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しなだれそよぐ【短詩よっつ】

酷暑が続いていましたが、立秋に差し掛かって意識すると秋の気配が感じられるようにもなってきました。
初秋にまつわる短詩(俳句、一〜二行詩)を何編か詠んでみました。


初秋はつあき皮膚ひふ臓腑ぞうふ温度差おんどさ

解説するのも野暮ですが、季節の移り変わりの、外気と内気の不調和のようなものを体感覚で表現してみました。ハ行を多用して、捉え所のなさを演出しています。ため息のような句で、詠むと心が「ホッ」とする感覚が得られます。


青春過ぎれば
秋にずっと嘘つかれているみたい

従来の意味での青春はとうに過ぎていますが、夏の快活さは、若かりし日々の想いや、活気や、ノスタルジーを連れてきたりします。それらが過ぎると、急に梯子を外されたかのような途方もなさに襲われたりします。青春は嘘だったのか? いやそんなことはない、嘘をついているのは秋の方だ。そんな苦々しい自問自答を詩にしてみました。


呼ぶ風に常世とこよかお秋扇あきおうぎ

秋扇という季語は不思議なもので、秋になって「もう使わなくなった扇子」のことも「まだ使ってる扇子」のことも指す言葉だそうです。お盆だったり日本のかつて宗教的だった文化を大事にする人もいれば、まったく気にしない人もいますね。どちらにせよこの世とは違う常世があるとしたら、その風の香りくらいは感じてみたいものです。


しなだれそよぐ葉に宿る色気よ
まやかしの元気などなくていい

初夏からずっと青々とした葉をつけている木々ですが、よくよく見ると総ての葉がだらりと下を向いているものがあります。そこに風がそよぐと、ゆらりとしてなんとも言えない色気が醸し出されていました。元気にピンと張った葉っぱではこうはなりません。私たちはしなだれてていいのです。


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矢口れんと
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