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マスクに含まれる有害物質まとめ<追記>

どうもこんにちは。
マスクオタクです。

ちょっと前に『マスクに含まれる有害物質まとめ』という記事を書いた。

論文(スコーピングレビュー)への荒いレビュー記事だが、評価をスルーした有害物質があったので今回その分についてまとめてみようと思う。


◆前回のざっくりまとめ

対象の論文リンクは以下。https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0147651323013623

この論文では以下の物質についてマスクによる影響(吸引や接触による健康被害)を懸念している。

4.1. マイクロファイバー、マイクロプラスチック、ナノプラスチック(MPsとNPs)

4.2. 有機化合物および有機汚染物質:揮発性有機化合物(VOC)全般(総VOC(TVOC)を含む

4.3. 特定有機化合物:有機リン酸エステル(OPEs)と有機リン酸系難燃剤(OPFRs)

4.4. 特定有機化合物:UV-フィルター

4.5. 特定有機化合物:フタル酸エステル類およびフタル酸エステル類(PAEs)

4.6. 特定有機化合物:多環芳香族炭化水素(PAHs)

4.7. 特定有機化合物:パーフルオロアルキル物質およびポリフルオロアルキル物質(PFAS)

4.8. 酸化チタンを含む微量元素と(重)金属

マスクに含まれる有害物質まとめ|キツネザル.html

上記のうち、<4.1.><4.2.><4.7.><4.8.> については前回の記事で『評価方法が妥当とは思えない』と書いた。今回は残りの4項目について。


◆所感

4項目の確認は手間だが、リスクへの言及で3項目とも同じ論文<Xie et al., 2021>を引用しており、残りの1項目も同じ研究チームのもの<Xie et al., 2022>のようで手間が省けた。該当する論文リンクは以下だ。

・Xie et al., 2021
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2095927321002656?via%3Dihub#s0010

・Xie et al., 2022
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389421018161?via%3Dihub

◇◇◇

両方とも気になったのはやはり評価方法で、分析はガスクロマトグラフィーである。以下<Xie et al., 2022>から引用。

2.3. 機器分析
フタル酸エステル類の分析は、Agilentガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS、6890N-5975)を用い、EIソースを用いて選択イオンモニターモードで行った。分離はHP-5MSキャピラリーカラム(30m×0.25mm×0.25μm)で行い、キャリアガスとして高純度ヘリウムを流速1mL/minで使用した。GCインジェクションポートとトランスファーラインの温度はいずれも290℃に保った。GCオーブン温度は、以下のような熱勾配で行った: 60 °Cで1分間、20 °C/分で220 °Cまで昇温して1分間保持、5 °C/分で250 °Cまで昇温して1分間保持、20 °C/分で290 °Cまで昇温して6分間保持、最後に10 °C/分で300 °Cまで昇温して6分間保持。イオン源と四重極の温度はそれぞれ230℃と150℃に設定した。12種類のフタル酸エステルの保持時間とプリカーサーイオン/プロダクトイオンは、Supporting InformationおよびTable S2に記載されています。

Face mask—A potential source of phthalate exposure for human - ScienceDirect.html
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
[2024.05.16 引用]
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304389421018161?via%3Dihub

◇◇◇

私はガチプロではないのでガスクロマトグラフについては『ジェフリー・ディーヴァーの小説で科学捜査官リンカーン・ライムがやたら使っていたやつ』くらいの知識しかないが、高温で気化させた化合物を分析する機器(手法)で、上記引用部によると温度を300℃まで上げている。

この場合、マスクに含まれる300℃で気化する物質・量の推定は出来ても『通常使用時にマスクから吸う可能性のある物質・量は不明』ということに注意が必要だろう。

つまり、リスクを過大に評価してんじゃね?ということ。

◇◇◇

マスクの有害物質吸引の影響を量るには、ヒトの呼吸を模擬的に再現した装置を使用する他ないだろうと個人的には考えている。そのような方法で有機リン酸エステル、フタル酸エステルについて評価した研究は以下だ。

この条件によると室内環境中ではほぼノーリスク(ノーマスクで吸う量とたいして変わらない)かむしろ着けたほうが良いという結果に私には見える。

ただし、経皮での影響は評価されていないし、模擬呼吸の温度湿度や『吸い込みと吐き出しが繰り返されること』については再現されていない。装置の出来も若干怪しい。結果の精度は高くないかもしれない。(過大評価の可能性もある)

◇◇◇

倫理的に問題なければ、実際にヒトがマスクを着用し有害物質の変異量で評価する方法がベストかもしれない。であれば環境中のリスクやマスクの効果を含めたベネフィット評価になるし、変位量の比較になるのでガスクロマトグラフィーで問題ない。

以下はそのような方法を含む研究で、N95マスク着用が有機リン酸エステルの曝露量を減らすことを示している。なお、サージカルマスクでは効果が認められていないが、漏れ率が高いだろうからそんなもんだろう。電車での曝露リスクが高いことにも言及されており、実環境におけるベネフィット評価という点で信憑性は高いだろうと推測する。


◆おわりに

私は以前から『私たちの生活環境(空気自体も)はそれほどキレイではない』という認識だ。マスクの有害物質について調べた結果はそれを裏付けるようなものだった。

もちろんマスクに有害物質は含まれるが、マスク無しと比べて吸引量が増えるかどうかは条件による。

取り上げた有害物質のいくつかではマスク着用により曝露量が減ることが示されている。室内であれば余程清浄な環境でない限り概ねそんなもんだろうと私は推測している。ただし漏れ率の低いマスク着用が条件となるが。

マスクはTPOで有効活用したいものである。

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