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布マスクのほうが不織布マスクよりも『ウイルス排出を抑制する』ことが実験により判明か?

ちょっと前にXの一部の界隈で注目されていたマスク関連の論文があったので確認してみました。

研究内容は、コロナ感染者のウイルス排出量を測定したもので、複数のマスクが試されています。

そして、布マスクはKN95と不織布マスクよりも優れているという結果でした。

論文を引用し所感を記しておきます。


◆論文引用

対象の論文から一部引用します。
(プレプリントです。)
リンクは以下。

SARS-CoV-2感染者のウイルスエアロゾル飛散に対する感染源対策としてのマスクと呼吸器の相対的有効性:ヒト対照試験

18 Pages Posted: 15 Nov 2023

Jianyu Lai
University of Maryland
Kristen K. Coleman
University of Maryland

要旨

背景
フィット感の高いマスクやレスピレーターは、ルーズフィットマスクに比べてエアロゾル発生源の制御を改善することがマネキン研究で明らかになった。これが人間にも当てはまるかどうかは不明である。

方法
COVID-19を発症したボランティアの呼気中のSARS-CoV-2ウイルス量に対する感染源制御としてのマスク(布製および医療用)とレスピレーター(KN95およびN95)の有効性を比較した。ボランティアは、マスクなしとマスクありの呼気サンプルをペアで提供し、感染源制御因子の計算を可能にした。

結果
すべてのマスクとレスピレーターは、フィットテストやトレーニングなしで呼気ウイルス量を有意に減少させた。ダックビルN95は呼気ウイルス量を98%減少させ(95%信頼区間:97%~99%)、布製マスクやサージカルマスクと同様にKN95を有意に上回った(p<0-001)。布製マスクはサージカルマスク(p=0-012)およびKN95(p=0-028)を上回った。

解釈
これらの結果は、呼吸器ウイルス感染症が地域社会で流行し、医療関連感染リスクが高い場合には、N95レスピレーターがナーシングホームや医療環境における標準的ケアとなりうることを示唆している。

Relative Efficacy of Masks and Respirators as Source Control for Viral Aerosol Shedding from People Infected with SARS-CoV-2: A Human Controlled :: SSRN
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
[202.01.03 引用]
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4631479

◇◇◇

わかりやすい結果が以下。


◆まとめと所感

研究は以下のような装置:Gesundheit-II (G-II)を用いて行われました。
この手の研究では度々目にするものです。

Development and Performance Evaluation of an Exhaled-Breath Bioaerosol Collector for Influenza Virus - PMC
[202.01.03 引用]
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3570155/

この装置のChairに座りConeに頭を突っ込んで発声し、その結果として収集されたエアロゾル(飛沫核)に含まれるウイルス量が測定されました。

条件はノーマスクと4種のマスク。
結果は以下で、数値はノーマスクでのウイルス吐き出し量に対する抑制率のようです。

  • 98%:N95

  • 70%:KN95

  • 87%:布マスク

  • 74%:サージカルマスク

◇◇◇

N95を除けば布マスクがかなり良い成績ですが、これは個人的には予想していたことです。以前、布マスクの優位性について以下の記事でまとめたことがあります。

上の記事では『普通に着けるなら隙間ができやすい不織布マスク(KN95,KF94を含む)よりも布マスクのほうが濾過率は高い』と推測しており、今回の研究はそれを裏付ける結果かと思います。

雑に(普通に)着けることが前提ですけどね。

◇◇◇

いわゆる不織布マスクはフィルター性能が高いのですが、通気性が悪いものが多く、隙間から多くの呼気が通過しています。

いくらフィルター性能が高くても、それが生かされなければ意味がないということ。

低い漏れ率と高い通気性が期待できるマスクを丁寧に着ければ、布マスク以上になったでしょう。

◇◇◇

ちなみに、今回の研究は『吐き出し』に関するもので『吸い込み』については異なるメカニズムになります。

なので、上記の結果は『吸い込み』ではあてにならないでしょう。

しかし、『吸い込み』でも布マスクの優位性は変わらないと思います。70%以上とか高い濾過率にはならないと推測しますが。

◇◇◇

私の推測が正しい場合『布マスクにしたほうが良い』という可能性はあるんですが、その判断は難しいんですよね。

理由は、布マスクの品質には何の規格も定められてない、ということ。そもそも『布マスクの定義』すら定まっていない気がします。

使用したのがスカスカの布マスクだったら、研究結果は異なるものになっていたでしょう。

個人的には大きめ厚めのガーゼマスクは結構効果あると思ってるんで、試されて欲しいんですけどね。


◆おわりに

今回のような研究は過去にも行われてきましたが、マネキンではなくヒトで試されたというのが新しい、といった旨が書かれています。

東大の似たような実験は注目されましたが『所詮は実験環境』という疑念は示されていました。

個人的には今回の試験デザインや結果についても疑念がありますが、多少は実環境に近づいたのではないでしょうか。

今後、排出抑制のメカニズムに絞ったユニバーサルマスキングを評価する研究結果が出てくることに期待したいです。

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