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マスクは静電気が無くなるとどうなるのか?

どうもこんにちは。
マスクオタクです。

多くのマスクはフィルター層がエレクトレット処理され帯電しており、それ(静電気)により小さい微粒子を濾過する。

帯電効果(静電気)の持続時間は所説あるけど、そもそも『無くなったらどうなるのか』に言及されたものはあまり見ていない気がする。今回、関連する論文を引用し記事にしておく。

ざっくりとした結論としては『それでもまあまあ効果はある』って感じ。


◆論文引用

該当論文から要旨を引用する。重要箇所はあとでまとめてるので飛ばしてもOK。なお、本記事の引用部はすべて以下リンクから。翻訳はGoogle翻訳。

PLoS One. 2023 Sep 21;18(9):e0291679. doi:10.1371/journal.pone.0291679

従来のエレクトレットメルトブロー不織布マスクと新しいナノFFP2マスクの濾過性能に対する異なる処理条件の影響

PMCID: PMC10513275 PMID: 37733804

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2)などのウイルスから効果的に身を守るためには、濾過効率に応じて異なる基準で分類される濾過フェイスピース(FFP)を使用して、ウイルスの拡散を防ぐことが重要です。この研究では、6つのブランドのFFP2標準マスクを3つの異なる条件にさらし、その後、濾過性能を分析して再利用の可能性を評価しました。条件には、温度と空気湿度の変化、イソプロピルアルコール(IPA)への曝露、オートクレーブ滅菌が含まれていました。6つのマスクのうち4つは静電処理されたメルトブロー不織布で構成されていましたが、2つのマスクはナノファイバー多層システムを使用して製造されました。事前の静電処理がなかったため、ナノマスクはIPAで放電しても濾過効率に大きな変化は見られませんでしたが、メルトブロー不織布マスクでは粒子サイズ0.3μmで濾過効率が約50%まで大幅に低下しました。しかし、ほとんどのメルトブローンマスクは、他のすべての処理後も十分な濾過効率を維持し、ナノファイバーマスクよりもさらに優れた結果を示しました。これは特に、約0.1μmの大きさの最小の粒子/液滴を濾過する能力に当てはまり、これは一般的な濾過基準の範囲を下回り、ウイルスに汚染されたナノエアロゾルまたは未付着ウイルスの保持に重要です。温度/湿度の変化とオートクレーブ滅菌後、メルトブローンマスクは、ナノマスクが約70%まで低下したのとは対照的に、0.1μmで最大90%以上の濾過効率を維持できました。より優れた濾過性能、より低い価格、および潜在的な再利用性に基づいて、エレクトレットメルトブローンマスクがFFP2マスクの好ましいタイプであると結論付けています。

Influence of different treatment conditions on the filtration performance of conventional electret melt blown non-woven and novel nano FFP2 masks - PMC
[2025.01.12 引用]
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10513275/

◆まとめ

研究はマスクの再利用に関するもので、6種のマスクが3種の条件で処理され、その後の濾過効率が測定されている。

使用されたマスクは以下。代表的なものとしてM2とM3を見ておけばいいかと思う。

M2は『Air Queen Breeze』というナノファイバーフィルターマスク。これはエレクトレット処理がされていない。なお『Air Queen』は日本でも買えるが、Breezeとの違いは不明。

M3は『3M』というメーカーの有名な『Aura』というメルトブローンフィルターマスク。こっちはエレクトレット処理されている。日本でも買える。

◇◇◇

条件は以下。

◇◇◇

結果が以下。M2とM3を見れば傾向はわかるだろう。
右の図は『quality factor』なので無視してOK。興味のある方はどうぞ。

図3.対象群
図4.気温と湿度の変化
図5.IPA処理によるエレクトレット放電
図6.オートクレーブによる滅菌

◇◇◇

ざっくりと結果をまとめると以下となる。

・温度湿度の変化(オートクレーブ含む)で濾過効率は大幅には低下しない。

・IPA処理だと濾過効率が低下する。
(ナノファイバーフィルターマスクは除く)


◆所感

イソプロピルアルコール(IPA)処理だとエレクトレット処理による帯電が失活するとされている。私も以前そのような実験をしたことがある。なお、処理後に電荷の測定はされてないっぽいけど、条件からして大幅に低下したことは間違いないだろう。

で、M3の場合、IPA処理後でも0.3μmで35%、0.6μmで55%程度の濾過性能を維持している。『静電気を失うとマスクは無意味』みたいな言説を見ることがあるが、まあまあ機能は残るというのが正しいだろう。

なお、M2の場合、もともとエレクトレット処理されてないので、IPAの影響は低い。なので、ナノファイバーフィルターマスクを使用すれば静電気は気にしなくて済む。しかし0.1μmの濾過機能は低いようだ。


◆おわりに

ということで、一般的に使用されるエレクトレットフィルターの場合、IPAによる化学的な処理では濾過性能が低下するが、通常利用でここまでの影響を与えることは難しいだろう。そして、仮にそのような影響があったとしても効果がゼロになるわけではない。

また、温度湿度の大きな変化(55℃,相対湿度95%)を与えても大きく濾過性能が低下しなかったことから『呼気の湿度』の影響はかなり軽微だと推測出来るだろう。(ただし実験環境)

もっとも、今回使用されたマスクは比較的良いマスクが前提になっているように思う。そのような意味で、安価なものを使い捨てるよりも、高価な(良い)ものを再利用するほうがコスパは良いと私は考えている。

マスクはTPOで有効活用したいものである。

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