ソウルの魅力① 城壁編
初めてお隣の国ソウルを訪ねたのは1年前のちょうど今頃だった。その後2回、
1年間に合計3回訪問した。最初の訪問目的は、いわゆる推し活と日本で仲良くなった留学生との再会だったのだが、実際に訪問して思いのほか魅力を感じたのは、ソウルの中心部を囲む城壁を歩くことだった。初めは、ドラマでも時々出てくるロケ地を見てみる程度だと思っていたが、実際に歩き始めると延々と続く城壁は切れ目がなく、眺望のすばらしさと壮大さに圧倒されたのだった。作られた意味や過程に思いを馳せると、自ずと歴史への関心も高まった。
東大門から恵化門まで
5月の最初の訪問は、有名観光地を巡る予定でまず東大門へ行った。市場は通り抜ける程度にして、東大門をしばし眺めてぐるりと裏側に回ると、ソウル城郭の城壁が見えたので登ってみる。少し登って振り返るとソウルの街が一望できた。素晴らしい眺望に満足してすぐに引き返すかと思ったが、連れはもう少し歩こうと言う。宗廟や昌徳宮へも行く予定だったし、上り坂なので足の疲れを感じるが、切れ目がないので歩き続けていると、少しづつ楽しくなってきた。陽ざしを背に汗をかきながら、いつの時代にどれ程の時間をかけてつくったのか、修復された部分は何があったのか、万里の長城もこんな感じなのだろうかなどと思いな道を登る。それでも城壁はどこまでも続く。所々にある案内板を何ヶ所も見て展望台があることがわかりほっとする。展望台からはソウルの街がさらに広く見渡せた。展望台で休憩してあたりを見回すと、そこから先は下り坂になっていた。下り坂になっても美しい城壁はどこまでも続くが、遠くの山々や街が見えるので、足取りは軽くなった。地下鉄恵化駅への案内板を見つけて、広い道路にぶつかり城壁がようやく途切れた。道路で途切れたものの、さらに城壁は続いてるようだったが、次の予定があるのでここまでにする。恵化駅まで少し歩いて地下鉄 4 号線に乗り東大門駅へ戻った。かなりの達成感で心も軽く城壁を後にしたのだった。
青瓦台から彰義門から北村へ
9月の再訪では、青瓦台へ行き昨年まで実際に大統領が執務していた部屋や居住地などを見学した。韓国人の団体客が多く世界各国の人々が見学していた。居住地の内部までは見学できなかったが、ドラマ「サバイバー」を思い浮かべながら広い庭を散策して歩くと、城壁沿いの上り坂が見える小さな出口があった。守衛のおじさんに聞くと30分程で展望台まで 行けると言われて登り始める。城壁に沿って歩き続けると景福宮やソウル市内が一望できる展望台へ着く。城壁は続いているが、その先は何時間かかるかわからないと言われていたので、別の方向へ下り、バスで尹東柱文学館へ向かうことにする。 バスを降りると目の前に彰義門が見えた。文学館の後ろの散策路を歩きだすと城壁につながっていた。整備された階段なのだが、足がすくむ程の急こう配だ。途中、北朝鮮兵が青瓦台を攻撃したという銃弾跡の松の木を見る。昨年までここは通行できなかった場所だ。様々な歴史的背景を想像しながらひたすら階段を上り続けると、白岳山(342 メートル)の頂上へたどりついた。さらに城壁は続いているが、次の予定もあるので下りを選ぶ。脇に水が流れる自然公園のような下り坂は、整備中の場所が何ヶ所かあって、最後は北村の街へ出た。このコースは健脚向けだが、達成感は大きかった。
南山公園からNソウルタワー
3回目の訪問は、Nソウルタワーのイベントに参加するため、会賢駅から南山公園を目指した。12月の寒い冬でトイレが不安だしお腹もすいたので、駅を出てすぐの韓国料理のお店に入る。満腹になりトイレを済ませて店を出ると、すぐ横にものすごく急な階段がある。手すりを頼りに登りきると目の前に南山公園の入口が見えた。安重根記念館と銅像を見てから、ケーブルカーに乗ろうとあたりを見回すと、なんと城壁が見えるではないか。城壁を目にしたら登らないわけにはいかない。時間は充分あるので、ケーブルカーには乗らずにゆっくり歩いて登ることにする。Nソウルタワーが少しずつ大きくなる。どの場所で振り返ってもソウル市内が一望できる最高の眺めだ。1 時間以上階段を登り続けて、なんとかNソウルタワー に着いた。イベント参加の仲間達に徒歩で登って来たと言うと驚かれた。イベントを楽しんだ後、下りは仲間とケーブルカーに乗ることにしたが、チケット売り場で下りの片道チケットを買う人は誰もいなかった。初心者向けだが、少し誇らしく窓越しではない眺望の素晴らしさを皆に語った。
水原
ソウルから1時間程離れた水原にも美しい城壁があると知って9月に訪問した。1800年頃ソウルからの遷都で造られた水原華城は、世界遺産に登録されている。現在はソウルのベッドタウンになっていて、水原駅周辺はマンションが立ち並び世界遺産の影も形もない。バス乗り場もきれいに整備され、多くのバスの発着があるため、世界遺産行きのバスはわからなかった。バス待ちの若い女子に聞くと親切に教えてくれてバスに乗り込む。窓の外を眺めながらしばらく走ると門らしきものが見えたので慌てて降りる。やはりバスは難しい。降りた場所は目指した八達門ではなく華西門だったが、曇りだった天気がどんどん良くなり、陽の光に映える緑が美しい。城壁が見えたのでひたすら歩く。風が爽やかで暑さを感じることはない。城壁が途切れて行きあたった道は、なんとドラマ「梨泰院クラス」のロケ地らしき通りだった。バス停はないがカーブのある坂道で走るパク・ソジュンを想像した。水原華城を囲む城壁を1周することはできなかったが、美しい景色と人々が集う市場を楽しんで満足の城壁巡りだった。
終わりに
3回の訪問でソウル城郭の4分の3を巡った。完全制覇を目指し、次回は南西側に挑戦しようと思う。水原も行ったし、ソウル以外のさらに古い時代の城壁も興味深い。城壁巡りは、街を静かに見下ろしながら歴史に思いを馳せ、達成感を味わいたい方にお勧めです。