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舞台「ミッション・イン東京物語」感想

今回、大澤実環さん出演ということで観劇へ。とは言え、名前を知っている人や、久しぶりに生で演技を観られる人などが多く、見ごたえあり。
いつもは土曜日に観劇に行くけど、今週は年に2回の出勤日と重なり、いつもなら観劇は諦めていた。でも、コロナのおかげで宴会はなくなり、会議の終わり次第では間に合うかも…でも、他にも行きたい作品がたくさんある。悩んだ結果、最悪の場合でも何とかなるのが、シブゲキだった。ということで、不思議な縁で、観劇へ。

実環さんのファンになったのは、ほんの数か月前。それまでも何回か観劇した作品に出ていたけど、意識していなかったのもあり、ほぼ記憶になく。それが配信でファンになり、実質、しっかりと注目して観るのは今回が初めて。
とはいえ、同じ配信での朗読劇で、やっぱり足元がしっかりと固まっている人だと感じたので、今回は本当に楽しみだった。

さて。物語はウイルスとカリスマ教祖を主軸に、それを阻止するスパイのお話し。
ただ、ウイルスと言っても、今のコロナのようなものではなく、完全に人為的に作ろうとしている話。
正直、このコロナウィルスが蔓延した時、「神の選別」とか「陰謀」とか色々妄想して書きたくなったけど、問題がありそうだから、そんな気持ちすらも書かないでいた。
今回、ウイルスときいて、そんな世界と絡むかと思ったらそうではなかった。
完全に、一人の人間のエゴを書いた話。

カリスマ教祖、というと、過去にも世界で色々な犯罪史に名前が残っていたりして、あまり良い印象があるとは考えづらい。そして本作品でも、カリスマ教祖をあがめる信者たちが描かれている。
人体実験をし、ウイルスを開発するのは、神への挑戦でもあり、ビジネスでもある。負けを知らない、そんな如月。徹底した悪として描くのは簡単だけど、無邪気な子供のように残酷なことをするのが、また怖い。
正義と悪。その定義は置かれる立場、考え方で変わる。殺人ウイルスも、例えば、極悪人と定義された人たちのみに使えば、正義とされるかもしれない。でも、人の命を奪うことが「悪」ならば、結局は悪になる。
「悪」の描き方は多種多様、千差万別。観ている側が怒りを覚えるような描き方もあれば、悪だとわかっていも同乗してしまう場合もある。
でも、怖さのある「悪」の描き方が一番きつい。

如月はその典型的だった。全く罪悪感がない。夢のためという大義名分のもと、多くの命を弄ぶ。彼に言わせれば、ウイルスのきかない身体なのだから、どれだけ投与してもいいだろう理論。「減るもんじゃないし」といったところか。
無邪気な子供のように、平然と命を扱う様子こそ、怖いものはない。如月は、背筋が凍るほどの恐ろしさはなかった。そこまで壊れてはいなかった。
もしもっと狂った感じに描かれていたのなら、鶴子を強姦したのも、単純に自分にないものを持っている女性を知りたかった。もっと言えば、どのくらいの確率で妊娠するのか。そんなふざけた、でも本人にとっては純粋な疑問からの行動の様に見えていたかもしれない。
もしそうなら、如月も犯罪史に残る存在だったかもしれない。

そこまでの役に仕立て上げなかったのは、この作品がコメディだったからではないかと思った。悪として描きながら、でもそこを強くしすぎると、コメディ色が消えてしまう。コメディで片をつけられなくなってしまう。
そのバランスが実にうまい。悪を書いていると、どうしてもワクワクして、とことん悪とし
て書きたくなってしまう。でも、抑えすぎるとつまらない。

思えば、脚本の加藤さんは、ジャシリカでの悪の書き方も実によかった。あの作品はいまだに好きだし、冒頭の長台詞には度肝を抜かれた。遊び心のある脚本が好き。
悪もどこか憎めない悪に仕上げる。コメディの悪だと、それが大事なんだろうなあと思う。
赤の入った衣装で、何となくジャシリカも思い出した。ああいう作品また観たい。
そして、もっと遊び心の入った加藤さんの作品で、実環さんを観たい。
実環さんの演技の中で、偉そうに言うと、感心してしまったのが、アンデッドになって倒れていた時。立ちあがろうとするシーンで、普通に手をついて立つのではなく、一度手首を返していた。
細かいけど、これがアンデッドっぽかった。
アンデッドの特徴。焦点の合っていない目。これをされると、アンデッドだなあと思うんだけど、そもそも、なんでああなるか。意識らしい意識はなく、ただ動いているだけ。
今回は掛け声が号令にもなっていたけど、本来は、本能のまま動く。そんなイメージ。
そしてもう一つのイメージといえば、ふらふらと歩き回る。背筋をピーンと伸ばして歩くことなんかない。ダラダラと、軟体動物のように歩く。
そう。だから、立ちあがろうとするときも、キレイに手をついて、すっとなんか立てない。
もちろん、すっと立っていた人はいなかったと思う。ゆらゆらと揺れながら立っていたと思う。でも、そもそも、立ちあがる前、身体がゆらゆらと動く性質からすると、倒れているときもゆらゆら揺れてるのが普通。そう考えると、手首を返して、また戻してという「非効率」が自然。
初日の配信も申し込んであったので、そこで同じシーンを観たら、その時は手首を返していなかった。もしかして、公演途中に、そのように変えたのかなと思った。

結局、コンビニ店員だけど、コンビニシーンは僅か。とは言え、気の利くコンビニ店員・もしくは少し抜けたコンビニ店員と、どちらにでもとれる優しさを見せ、でも、後で如月のファンということを知ると、愛するが故の行為かと納得する。
如月を見る目は、恋ではない。憧れ。この微妙な違いを、表情でうまく演じていたと思う。
そして何より、やっぱり、聞きやすい声質と声量。うん。やっぱり凄い。

この作品、スぺ―スデブリっ娘で観た2人がメインキャストということで、なんかワクワク。上田操さんは、やっぱり、気になる存在になってきた。
春咲暖さんは、見た目と違ってしっかりとした演技をされていて驚いた。最後の方にファンになって観た無観客ラストライブとはイメージが全く異なり、次の出演作も観たくなった。

そしてお久しぶりだったのが柳瀬さん。フラグメさんの作品は、何度も観たし写真集も物販で買った。チェキも撮ったこともあるけど、生で見るのは久しぶり。でも、安定の存在感と安心感。ラスボスすらできる存在感は、最後に何かあるんじゃないかと疑ってしまうくらい。この人は配信でも見たけど、やっぱり生で観たい人の一人、と人に勧めたい役者さん。

しかし、この作品、続編作れるよね。如月にはあくまでサブキャラだし、全く別のストーリーで。ただ、ヒナは元の体に戻る薬ができたら、特技がなくなるから、スパイとしてどこまで機能するか・・。そしたら、コンビニ店員・佐竹の出番かな。
埼玉支部もあるくらいだし、他にもありそうだし。
ちょっと、それはそれで楽しみだなあ。

場所的に良かったというのもあるけれど、それも考えてみれば偶然の奇跡。
めぐり合えてとても良い作品だった。

配信まだ他の回も買いたいと思ってる。アフタートークまで観られるし、全員出演回もいいなあと思ってる。
DVDも申し込んだけど、もう少し配信で楽しみたいなあ。

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