#2レモンのご先祖
レモンのご先祖シトロン
レモンは遺伝的特徴のほとんどをシトロンという柑橘の野生種から受け継いでいます。
いわば、レモンのご先祖。
シトロンの起源はインド北東部に自生していた野生種であるとされ、その種子は紀元前4000年のメソポタミアの発掘現場で発見されているとのこと。
そしてシトロンについて記された文献で最古のものと言えば、紀元前800年以前に書かれたヒンドゥー教の聖典だそうです。
シトロンがインドからどういう経路でヨーロッパまで渡っていったのかについては謎多き部分もあるようですが、いずれにしてもレモンのご先祖であるシトロンはヨーロッパに渡り、柑橘類として初の栽培がされることになっていきました。
古代人たちが神聖視したシトロン
シトロンの香りは格別で濃厚、最大の魅力で、人々のあこがれであり、ローマ時代には”愛の香水”としても知られていました。
精油を抽出するためには非常に手間暇がかかり、ますます価値が上がっていき、古代では値段がつけられないほどの貴重なものだったといいます。
魅力的な香りというものはいつの時代においても神や魔術、宗教との結びつきがあるようで、シトロンも常に魔術や宗教と不思議な関わりがありました。
7世紀 イスラムの預言者ムハンマドはシトロンを真の信仰の象徴として
「コーランを唱える信者は甘い香りと味を持つシトロンのようなものだ」
と言ったとか。
紀元70年のエルサレム陥落後、ユダヤ人たちはローマ帝国中に散り散りバラバラになりましたが、逃げた先~スペインや北アフリカ、小アジア、エーゲ海、ギリシャ、イタリア~でシトロンの木を植え育て、自分たちの宗教を大切に守ることによってシトロンの市場を基盤形成していったようです。
祝祭の時にもシトロンは精巧につくられた銀や木の箱に収められ、贅沢な素材~亜麻布など~のクッションの上に置かれ、まるで王様のような扱いだったそうですし、まるでダイアモンドや宝石、家宝として扱われ、祝祭中の毎朝のお祈りではお祈りの度にシトロンが箱から麗々しく取り出されていたということですから、シトロンというものがいかに当時の人々にとって神聖であり、神格化されたものであったか、が伝わってきますね。
レモンのご先祖であるシトロンやレモン、柑橘類に対する人々の”崇拝”ぶりは他にも様々な絵画や文献にも取り上げられています。
それはまた別の機会に。
レモンを神格化。。。
ふと、
こどもの頃に行った祖父母の家のお仏壇にはいつも”立派な”果物がお供えされていて、そこからみかんやらりんごやらの果物の甘くて良い香りがしていたなあ~と思い出しました。
シトロンはなくても、そこにレモンがあったとしたら、きっとレモン特有の爽やかで心を晴れやかにしてくれるような香りが漂ったでしょうね。
やっぱり、香りというものは人の心の奥底まで入り込む力があるのだなぁと思います。
ですからレモンのご先祖であるシトロンが古代人たちにもたらした影響力は人のそれまでの価値観を大きく変えてしまったものの一つと言っても過言ではないのかもしれません。
あくまでレモン好きとしての私見ですけど。
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