ネイルサロンでの有害物質曝露とマスク

2024年12月3日 20:04

ちょっと前、マスクがニオイを減らすことについて記事を書きました。

それは個人的な実感に基づく妄想みたいなものだったので、なにかしら客観的な情報を探していたのですが、それっぽい論文を見つけましたので今回ご紹介します。

ネイルサロンでの有害物質（有機リン酸エステル）への曝露リスク、その影響をマスクが減らす、といった内容です。

◆論文引用

要旨のみ引用します。リンクは以下。

Environ Pollut. 2024 Dec 1:362:125013.doi: 10.1016/j.envpol.2024.125013.Epub 2024 Sep 23.

ネイルサロンにおける有機リン酸エステル暴露：労働者への健康影響

PMID: 39322103　DOI: 10.1016/j.envpol.2024.125013

概要

有機リン酸エステル（OPEs）は、フタル酸ジブチルのような従来使用されてきた添加剤に対する健康上の懸念から、マニキュアの可塑剤の代替品として好まれるようになった。しかし、ネイル技術者がどの程度OPEsに暴露しているかはほとんど知られていない。本研究は、ネイルサロン従業員がOPEsにかなり暴露されており、空気中、粉塵、マスク、尿からさまざまな濃度が検出されていることを示している。超音波個人用空気サンプラー（UPAS）中の11種類のOPEsの総濃度は251～1007 ng/m³、エアコンフィルター粉塵中の濃度は371～14473 ng/gであった。リン酸トリフェニル（TPHP）は、これらのサロンで使用されたマニキュアから最も多く検出された化合物であった。作業後の労働者の尿中のTPHPとリン酸ジフェニル（DPHP）の濃度は、作業前に比べて平均でそれぞれ5.2倍と1.8倍高かった。マニキュアの使用量が最も多かった2つのネイルサロンでは、サージカルマスク、粉塵、UPAS中のTPHP濃度も非常に高かった。作業後の作業員の尿中のTPHP濃度は、この2つのサロンでは、それぞれ作業前の19倍と13倍であった。人体内部被曝評価では、作業後のTPHPの平均被曝量は作業前の1.8倍であった。マスクの使用により、尿中のOPEsは平均77％減少した。結論として、特に長時間の作業環境では、マスクを頻繁に交換することが強く推奨される。定期的な交換を行わないと、マスクが空気中のOPEsを蓄積し、OPEsへのヒト暴露の新たな原因となる可能性がある。したがって、ネイルサロン従業員のOPEsへの職業曝露、特にこの業界の施術者のほとんどが生殖年齢の若い女性であることを考慮すると、より注意を払うべきである。

Organophosphate ester exposure in nail salons_ Health implications for workers - PubMed.html
www.DeepL.com/Translator（無料版）で翻訳しました。
[2024.12.03 引用]
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39322103/

◆まとめと所感

『マスクの使用により、尿中のOPEsは平均77％減少した。』とのこと。スゴイ。

ネイルサロンでは有機リン酸エステル（OPEs）が気体および微粒子に付着した状態で空気中に存在したと思うんですが、それでも77%減。ホントかね。

使用したマスクの種類が気になったので全文見ようと思ったんですが、ウェブ公開は一部のみ。残念。

かなり効果が高いので、フィット性能の高いN95マスクか活性炭入りのやつでしょうか。

ただ、N95とかガチのやつの場合、論文なんかでは『mask』ではなく『respirator』が使われてる印象なので、案外サージカルマスクかもしれません。正確には不明。

とりあえず私みたいに実感を伴ってマスクでニオイを減らせてる場合、やはり実際に吸引物質を減らしてるのかと思いますね。対象がニオイ成分でも。

◇◇◇

なお、気になったのは以下。

『定期的な交換を行わないと、マスクが空気中のOPEsを蓄積し、OPEsへのヒト暴露の新たな原因となる可能性がある。』

高濃度で曝露した場合にマスクがニオイを蓄積するのは私も経験しています。

どれだけ分離するのかはともかく、ヤバかったときは新しいのに交換したほうが良さそう。

◆おわりに

ということで、マスクは有機リン酸エステル（OPEs）の吸引リスクを明らかに減らしています。

ネイリストの方や揮発性有機化合物（VOC）に頻繁に曝露する方はガチのマスク着用がオススメです。

ネイリストだとエタノールの曝露もありそうなので、エタノールで機能が低下しないナノファイバーフィルターマスクが良さそうですね。それか活性炭入りのやつか。まあ、大前提は換気だと思いますけど。

◇◇◇

ちなみに、日本ネイリスト協会はマスク着用が『個人の判断』とされたタイミング（2023年3月）で、以下のような指針を示していました。

ネイルサービスは、スタッフとお客様が近い距離で一定時間以上対面してサービスを行う特性があることから、スタッフについては引き続きマスクの着用を推奨いたします。その上でサロン環境等を考慮して各施設・事業者にてご検討ください。

感染症対策ガイドライン _ NPO法人日本ネイリスト協会.html
[2024.12.03 引用]
https://www.nail.or.jp/information/coronavirus/guideline/index.html

『スタッフについては引き続きマスクの着用を推奨』とのこと。今はどうなっているのやら。

マスクはTPOで有効活用したいものですね。