赤と蒼 【詩】
千里を駆けた脚はどこへ
体が役目を終えたのだ
もはや草の味も分からぬ
心が役目を終えたのだ
どこまでも伸びゆく山麓の大地
二度と立つことはないだろう
毛並をすり抜けていった風の糸
二度と感じることはない
この背に乗せたのは忠義だった
人に尽くすとはおろかなことよ
誰かに尽くす人だったからこそ
ならば忠の連鎖を断ち切ろう
ああ 死を連れてきてくれたのか
そうだ わたくしが死を連れてきた
この哀れな同胞に安らぎを
苦しみも安らぎもない場所へ
連れて行っておくれ 我が主の元へと
その主の命を奪ったのもわたくし
蒼ざめた馬よ どうか
よいか 赤き毛色の駿馬よ
いまぞ今世にさよならを
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三国志演義にて関羽の軍馬だったとされる赤兎馬と、ヨハネの黙示録に登場する死を呼ぶ蒼ざめた馬をコラボさせてみました。処刑された主人・関羽の後を追うように食事を拒否する赤兎馬、彼に死を与えんとする蒼ざめた馬の掛け合いです。裏テーマは老と死です。
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