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観劇「かえってきたQUEEN DOM 〜文化女子の戦におけるかくも腹黒き百花繚乱戦国絵巻」

ようやく、ようやく劇場で見ることができた。
RAVE塾の作品はほぼ観ていて、作品としては一通り一回は劇場に行っていたのに、QUEEN DOMだけ、二回とも配信だった。そして今回、ようやく劇場へ。
QUEEN DOMとは女王の治める国。文化部全てを牛耳っていたダンス部。それが不祥事を起こして活動停止。女王の座から陥落。他の部は、部費を含めた良い待遇を求めて、覇権争いを始める。
話の大筋としては何回も配信で観て知っていたが、今回、最初に感じた違和感が、ここの不祥事の内容。大麻。
重すぎないか? そうなると、普通なら、高校生が大麻で逮捕されたということ自体がメインストーリーとなっても良いくらいのテーマ。
確かに、昨今は高校生でも珍しくないのかもしれないが、でも一般的には主題となっても遜色ないテーマ。
しかし、最後の最後、ここは大きい、インパクトのあるものではないといけなかった
と気づかされる。
緊迫感というより、コメディタッチで描かれる覇権争い。それぞれが主張をしていく。
普通に考えれば、弁論部が最も強そうに見えるが、そういうわけでもない。
RAVE塾の作品は、部活動を中心にバトルというのがある程度定番に見えるが、持って立ち向かう武器は部活特有の物というわけではない。伝統や知名度など、客観的に見えるものを武器の一つとし、描かれるチームワーク。
QueenDumは覇権争い。前回の璃色リベリオンは生き残り。対極ともいえるものを持ってくるあたりがまた憎い。

放送部がとにかく覇権を取ろうと躍起になる中、演劇部や弁論部が、対抗意識を燃やしているという展開。形的には、演劇部が対抗し、弁論部はそこまで貪欲ではないという感じか。ラスト、演劇部の目論見と作品のテーマからすると、主役は演劇部だったと言えるのだが、当然、そのことは劇中でも隠し、また、見ている観客へも隠さないといけない。
そんな中、今回、鍵を握る演劇部の部長が交代し、これまで強い演劇部部長を演じていた崎野萌さんが副部長に。そしてその演劇部部長はというと、なんか、少し弱い? 自分の以前の記憶や感想を見ても、演劇部部長は強かった気がしていた。攻めのスタイルで、それこそ、女王の様な強さ。ところが今回は少し弱い。
そんなことを考えていたら、買収騒ぎがばれて・・という展開へ。
買収がばれるという展開、あったっけ? ここまで追い込まれている様子はあまり覚えがない。むしろこの展開は、璃色リベリオンに近い。そんな感じがしていると、演劇部の副部長が頼もしく見える。
まさか、買収の責任をとって、部長交代という展開かと思ったけど、そうではなかった。
それを考慮して比較すると、前回の崎野部長はまあ強い。それこそ、力技でトップになりそうな勢い。弁論部がかすんでいたくらい。それが今回、少しそのパワーを落としたことで、途中、演劇部大丈夫かと見せる。前回の展開を知っている身としても楽しめる展開。そこに、崎野萌さんの副部長が、なんやらブレーンとして動いている感があり、それにより、サブタイトル「腹黒さ」がより誇張される。
腹黒い人はやはり前面には出ない。前回が「動」であれば「静」の動きで見せてくれた萌さんの演技はやはり面白い。
そしてもう一つ。もっともっと喋る弁論部として、萌さんが演じたらどうなっていただろうと思う。他の作品でも見せた長台詞などを考えても、ちょっと見てみたいと思った。

そういえば、最初に萌さんを観た時も、女子高生役だった。そこから数年、キレイになりすぎて、このまま行くと、大人すぎる女子高生になりそう。
そして、その要因の1つに、昨年から、他団体で重い時代、背景を背負った役をこなしてきた経験が大きいのか、女子高生の枠ではもったいない気すらしてしまう。

この2つの理由から、ちょっと闇を背負ったような女子高生役でも面白そうだ。それは、これまでのRAVE塾ではなかなかない役かもしれない。でも、こういうテイストだからこそ、萌さんの経験が活きて素晴らしい作品になる予感がする。自分でも萌さんを当て書きした闇深き作品を書きたいなぁ。それだけの魅力がある。

弁論部の黒崎澪さんは、前から知っていて教師役も似合っていた。今回は弁論部という役。これがまた似合ってたなぁ。
雰囲気バッチリで、もっと観たかったくらい。 
セリフも凄く丁寧で聞きやすくて、ミスもない。弁論部という役柄からも、理路整然とし、聞き取りやすく、言霊としてぶつける。それを背負った役だからこそ、全キャストの中では一番。
萌さんの弁論部も見たいと思ったが、この二人が裁判で闘ったら…と妄想してしまう。RAVE塾さん、学級裁判テーマに作品書いてくれないかなぁ…。

この作品が世に出てから1年近く。当時も部活は連帯責任という事が物議を醸したことがあった。この1年の間に、”連帯責任”で、部員が並んで頭を下げる動画もあった。まさに、こういうところを言っているのだろう。
何かあれば「チームなのだから」と大人が命じて連帯責任をとらせようとする。そうすることで、集団で生きている中では、一人のミスが皆に迷惑をかける。もっと言えば、そのせいで巻き込むのは、自分たちだけじゃない。教師や周りの大人たちも巻き込むんだ。そのせいで職を失うかもしれない。どうしてくれる。
だったら、世間の炎上を抑えるため、最大限の同情を引こう。
それは大人が泣きをみることじゃない(見たくもない)
そうだ。子供が痛い目を見たら、同情をひけるじゃないか。
こんな、図式が目に見えて取れる。最初はそうじゃなかったかもしれない。苦しみも分かち合おうということだったかもしれない。でも、現代となっては、大人のそんな”腹黒さ”が見えてしまう。

この作品を何度か見ているうち、本当に腹黒いのは大人たちだ。そんなメッセージが見て取れるようになった。

だからこそ、「大麻」だったのだ。タバコはお酒などではなく大麻。タバコやお酒は、少し背伸びしたという理由の元、なんとなく軽く見られる感がある。だが大麻は違う。大人になっても処分される。一昔前なら、本当に地域を巻き込んでの大騒動になる。
蔓延している今、そこまで報道されないことも少なくないが、これは大人だって処分される。それだけのものだ。だからこそ、ダンス部のあの処分は妥当と思わせる。
学生における社会問題と、そう思わせるギリギリのラインでの犯罪。それにはドラッグが確かに適当な素材だったかもしれない。
でも、だからこそ、ひっくり返した時、大きな罪かもしれないけど、そのために一生懸命やってきた人たちまで、それまでの時間を棒に振る必要はない。
友達が大麻により逮捕された。その事実は、周りにとって深く刻まれるし、忘れることはない。だからこそ、最後に自分たちの成果を発揮する場が必要。満足のいく結果が出ないかもしれない。もしかしたら、その怒りは大麻で逮捕された友達に向けられるかもしれない。でも、何もできず、ぶつけようのない想いを背負わされるよりは、ずっといいのかもしれない。

客層は「現役」ではない人たちが多いが、だからこそ、いいのかもしれない。
大人になった人たちが、大人の事情で子供たちを縛り付ける。知らず知らずのうちに、似たようなことをやっていたかもしれない。胸が痛くなる人もいるかもしれない。
ただ、忘れていけないのは、あくまで作品としてはコメディタッチで散々笑わせ、時に、分かりやすい腹黒さを見せ続け、でも最後には友人を救いたい一心でルールに立ち向かう。大人の保身という巨悪に対し、立ち向かう強さがある。
そこに気が付いた時、この作品は大きく様相を変える。
今度は数年後、この中の生徒たちが教師になり、そして同じ様なことが発生した時、大人の事情に負けずにいられるのか、そんな物語も観てみたい。

配信があるおかげで、劇場で観た物語をしっかりと細部まで観ることができる。
これはやっぱり嬉しいことだなあ。グッズ通販もしてくれたおかげで、観劇後に気になった人のグッズも買うことができた。今回は、黒崎さんと優莉奈さんのグッズも購入。優莉奈さんは初めてのRAVE塾だったらしいけど、違和感なく、また他の作品、団体での演技を観たい。
黒崎さんは、たびたび縁があるので、いつか挨拶できたらなあ、と。

RAVE塾は、経験豊富な人たちと、これからという人たちが混ざっていて、そしてそれがいい形で融合している気がする。だからこそ、このような展開の中に、裏に強いメッセージがある。そのメッセージを、全編使ってシリアスに描くには、それなりの経験がある人たちが必要になるところ、裏に隠すことで色々な人たちが関わることができている。そして何より、楽しい作品になっているが印象的。観ているときは、余計なことを考えずに楽しく観ることができて、後から考えるとメッセージに気が付く。さすが。

やはり、一番腹黒かったのは、運営さんたちのようだ。


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