家族で挑んだ海外MBAとその成果

新婚妻の甘い罠と恐怖の真実

ある日、新婚の妻が満面の笑みで言った。

「ねぇ、家族で海外でクリスマスしたいね!」

え、なにそれ超かわいい。

この瞬間、俺の脳内は映画のような海外生活に切り替わった。

ちょうどこの時期、子供を授かったことも判明。

将来生まれてくる子供には英語習得という名の修羅の道を歩ませたくないという気持ちも芽生えた。

エンジニアにも飽きてきたし、もっと稼ぎたいし、キャリアチェンジもありかなとも。

「みんなの願いを叶えるために、海外MBAに行く。必ず実現すると約束するよ」

この運命の一言が、涙ちょちょぎれるほど辛く、いばらの道であることを、このとき知る由もなかった。

数年後、無事にMBA合格し、感動しながら妻に報告。

「え、私そんなこと言った?」

……え?

彼女の表情は、あの時のキラキラした新婚妻とは別人だった。
(しかし、美人である)


TOEIC高得点が招くTOEFLでの挫折

とりあえず、MBA受験に必須な英語力を調査。TOEFLやらIELTSなどがでてくるが意味不明。とりあえず馴染みのTOEICに挑戦。

TOEIC350点。ん?

そこから怒涛の勉強。しばらくして850点を獲得。自分は賢い子だと誤認。

— そんな甘い考えで受けた初回TOEFL、撃沈。

スピーキング試験のビープ音が鳴る。体をビクつかせる。冷や汗をかく。

俺「……。I think ….えーーー、えっ?!…」

45秒間、ただただ沈黙。

唯一の発言はマイクテストの当時の流行語: I live in Tokyo (住んでない)


GMAT vs 俺 vs 第二子

TOEFLに続く地獄、それがGMAT。

当時は、試験終了後、結果を印刷するか否か選べるが、俺は毎回華麗に「印刷しない」を選択。

受付を颯爽とスルーする俺。

「お客様、スコア印刷は?」

俺「結構です」

そんなある朝、妻が深刻な表情で言った。

「破水したかも。」

中〇先生のGMATの授業なんてやってる場合じゃねぇ!

病院へダッシュ、そして第二子爆誕。

予備校に電話。

「今日、授業欠席します。理由は…妻が…破水しました。」

受付のお姉さん、沈黙。

「えっ…お、おめでとうございます?」(困惑)

幼子二人を抱えてからの受験はそれはそれは大混乱。もはや記憶喪失。

ほぼ全ての家事育児を妻にお願いしてばかり。イライラ数値は53万 (某スカウターを使用)。

定期的に自分の不甲斐なさを妻にぶつけるという糞旦那に成り下がった。

近い将来、妻に捨てられることを覚悟した時期であった。


オーストラリア、英語の洗礼

激動の受験戦争を終え、何とか渡豪。欧米でないのは変態だから。

オリエンテーションを終え、初授業。

「TOEFL100点取ったし、英語は余裕!」

— と思ったら、教授の話がまったく分からない。

クラスメイトがガンガン議論を進める。

俺、無言。悲しい。階段の隅っこで落ち込む。

見かねたネイティブが優しくフォロー。

「ネイティブ同士でも意思疎通が難しい時あるよ!」

え?全然心が落ち着かないんだけど。

面倒な男である。

すると、別の友人が見かねて更にフォロー。

「でも、お前、日本人の割には英語できてるよ!」

俺「え、優しい」

その瞬間、さらに別の友人が絶妙な困惑の表情を浮かべた。

これぞダイバーシティ。


インターンで無能っぷりを発揮

MBA後半、俺はまさかのPEファンドでのインターンへ。世も末である。

「MBAでファイナンス習ったし、追加でオンライン講義も取ったから、まあなんとかなるっしょ」

— 現実は違った。

先輩「これ、DCFのモデル組める?」

必死にエクセルをこねくり回す俺。それを見て、笑いをこらえる先輩。

詳細は伏せざるを得ないが、諸々の定量的な指標も足切り未満だった模様。

加えて、推奨業界未経験(e.g. IBD、MBB、商社)×中年(35歳 over)。

それでも、スポコン漫画ばりの熱意で食らいついた。

俺「雑巾がけでもなんでもやります!!」(そんな場所はオフィスにない)

ファンド「リターンオファー出します!」

俺、歓喜


家族の成長がすごい

留学前、妻は現地で仕事をする希望があったこともあり、ビザの観点からオーストラリアを選択した。が、

妻「やっぱり大学院に行く!」

俺「えっ、、あ!いいね!」

※妻はわがままではなく、私が大学院って道もあるねという話を真摯に受け止めてくれて、意思決定をしてくれた良い人です。念のため(何の)

彼女は授業の合間を縫って映画鑑賞と歯列矯正、あとは好きなカフェも満喫。時間を有効に使っていた。

矯正の件でオーストラリアの状況を調べたところ、日本よりかなり安い。

この円安の中でも、当時の為替で総額60万円ほど。

俺「…俺も矯正しよっかな。」便乗である。

MBAのプログラムが落ち着き、私のインターンが終了した後、妻は次なる仕事を見つけ、日本へ帰国した。

留学前は散々な生活をさせてしまったので、オーストラリアで充実した楽しい時間を過ごせたと思ってもらえていたら少しだけ心が救われる。

一方、子供たちはというと、英語力ゼロからスタートし、沈黙の半年を過ぎた後…

息子「パパ、今日学校でポケカ交換したよ!」

俺「え、英語で交渉してんの!?お前すげぇな!?」

さらに…

娘「パパ、その発音ちょっと違うよ。」

俺「……。」(娘、妻に似てきた…?)

父親の威厳、完全消滅。

でも、語学だけでなく色々な側面から大きく成長した二人に乾杯。


結局、MBAで得たもの

「MBAって意味あるの?」

毎年Xなどで炎上する定番の議題。

「MBAは人生を変える」「いや、コスパ悪すぎ」

そんな論争を横目に、俺は思う。

正直、どうでもいい。みんな違って皆よい

俺のMBA後の成果?

歯並びが良くなったことかな!

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