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矢口れんと/琴のつぶて声のしずく【神話部一周年企画 No.4】

note神話部一周年記念祭4日目です。
note神話部一周年記念企画では部員の作品を読み合い、それぞれの記事に対して鑑賞文を書いて頂きました。エントリーは6名。1人ずつ作家・作品を紹介させて頂きます。部員の鑑賞文と共にお楽しみ頂ければ嬉しいです。

【部員紹介】

第四回は私です。いちおう部長としてこの部を運営をしております。神話部では主に海外(インド・ヨーロッパ語族文化圏)の神話や伝説を基にしたを書いています。ヒンドゥー教・仏教の神話を背景とした小説『花の矢をくれたひと』も不定期連載中です。

【エントリー作品】
琴のつぶて声のしずく

【鑑賞文】

悠凛さん

詩心などなく、詩心を育てるための読書もして来なかった私ですが、矢口さんの詩や小説にはいつも、水のように煌めく流れ(旋律)を感じます。
説明箇所に『諷誦』なる言葉がありましたが、これにとても合うのだろうな、と思わされると言うか。

『ことばを磨いて ことばを捨てた』

言葉も音のひとつ。
そのもの自体に善悪がある訳ではなく、時に善とされ、時に悪ともされる。それは、放つものと、受け取るものの意思によって変えられてしまう。
 では、精霊の鼓膜を震わせた音は、一体、どんなものだったのか──妄想が膨らみます。

旅野そよかぜさん

インドの神話・ヒンドゥ教の世界は、タイやマレーシアなどで見る機会が多く、独特な色合いをした神々の肖像画のインパクトある絵が強いです。ついついそちらに注目してしまいますが、ここでは最初にインド神話の簡単な解説から始まり、西洋の神話との違いなどが判って面白いです。その後に詩のように続く物語。それも読みやすいのが良いですね。この詩はあくまで伝説をもとにオリジナルで書かれたとのことですが、とてもそうは思えない心地よい内容だと思いました。

笹塚心琴さん

詩から荘厳な音楽が聞こえるという、鮮烈な経験をしました。詩とは何か、という果てのない問いに対するヒントの一つを得たようです。連綿と続く歴史、人ひとりの人生、それらを断片としてあるいは総体としてつむぐ詩の言葉には、迷いがないように感じられました。ひとつひとつの言葉を大切にしている作品だからこそ、読者に新たな気づきや癒し、学びをもたらすのでしょう。言葉に歴史あり、歴史に言葉ありというフレーズが浮かびました。

吉田翠さん

己が詠みあげた詩の数々を、ある一点に到達した時に見返せば、人の一生は戯曲そのものだと思うのでしょう。
世相に、歴史に無駄に抗い、神の領域に踏み込む愚かしさすら全て承知の上なのではないか?
そこにこそ立つ神性。
詩と神話は切り離せないもの。
カーヴィヤにある本質を、どんな場所から眺めているのか、矢口さんの創作の原点に迫る作品だと思いました。

すーさん

本題である、御作の詩作品の前に置かれているインドの詩の歴史も重厚で、読み応えがあります。音の神、と詩の中で示されている伝説と現実のあわいに在る古代の詩人への想いと、幾時代をも経て継がれる詩、物語が震わすこの世界への、現代から呼応する新たな詩としての静謐な想い。永遠の静寂のすぐそこから現れた言葉たちのつながりが示す余韻に、打たれました。

ヘッダー画像は吉田翠さんの作。
まことにありがとうございます!

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ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います!