見出し画像

マスクは効果があった?米国の学校での比較研究

どうもこんにちは。
マスクオタクです。

今回は統計分析によるマスクの効果について、アメリカの研究を取り上げます。

ちなみにこの論文はあまり話題になってないっぽいですが、注目されるポイントはあると思っています。以下の感じ。

  • 抗N抗体による比較なので信憑性が高い。

  • ユニバーサルマスキングの評価となる。

個人的にはこれまでにユニバーサルマスキングの論拠として強そうなのを見たことがありません。なので今回のやつは期待したんですが気になる部分はありました。

論文引用後に所感を記します。


◆論文引用

論文から一部引用します。あとで簡単にまとめてますのでお時間の無い方は飛ばしてもOKです。以下リンク。

https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.00691-24

Open access
Epidemiology
Research Article
28 August 2024

学齢期の子どもへのマスク着用方針とSARS-CoV-2有病率-米国、2021年9月~12月

DOI: https://doi.org/10.1128/spectrum.00691-24

要旨
2021年9月から12月にかけて、SARS-CoV-2感染を軽減するための学校でのマスク政策は全米で異なっていた。われわれは、学校でのマスク着用が義務付けられている地域と義務付けられていない地域に居住する子どもへの感染誘発血清有病率の推定値と推定血清転換率を比較した。学区のマスク着用義務がある地域とない地域の 3 つの年齢層(5~17 歳,5~11 歳,12~17 歳)の子どもへの感染誘発血清有病率を,2 つの時点について推定した.2021年9月1日~30日および2021年12月15日~2022年1月14日である。

学校でのマスク着用義務のない地域に居住していることは、5~17歳の子どもにおける感染による血清有病率の高さと関連していた(調整有病率比[aPR]=1.18、95%信頼区間[CI]:1.10、1.26): 5~17歳の子ども(調整有病率比[aPR]=1.18、95%信頼区間[CI]:1.10、1.26)、5~11歳の子ども(aPR=1.21、95%CI:1.10、1.32)、12~17歳の子ども(aPR=1.16、95%CI:1.07、1.26)は、学校でのマスク着用が義務付けられている地域と比較して、感染による血清有病率が高かった。また、1学期中に推定された集団の抗体転換率は、すべての年齢層において、学校でのマスク着用が義務付けられている地区よりもマスク着用が義務付けられていない地区の子どもへの方が有意に高かった(5~17歳:23.7% vs 18.1%、P<0.001;5~11歳:6.4% vs 4.5%、P=0.002;12~17歳:27.2% vs 21.0%、P<0.001): 6.4%対4.5%、P=0.002;12~17歳:27.2%対21.0%、P<0.001)。米国の2021年秋学期において、学校へのマスク着用義務のある地域では、学校へのマスク着用義務のない地域と比較して、学齢期の子どもへの感染による血清有病率が低く、偶発的感染による血清転換の割合が低いと推定された。

School mask policies and SARS-CoV-2 seroprevalence among school-age children—United States, September to December 2021 _ Microbiology Spectrum.html
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
[2024.09.12 引用]
https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.00691-24

◆まとめと所感

内容をシンプルにまとめると『マスク着用義務あり/なしの地域で子どもの抗N抗体を比較した。義務ありのほうが陽性の割合は低い』って感じ。マスクの効果がありそうな結果。

わかりやすいのが以下。時期をわけた2回で抗N抗体を比較しています。
(青:マスク義務あり 赤:なし)

Fig 1.

2回ともマスク義務あり(青)のほうが陽性率は低い。

マスク着用の順守率は不明ですが地域はともかく学校内では高そう。怒られるだろうし。

なお、子どもの雑なマスク運用や高い漏れ率を考えると自らを守れてる割合は非常に低いでしょうから、これが本当であればユニバーサルマスキング(他者へのリスクを減らす)の効果でしょう。抗N抗体なので信憑性は高い。

スゴイ!
マスクは効果があったのか!

とはいえ気になる点はあります。

◇◇◇

時期が怪しい。

『2021年9月1日~30日および2021年12月15日~2022年1月14日』とされていますが、実際の感染波と合わせると以下。青枠がだいたいの期間。

新型コロナウイルス 世界の感染者数・感染者マップ|NHK特設サイト.html
[2024.09.12 引用]
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/world-data/

夏のピーク後半と冬のピーク前半が対象になってます。これ結構影響ありそう。ってか、なぜこの期間にしたのか謎。

最近の日本だと新型コロナは南から北の順で流行しています。つまり時期により地域差があるわけですがアメリカでも同様でしょう。

なので、この期間の場合、全国的なピークの中で後半に被害が大きい地域にとって有利な結果になります。日本でいう東北地方とかの感じ。

そんで、調整モデルで使用した変数のリストに『地域(Region)』が載っており(青枠)、中西部と北東部の差が結構大きい。ってか『人種(Race)』のほうが差がデカイか(赤枠)。

TABLE 4

◇◇◇

ということで、マスク義務以外の差が結構大きく、そこの『調整』の妥当性評価が重要になってくるでしょう。ここまでくるとガチプロじゃないと厳しい。ギブアップ。


◆おわりに

今回のマスク研究は、子どもを対象に抗N抗体を比較するという方法により、ユニバーサルマスキングの効果を評価出来るようなものだったと思います。

とはいえ私のような素人から見ると『チェリーピッキングじゃね?』って疑念は残ります。もちろん論文自体もマスクの効果として強い表現をしているわけではないんですけどね。

専門家の方のレビューを期待したいところ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?