
『子どもへのマスク義務は効果がなかった』というBMJの論文を確認してみた。
ちょっと前、子どもへのマスク義務の効果に関する論文が一部で注目されていました。
私はマスクに興味がありますが『システマティックレビュー』は荷が重い。
で、良さそうな関連記事が医療系のニュースサイトから出るのを待っていました。でも出てないっぽい。
注目されたマスク関連の論文は記事にしておきたいので、雑なレビューになってしまいますが、今回取り上げておこうと思います。
◆論文引用
対象の論文から一部引用します。
リンクは以下。
子どもへのCOVID-19のマスク義務化:システマティック・レビュー
First published December 2, 2023.
https://doi.org/10.1136/archdischild-2023-326215
要旨
背景
COVID-19パンデミック時の子どもへのマスク着用義務は、地域によってさまざまであった。この介入のリスク・ベネフィット分析はまだ行われていない。本研究では、子どもへのマスク着用の有効性に関する研究を評価するためにシステマティックレビューを行った。
方法
2023年2月までのデータベース検索を行った。研究はタイトルと抄録でスクリーニングし、含まれる研究はさらにフルテキスト文献としてスクリーニングした。2人の独立したレビュアーによるバイアスリスク分析を行い、3人目のレビュアーが判定した。
結果
597件の研究をスクリーニングし、22件を最終解析に組み入れた。子どもへのマスク着用がSARS-CoV-2感染や伝播を減少させる効果を評価したランダム化比較試験はなかった。子どもへのマスク着用と感染率または抗体血清陽性率の低下との関連を報告した6件の観察研究では、バイアスのリスクが重大(5件)または深刻(1件)であった。他の16件の観察研究では、マスク着用と感染または伝播との関連は認められなかった。
結論
SARS-CoV-2感染に対する小児用マスクの実際の有効性は、質の高いエビデンスによって証明されていない。現在の科学的データは、COVID-19に対する防御のために小児にマスクをさせることを支持していない。
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
[2023.12.26 引用]
https://adc.bmj.com/content/early/2023/12/06/archdischild-2023-326215
◆所感
今回のような論文(システマティックレビュー)の場合、多数の論文の評価をしなければならないので、個人で精査するのは膨大な時間がかかります。
それにどうせ数理モデルが含まれるだろうし。私には無理。
ってか、こういうの評価出来るのってかなり限られた人・組織だけじゃなかろうか。
なので、ざっくりと確認してみたいと思います。
◇◇◇
マスクの統計関連の論文におけるポイントは、コクランでも書かれていましたが『バイアスリスク』ということになるでしょう。
対象となった論文へのバイアスリスクの評価結果が以下。
これを見ると総じて高い。
簡単に言うと、良い研究はほとんどない、という事でしょう。

◇◇◇
この中でマシそうなものとして、Critical(致命的)とSerious(深刻)が無い下から5行目の研究を試しに見てみます。
該当論文は以下。引用は省きます。
研究はフィンランドの2都市(ヘルシンキ、トゥルク)の10-12歳の感染率を比較しています。2都市ではマスクの推奨事項が異なります。結果、有意差は見られない。
この研究の問題点として、個人的にはざっくりと以下を懸念します。
比較対象期間が14日のみ
推奨に対する遵守率が不明
都市の違いはマスク以外の要素が大きいかもしれない
(学校の規模、通学での交通機関利用率、1クラスの人数等)論文公開から結構時間が経ってるのにプレプリント?
◇◇◇
リストアップされた中の良さそうな研究でこれなので、論文に対するバイアスリスクの評価を信用するなら、総じて『評価出来ない』という結論で良いのではないかと思います。
◆おわりに
私は子どものマスク着用に関して『ほぼ効果は無いかもしれない』と推測していますが、今回の論文によりそれを主張するのは難しい。
質の悪い研究が大量にあるよりも良い研究が1個でもあれば、そっちのほうが説得力はあるように思います。
ということで、今回のシステマティックレビューを公平に読むなら『マスクの効果を統計的に評価することは難しい』ということを示すものだと言えるのではないでしょうか。
そして、今回のような方法論で『効果ある/ない』どちらにせよ判断出来ないという事実は、マスクを推奨する説得力という点で懸念されることだと思います。