特別な人①父の思い出
10年前の今日、父は永眠した。朝、家族がいる自宅の布団の中で最後の大きな呼吸の後、静かに息を止めた。死とはこういうものなのだと思わせる、穏やかな最後だった。その瞬間涙は出なかった。悲しみより、判断能力の落ちた母に代わって、一人娘の私がこの後何をどうすればいいのか頭をフル回転させなければならなかったからだ。医者を呼び、親戚に知らせ、必要な手続きなど次々とやる事があった。無性に涙が止まらなくなったのは、焼き場で真っ白な美しい骨を見てからだった。昭和歌謡の「骨まで愛して」という曲