ドラマ「恋せぬふたり」を見た後、過ごした12か月
自己紹介で、私の恋愛と性的指向はアロマンティック/アセクシュアル(Aro/Ace)と書きました。この名前を自認してますが、人によってさらに細かく感じ方、考え方に違いがありますので、ここはあくまで私の考えに限った話です。2022年を振り返ると、Aro/Aceをテーマにした映像作品を見ることができて、自分の考えや行動にも変化がありました。
・アロマンティック/アセクシュアル?
AセクAロマ部 編集部(シネマンドレイクさん)が運営されているサイト AセクAロマ部 から概要を貼ります。
この感覚に名前がついていて、似たような人が世界中にいることを知った時は、長い間モヤモヤと霧がかかったようだった心にスッと光が差したようで、嬉しくなって思わずノートパソコンのディスプレイをガッと両手で掴みハグしそうになったことを覚えています。
ただ、社会の中では少数、ほとんどの人にとって恋愛、さらに結婚は当然するもの。世の中にある物語には、ほとんど恋愛が描かれていますが、私にはその感覚がわからなかったり、極端な時は疎外感を感じることもあります。群像劇だったとしても、恋愛を優先しない、わからない人間がいることが知られていないので、その感覚を持つ人はもちろん見つかりません。私は恋愛描写や性行為描写に耐性があるので、いろんな本やドラマ、映画、演劇、歌を、世間の人が人間関係を続けていく上でどんな感覚を持っているのかの参考として楽しんでます。
・ドラマ『恋せぬふたり』を観た
2022年1月からNHKで放送された、Aro/Aceの二人を中心に描かれたドラマ『恋せぬふたり』を見て、やっと私にも”わかる”感覚がテーマになったことが、とても嬉しかったです。セリフやシチュエーションが実際に私も経験したようなことばかりで、見ていてしんどくなることもありましたが、Twitterに流れる感想などから、同じ感覚やもしかして自分もそうかも?と考え始めた方がいることがわかり、ようやく扉が開かれたような気持ちになりました。生活する中で誰かにこの感覚を言う気は全く無いんですが、でも、しんどい気持ちを閉じ込めて生きるより、せめてインターネットでは、こんなわたしもあなたがたの近くで生きてますよ。と、言葉を残したくなりました。
ドラマを観た感想
・ドラマを観た後の12か月
(※現実の厳しい意見の話も書いてます)
近い感覚の人がいることにより安心して、映像化された感動から力をもらってテンションが上がり、今まで以上にセクシュアリティをめぐる情報を調べたり、できるだけ言葉を出そうとしました。いろんな場所で交流イベントが開催されていて参加してみたい気持ちはあるんですが、やはり年齢を気にしてしまい、いまだに参加する勇気は出ません。ただ、お手伝いはしたいので、Twitterでイベント情報をRTしたり、アンケート調査へ回答するなど、できる範囲のことをしています。
ですが6月頃から、同性婚をめぐる裁判の結果や、政治に係わる方の数々の発言、国内のとある団体の発行した文書や海外でもセクシュアルマイノリティーへの治療が必要とする考えや処罰等のいろんなニュース、宗教上の考えからAro/Aceの人間はこの世にいない、許されないと書いている海外の方のツイートも目にしてしまい、精神的に酷く落ち込みました。
あと、身近で恋せぬふたりを見た人(既婚)に、フィクションの設定だとして感想を話してこられて心拍数が爆上がりして曖昧な返事しかできなかったり、他のドラマで恋愛感覚が起こらないみたいな発言をするキャラクターやセクシュアルマイノリティの名前を出したセリフが登場して、作った方には本当に失礼な感想で申し訳ないんですが、見てるこちらにはなんとなくとってつけたような演出にしか見えず、また別のドラマでも恋愛関係にならない男女キャラに対するツイートでこのキャラクターはアセクシュアルまたはアロマンティックなんだろ、みたいな、一面だけを見て切り貼りした言葉の使い方にモヤモヤしてしまったり、自分の受け止め方が過敏になっていたことにも気がついて、私は何様のつもりだとショックを受けてまた落ち込みました。
いろんな考えの人がいることは当然で、健康の為にはきついニュースや作品を見ないに越したことはないのですが、いろんな動きや情報は生きていく為に知っておきたいので、病むほどショックを受けないようにバランスを取って情報に触れる覚悟や耐性がついてきたように思います。
私は、異性同性かかわらず、一人や多数などいろんな形で恋愛したい人、結婚したい人、友人として誰かと暮らしたい人、一人で過ごしたい人、いろんな人が同列で押し付け合わず会話できる、過ごしていける雰囲気になってほしいと考えてます。恋愛しない、セックスに興味が少ないとしても見下されない風潮。でも、生物として、どうしても生殖能力が強い方が上、リーダーになり、また性的魅力を強く感じる人に憧れる風潮がメインストリームとしてこれからも続くのは変わらないのは仕方がないと思います。
そんな中、『恋せぬふたり』だけでなく、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』『モアザンワーズ』『作りたい女と食べたい女』『HEARTSTOPPER ハートストッパー』『そばかす』(まだ見に行けてない涙)、他では『ハケンアニメ!』や『石子と羽男』など異性キャラでも恋愛描写無しに仕事や暮らしを通じて強い信頼を築いていく人間ドラマがたくさん放送、上映されたことが、とても心強く思えて、前を向いて生きる支えになりました。コミック、小説、映像作品で、居場所が増えたような、今の状況が本当に嬉しいです。
これからどんな世の中になるのか誰にもわかりませんが、近い感覚の人たちが、現実で「恋愛に興味ない人なんていない」とか「感情、愛情薄い人」みたいな扱われ方をされないよう、物語では特殊なキャラクターとしてではなく、大勢の中の一人として登場するのが当たり前になる状況になるよう、この感覚が少しでも誰かに届くよう言葉で残る手伝いをしたいと改めて思いました。