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飛沫感染+空気感染=IRPs感染?

前回の記事で武見大臣の会見について書いた。

会見では『空気感染に普通のマスクは意味ないんじゃね?』みたいなことが詰められていたが、そこで『IRPs(感染性呼吸器粒子)』という用語が使われるか個人的に興味があった。

IRPsはWHOが2024年4月に提唱した感染伝播絡みの用語で、これまでのところ使用されているのをほとんど見ていない。会見でも使われなかった。

今回はIRPsについてまとめる。


◆IRPsについて

WHOによる2024年4月のニュースリリースからIRPsに関する部分を引用する。以下リンク。

呼吸器病原体に感染した人は、呼吸、会話、歌、唾、咳、くしゃみによって、病原体を含む感染性粒子を口や鼻から発生させ、排出することができる。これらの粒子は「感染性呼吸器粒子(infectious respiratory particles)」またはIRPsと呼ばれる。

IRPは連続した大きさのスペクトルに存在し、小さい粒子と大きい粒子を区別するために単一のカットオフ点を適用すべきではない。これにより、以前使用されていた用語の二元論から脱却することが容易になる: エアロゾル」(一般に、より小さな粒子)と「液滴」(一般に、より大きな粒子)。

Leading health agencies outline updated terminology for pathogens that transmit through the air.html
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
[2024.09.04 引用]
https://www.who.int/news/item/18-04-2024-leading-health-agencies-outline-updated-terminology-for-pathogens-that-transmit-through-the-air

◆IRPs提唱の解釈

新型コロナの感染経路は当初『飛沫感染』と言われていたが、途中から『エアロゾル感染』が使われ『空気感染』を認めないことが批判されていた。

普通に考えて定義上の空気感染はするのだが、そのような『用語の二元論(飛沫感染か空気感染)』が混迷を招いた原因でもあるため、IRPsという概念を提唱したようだ。

ちなみに私も二元論は実態に即していないと思っており、以下の記事でまとめたことがある。

◇◇◇

とりあえず、吸引するような特性と感染性を持ちうる飛沫、エアロゾル、飛沫核等の微粒子を総称としてIRPsと呼称したいようだ。

じゃあ『飛沫感染+空気感染=IRPs感染』なのかというとちょっと違うらしく、WHO(日本)の資料では以下のような説明が見られた。

広範な協議の結果、(典型的な状況下で) 空気を介した病原体の伝播を特徴付ける次の一般的な記述が導入されました。

・『感染性呼吸器粒子 (Infectious Respiratory Particles, IRPs) 』 : これまで「エアロゾル」と「飛沫」という用語で区別されていた粒子を一括りに扱う新しい用語。

・『空気感染 (Airborne transmission or inhalation) 』 : 感染性呼吸器粒子が空気中に放出され、他の人が吸入した場合。空気感染や吸入は、感染者から短い距離でも長い距離でも起こりますが、その距離はさまざまな要因 (気流、湿度、温度、換気など) に左右されます。

・『直接沈着 (Direct deposition) 』 : 感染性呼吸器粒子が感染者から空気中に放出され、近くにいる別の人の露出した口、鼻、目に直接沈着し、その後人間の呼吸器系に入り、感染を引き起こす可能性がある場合。

「空気感染する病原体に関する用語」の案に関する、グローバル技術協議報告書 _ 公益社団法人 日本WHO協会.html
https://japan-who.or.jp/news-report/2404-37/

◇◇◇

いわゆる感染経路は『空気感染』と『直接沈着』のみな感じ。

旧来のイメージで考えると以下になるだろうか。

・空気感染(新):飛沫感染+エアロゾル感染+空気感染
・直接沈着(新):飛沫感染

つまり、エアロゾル感染と飛沫感染は用語として無くなる…のか?


◆シン・空気感染について考える

新たな空気感染はその範囲が広くなったとも言えるが、重要な箇所は以下だろう。

空気感染や吸入は、感染者から短い距離でも長い距離でも起こりますが、その距離はさまざまな要因 (気流、湿度、温度、換気など) に左右されます。

私も概ねこの通りだと考えていて、その他で重要なのは『(不活化までの)時間』だが、距離に付随するとも言える。

広範でシームレスとなった空気感染という定義を考えるなら、たとえば以下のようにレベル分けする必要があるかもしれない。

  • 空気感染(大)
    影響する距離と時間が大きい。
    旧来の空気感染に近い。

  • 空気感染(中)
    強と弱の間。

  • 空気感染(小)
    影響する距離と時間が小さい。
    旧来の飛沫感染に近い。


◆おわりに

ということで、WHOによるIRPs(感染性呼吸器粒子)の提唱により、用語としての『空気感染』の意味合いが今後変わってくるかもしれない。

まあ、このような定義を意識する必要があるのは論文や公的な文書を書く人だと思うので、一般人はまだ気にしないでいいように思う。書く側は誤解されないように文脈を意識するだろうし。

なお、私の記事としては新型コロナなら『エアロゾル感染』という表現を使用してきたし、当面変わらない見込み。

個人的な解釈では『エアロゾル=IRPs』なのでエアロゾル感染でよかったんじゃないかと思うが、そのあたりはよくわからない。今後どうなることやら。

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