マスクに付着したウイルスは分離するのだろうか?
どうもこんにちは。
マスクオタクです。
ツイッターことXでのマスク論争で度々見られるのがタイトルのようなこと。
『マスクにウイルスが付着しても分離・拡散するのでは?(逆効果?)』という疑問。
これまでその検証に絞った研究を私は見ていない。
ただ、個人的には『すべてを永遠に吸着するわけないが短期的にはそれに近い』と推測している。マスク再利用関連の研究がその検証に近いと思えるからだ。
今回は関連する論文を引用し所感を記す。
◆論文引用
この論文ではマスクを再利用しても高い確率でフィットテストに合格することを示している。要旨と重要箇所を引用する。以下リンク。
◆所感
研究でのマスク再利用の条件は、1回の使用時間が2時間程度、使用間隔を1週間空けたうえで最大3週間だ。再利用の都度定量的フィットテストに合格するか確認している。
そして、3週間目ではトータル6時間使用後となるが、高い確率で合格している。
この結果から『捕捉した微粒子の分離はほとんど起きていない』と推測する。
大量に分離していたら合格しないだろうからだ。
◇◇◇
理由を細かく説明しよう。
まず、初回含むフィットテストの合格率が高いことから参加者は熟練のマスカーだと思われる。使用時も低い漏れ率で着用出来ていただろう。そのため、3週間目では6時間使用した分のアレコレが大量にマスクに付着していたはずだ。
主に通常環境中の微粒子や吐き出された小さなエアロゾルがマスク中層のフィルターで捕捉され、大きめの飛沫の多くは慣性力によって内層に衝突し付着していたと推測する。
再利用には1週間以上空けているため、乾燥するなりエレクトレット(静電気)の効果が弱まることで分離しやすくなっているのだとしたら、フィットテスト時にそれが悪影響となる。
定量的フィットテストではマスクの外側と内側の微粒子数を比較するため、分離が起きていたら内側の微粒子数が大きく上昇し合格しないだろう。
ということで、分離はほとんど起きていない(あったとしても軽微)と推測する。
◇◇◇
なお、この推測は小さな微粒子に限定したもので、研究で使用されたフィットテスターの仕様を前提とするなら0.6μm以上では不明だ。
そのため、内層に付着した大きめの飛沫が分離していた場合の影響は計れていない。
とはいえ、以前取り上げたことのある研究によると、大きめの粒子(1μm以上)でもノーマスクと比較し大幅に空間中のエアロゾルを減少させている。今回の研究と条件は異なるが、やはり、分離が起きているとしても軽微だという推測は可能だろう。
◆補足
ちなみに『ノーマスクのほうが飛沫は落下するから環境中の微粒子濃度は減る』と考える人もいるが、その理論は怪しいように思う。
大きさによっては落下する前に飛沫核化するし、落下したとして無害であり続けるわけではない。
もしマスク内で分離する理論が正しいなら、それは机なり床なりに落下した飛沫でも同様の懸念となる。人が動き回る影響で舞い上がるかもしれないということだ。
なお、マスク内でそれが起きていた場合、すべてが環境中に排出されるわけではない。呼吸による吸入と排出が半々だと考えるなら半分程度は自らが吸うことになるので、トータルで排出される量は減るだろう。たぶん。
◆おわりに
ということで、どうであるにせよマスクを着けたほうが排出抑制に寄与すると推測する。(ただし、ウレタンやフリース素材など粗いものは除く)
ちなみに、乾燥して分離するくらいだったら不活化の確率は上がっているだろうから、そのような時間稼ぎは意味があるように思う。
◇◇◇
実感としてもマスクの内側に付着した飛沫らしきモノが乾燥し強くこびりついているのをたまに見るので、分離するというイメージは湧かない。
また、2,3週間連続使用するとマスクの表面は黒ずんでくるが、10回くらい指で弾いてもキレイにならない。
たとえばクルマのボディには砂埃などの微粒子が付着するが、そこに小雨が降って乾くとエグい汚れとなり、高速道路で走行してもほとんど取れない。マスクでもそれと同じように結構強く張り付いてそうな気がする。
まあ、目に見えないナノレベルの話しなので思いもよらないことが起きているかもしれないが、実験として確認されていること等から『分離が起きているとしても軽微』だと私は推測する。