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なくしてからわかる、香りの大切さ(コロナ嗅覚障害)

子供の頃、小指を突き指して
しばらく使えなくなった時、
すごく不便だと感じたことがある。
普段目立った働きをしていないようなところも、
しっかり役目を持っているんだと
気づかされた大切な経験だ。

実は先日から、その時と同じような不便さ、
そしてそれに加え不安も感じていることがある。
なぜならそのことが、
命にも関わるような重要なことだからだ。

今日は、私の身体に起こった嗅覚障害について
書いてみようと思う。

コロナ陽性5日目に起きたこと

2日間続いた39度以上の熱が下がってから、
次は今までに感じたことのないような喉の痛みに
襲われた。
でも、幸いオンライン診療を受診することができ
すぐに薬を処方してもらうことができたので、
このまま順調に回復するだろうと安心していた
陽性から5日目のこと。

「アロマオイルでも焚いて
ゆっくりストレッチでもしてみよう」
と思い、アロマディフューザーで
ラベンダーの香りを焚いてみた。
しかし、頭の中でイメージした香りが
鼻の奥に届いてこない。

「古くて香りがとんだのかな?」
他のオイルで試してみるも、
まったく香りがしない。

これはもしかして、
一番恐れていた嗅覚障害かもしれない。
焦った私は、
特別な日に使うヘアオイル、
部屋の芳香剤、飾ってあるストックの花、
大好きな香りがするものに次々と鼻に近づけるが、
安心させてくれる香りはまったくしない。

「匂いがしなくなっているんだ・・・」
香りが私の前から消えてしまったことを
ようやく自覚したのはこのときだった。

生活を豊かにしてくれる香りの存在

私にとっての香りとは、自分を癒してくれるもの。
アロマオイルも芳香剤もストックの花も、
その匂いを嗅げば、
それまでツンツンとしていた気持ちが緩む。
前のめりになっていた気持ちは一旦リセットされ、
「まあまあゆっくり行こうよ」
という気持ちになる。
だから私は、いつも香りを
自分のそばに置くようにしていた。

しかしその香りが、
自分の前から全部いなくなってしまった。
悲しいとか怖いとか、
そういう形容詞では表せない
呆然とした状態になった。


香りは食事にも大きく関わっている。
食欲がわくのは、香りがあるからだ。
食事は口に入れ、味を感じるだけではなく、
その前から始まっている。
香りから味を想像し、
口に入れた瞬間そのイメージと味が一致することで、
「美味しい」という気持ちがつくられる。
食べる前に香りがなかったら
美味しいと思う気持ちは、
普段の半分も感じることができない。

ちなみに、香りが喪失したと同時に味も喪失してしまい、
今は塩辛い・甘いくらいしか感じることができない。

香りも味もしない。
だから食欲もわかないのだが、
食べなかったら、
きっとどんどん感覚が鈍っていくだろうと思い、
味を想像して触感をいつも以上に感じることを
意識して食事をしている毎日だ。

命を守るのに欠かせない香りの存在

香りの存在を感じることができなくなってから
非常に気を付けていることがある。

世の中にはいい香りだけではなく、
臭い匂いもある。
普段は鼻を塞ぎ、
匂いを受け取らないようにしているが
実はこの臭い匂いの存在が、
命を助けてくれているのだ。

臭い匂いを感じなくなった今、
私はガスなどの有害物質の匂いを
感じることができない。
危険が近くにあっても、気づくことができないのだ。

日常生活で、有毒物質が近く人あるということは
滅多にないだろうが、
匂いを感じなくなった分、
意識して周りの状況を気にしておく
必要はあるだろうと思っている。

再生を願って

癒やしのための香り、
命の危険を知らせてくれる香り、
食べたい気持ちをサポートしてくれる香り。
香りは思った以上に
私の日常に大きく関わっていたことを
この数日で改めて思い知らされた。
香りがいつもそばにあるから、
毎日が彩られるのだ。

香りを感じなくなってから、
アロマオイルで嗅覚トレーニングをしたり、
健康食品や漢方薬を服用しているが、
残念ながら未だ、完全に回復はしていない。

それでも、
最初はまったく感じなかった
アロマオイルのラベンダーの
香りを感じることができたり、
薄っすらとカレーの匂いを感じることができたり
もしていて、
そんな小さな変化を感じることで、
前向きな気持ちを保っている。
ゼロだったものをここまで感じることが
できるようになったのだ。
諦めずに色々と試していたら、
いつかは元通りになってくれるだろう。

香りや味がしないと、
生活の質はすごく下がる。
でも、今呼吸ができる、
食べ物を噛んで飲み込むことができる、
階段を登ったり降りたりすることができる、
そして話すことも書くことも問題ない。
できることはたくさんあるし、
どの部分も頑張って働いてくれている。

今あるものに感謝しながら、
完全回復できるように、
金木犀の香りをイメージしつつ
ゆっくりと毎日を過ごしたいと思う。

※2023年2月7日追記
幸い、コロナ感染から2週間くらいで味覚・嗅覚とも正常になりました。
以前、突発性難聴になったことがあるのですがその時
「細い神経が死んでしまっている可能性があるので、
一刻も早く対処することが必要」と言われたことがあります。
母の顔面神経がおかしくなった時も、
すぐに顔面のマッサージをするように主治医から言われました。
私は医療の知識はありませんが、
人間の神経はとても繊細でとにかくすぐに対応しないとその機能をどんどん失うように思います。匂いを感じないと気づいたらなるべく早く、嗅覚に刺激を与えることが大切なのかもしれません。