが心配そうに尋ねる。
瀬織がゆっくりと周りを見回すと、そこは元いた場所、あの家の廊下だった。暗い廊下を、窓から差し込む月明かりが青白く照らしていた。
「大丈夫。ちょっと頭がぼんやりしてるだけ」
瀬織は弱々しく微笑む。
『よかった...本当に
【霊能探偵怪奇譚】空っぽになる少女・3
虚ろな瞳はじっとミタマを見る。
何を考えているのか、何を感じているのか、ミタマには全くわからない。
しかし、ふと女性の口が動いていることに気が付いた。
『ん?何だ?何を言ってるんだ?』
じっと見ても、唇が動くだけで声は届かない。
それでも、同じ言葉を繰り返しているということは分かった。
『ああ、もう、ちゃんと読唇術勉強しとけばよかったぜ……あの時なんで真面目に聞かなかったんだ』
後悔の念を
【霊能探偵怪奇譚】空っぽになる少女・2
白く何かが光った。
ミタマは眩しさで目を少し細めた。決して着物の女から目を離さないようにしながら。
その光は、極寒の中に現れた希望にも見えた。
『何この寒さ!!アタシの美しい毛皮がガビガビになるじゃない!どうなってるのよ!』
唐突に少女の声がした。
その声は、白い光とともに現れた、細長い毛の生えた蛇のように見える物体から発せられていた。ふわふわとミタマの周りを漂いながら、寒さを堪えるかのように
【霊能探偵怪奇譚】空っぽになる少女・1
ギシリ、と家鳴りがした。
突然聞こえたその音は、古い家が軋むような不気味な音だった。
その家鳴りが始まって間もなく、誰もいないはずの二階の廊下から、まるで誰かが歩いているような音が聞こえてきた。
その音は、水に濡れた素足で歩いているようなピチャ、ピチャとした不快な音で、ゆっくりと廊下を進んでいるように聞こえた。
階下を目指し、一歩ずつ。確実に。
その足音が階段に近づくにつれ、階段を伝い冷気が