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マスクから発生するVOC(揮発性有機化合物)はヤバイのか?

どうもこんにちは。
マスクオタクです。

最近、SNSで『マスクから発生するVOCがヤバイ』といった内容を見ましたので、該当する論文を確認し記事にしておこうと思います。

あまり需要は無さそうですが、中身を見たうえでレビューを書いてる人はいなそうだったので。

なお、先に結論を書くと『マスクを使うなら気をつけましょう』という感じです。


◆関連記事から

まずは海外の関連記事を一部引用します。

なお、記事が掲載されていた『BPR(BizPac Review)』というサイトの傾向は不明ですが、実際の論文でN95マスクは実験対象になっていませんでしたので、適当な煽り記事っぽい印象ですね。

NIHが発表した新しい研究によると、N95コビドマスクは危険なレベルの有毒化合物を発生させ、発作や癌につながることが示唆された。
August 27, 2023 | Vivek Saxena

最近発表された研究によると、N95マスクの着用は安全とは程遠く、潜在的な健康リスクであることが判明した。

4月に発表され、米国立衛生研究所によってひっそりと共有された韓国の全北大学の研究者による研究では、医療用N95マスクを含む使い捨てマスクは、有害揮発性有機化合物(TVOC)の推奨安全限界値の8倍を放出することが判明した。

New study shared by NIH suggests N95 Covid masks create dangerous of level toxic compounds linked seizures, cancer
[2023.09.05 引用]
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
https://www.bizpacreview.com/2023/08/27/new-study-shared-by-nih-suggests-n95-covid-masks-create-dangerous-of-level-toxic-compounds-linked-seizures-cancer-1390631/

◆論文引用

該当する論文から結論のみ引用します。
リンクは以下です。

Ecotoxicol Environ Saf. 2023 May; 256: 114915.
Published online 2023 Apr 18. doi: 10.1016/j.ecoenv.2023.114915

マスクを通して吸入される有害揮発性有機化合物量の測定

Hajoo Ryua and Yong-Hyun Kima,b,c,⁎

4. 結論

マスク着用が必要な問題(大気汚染やCOVID-19など)が増えるにつれ、マスクの重要性はますます高まっている。マスク着用が必須となった今、マスクから放出されうる有害化学物質を評価する必要がある。この研究では、一般的に使用されているKF94使い捨てマスクを含む様々なタイプのマスクから発生するVOCを評価した。さまざまな条件下(放出時間、温度、マスクの種類など)で、これらのマスクからヒトが暴露される可能性のあるVOCの種類と濃度を算出し、比較した。その結果、使い捨てマスク(KF94)は綿製マスクに比べTVOCsの放出濃度が高く、KF94では3730±1331μg m-3、綿製マスクでは268±51.6μg m-3であった。KF94マスク中のTVOCs濃度は、ドイツ連邦環境庁が定めた室内空気質ガイドラインに基づくと、懸念すべき高濃度である。しかし、KF94マスクを開封し、室温で30分間放置したところ、TVOC濃度は724±5.86μg m-3(開封直後の測定値から78.2±9.45%減少)と大幅に減少した。KF94の使用に関連するVOCの人体への影響に特に注意を払う必要があることは明らかである。今回の調査結果に基づき、KF94マスクを着用する前に、各製品を開封し、少なくとも30分間は着用しないことで、TVOC濃度を人の健康を損なわないレベルまで低下させることを提案する。

Measuring the quantity of harmful volatile organic compounds inhaled through masks - PMC
[2023.09.05 引用]
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC10112860/

◆所感

論文を読むと、KF94マスクから『室内空気質ガイドラインを超える濃度』のTVOCが検出されていることがわかります。

個人的に安価なKF94,KN95は粗悪品が多いという印象を持っていますので『そりゃそういうのもあるだろう』って感想です。なお、論文で使用されたマスクの型番やメーカーは不明です。

とはいえ、この論文の結果を使った関連記事の内容『発作や癌につながることが示唆された。』をそのまま受け取るかは別の話

こういうのは私だったら現実的にどうなのかを考えます。

◇◇◇

気になったのは測定条件。
あまり現実に即したものではないように思えます。

1Lの隔離環境で試験流量0.2L/minまたは2L/minにより測定が行われています。

現実的なマスク運用を考えると試験流量が低すぎます。
(通常時の呼吸流量を考慮したら10L/min 以上が妥当かと思います。)

また、本来なら解放環境のため、それも含めてTVOCは速やかに減少すると予想します。

◇◇◇

論文でも時間経過によるTVOC値の変化がグラフで示され、結構厳しい条件にも関わらず開封直後から急速に数値が低下することが確認されています。

着用時のリスクを避けるために『開封し30分着用しない』という提案がされていますが、現実的にはもっと早い段階でその程度にはなるでしょう。

実使用を想定した流量でのマネキンを使った試験をやって欲しかったところ。

まあ、一時的な最高値であれ懸念されうる数値ではあるようなので、厳しく取り締まって欲しいですけどね。今回のよりヒドイのもあるかもしれないし。


◆おわりに

私は過去にマスクのTVOCを測定したことがありますが、その際は3種のマスクで『問題なし(数値上昇なし)』でした。

安物・無名メーカーのマスクはKF94であれKN95であれ粗悪なものが多い印象です。そのようなものを使用している方は気をつけたほうがいいかもしれません。(前日に開封しておくとか。)

なお、化学物質過敏症の方がマスクを使用している事実から考えれば、マトモなマスクは問題がなく、むしろTVOCの影響を減らすことが期待できるかと思います。

商業施設等のTVOCを測定してきた私としては、そっち(室内環境)のリスクのほうが影響が大きいと推測します。

マスクはTPOで有効活用したいものですね。

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