広告主は広告文の自動生成とどう向き合うべきか
結論:有益だし、色んな使い方にチャレンジするべき
以下の2点について意思統一できるのであれば、積極的に実施すべきだと感じました。
費用を回収できる見込みがあるのか
実施する目的とゴールは明確になっているか
まぁ、とても月並みですけどね。どんな技術やツールもそうですが、「ツール自体の機能や精度」よりも「どう活用するか」の方が重要です。
ハサミで石を切ろうとするのはバカだ、という話。
「いい事例があるらしい」「AIはすごい」みたいな喧伝に乗って、「とりあえずやってみよう」からの「目隠しでの全力疾走」はいい加減卒業したいよね、と思いました。
利用すべき理由1:費用対効果
「Impがー」とか「CTRがー」とかそういう指標的な理由で提案したり、「作ったから売らないといけない」という政治的な理由で提案したり、提案に至る背景は色々あると思います。
ただ、「物事の優先度」を軸に考えると、もっとシンプルに「やるべき理由」が見えてくるのかな、と。
例えば、一般論として運用型広告の予算配分の優先度は以下のようになることが多いと思います。
検索連動型広告を中心としたテキスト広告
ディスプレイやSNSを中心としたバナー広告(レスポンシブやダイナミックを含む)
ディスプレイやSNSを中心とした動画広告
一方、制作費についてはどうでしょうか?
動画広告用素材(1本10万円くらいから)
バナー広告用素材(1本1万円くらいから)
テキスト広告用素材(無償なことがほとんど)
「多くの予算を投下しているテキスト広告」なのに、「ほとんどが無償で制作されている」というのは歪んでいます。
「成果改善に関する費用対効果」はもちろんですが、「付加価値が低いものは機械にやらせよう」という文脈において、費用対効果が高くなるだろう、と思います。
利用すべき理由2:圧倒的に自動生成が強い分野がある
「人力でのテキスト広告生成の付加価値が低いなら、全て自動生成に任せてしまえばいいのか?」という疑問も生まれますが、必ずしもそうではないです。データが無い段階でのTD作成や、露出・検証したい事項が明確な場合がそれです。
ただし、以下のようなケースでは自動生成が圧倒的なパフォーマンスを発揮すると思います。
1:商品点数が多く、事業が解決できる悩みのバリエーションが多い
総合ECや不動産比較、求人や旅行などが該当します。例えば旅行系の場合、「国内旅行、探すなら⚪︎⚪︎」よりも「熱海旅行、探すなら⚪︎⚪︎」の方が成果がいいでしょう。そしてそれはキーワード挿入機能や広告カスタマイザで実現済みかと思います。
ただ、「熱海」なら「温泉」、「京都」なら「寺社巡り」、「札幌」なら「海鮮」などを訴求することでより訴求力は向上するでしょう。でも、人力で網羅カバーするには大変な労力がかかります。
そのバリエーションを(可能であれば検索語句の文脈を理解しつつ)検索語句と適合性が高いものを短時間で生成できるのが、自動生成の一つの強みです。
2:商品が解決できる悩みのバリエーションが広い
食器乾燥機がプラモデラーに爆売れすることを想像できた人がいたでしょうか?!人間が見落としていたり、データが小さ過ぎて気づくことができないものに気づく能力は、自動生成の大きな特長だと思います。
※ただし、「目玉が飛び出るようなアイデア」はなかなか生まれないものなので、それを主目的として活用するのはあんまり筋が良くないとも思います。
3:商圏が広い
グローバルに展開しているなど商圏が広い場合は、知らない領域について勉強して頑張るよりも、自動生成に任せた方が良いケースも多いでしょう。
地理的要素:クリエイティブの季節感や、気候に沿った訴求に影響
文化的要素:正月・春節・花祭り・クリスマスなど、文化圏ごとに異なるイベントについて熟知するのは、並大抵ではありません。
4:情報の更新頻度が高い
価格や商品ラインナップなど、掲出したい内容に変更が多い場合、手動ではとても対応できなくなるでしょう。ただ、一定レベルの変動であれば適切なフィード管理による半自動生成の方が、精度と工数のバランスが良いと思います。
利用すべき理由3:部分一致の性能向上
Google Adsに限った話にはなりますが、部分一致が単なる「配信対象とする検索語句の拡張」だけではなく、「購買意欲などのシグナルを利用した検索語句の拡張」になったことで、精度改善が進みました。
部分一致での配信ボリュームが増えれば増えるほど、当初意図していなかった検索語句への露出が増えるので、そういった部分への対応で自動生成を活用するのはアリだと感じています。
部分一致での配信は検索語句のバリエーションがとても多くなることがあるので、それを手動で追いかけるのは大変ですし、広告カスタマイザも機能しませんしね。
もちろん、完全一致やフレーズ一致を適切に管理したり、部分一致で拾った検索語句について丁寧にアセットを追加することを否定するわけではありません。
誰が提供する広告文自動生成を利用するべきか?
広告文自動生成ツールは2つに分類でき、それぞれに得意分野が異なっていくでしょう。「どのツールを利用するべきか?」という問いについては「状況によって変わる」という月並みな回答しかできないかなぁ。。
目的に応じて明確に使い分けができるくらい、それぞれがツールとして成熟していくといいですね。
媒体社が提供するもの
強み
管理画面上には見えないデータを利用できる:生の検索語句や検索以外のオーディエンスデータなど
弱み
個別アカウントの事情に配慮できない:CV地点は正しいものか?生成テキストはブランドルールに則っているか?な
外部企業が提供するもの
強み
個別アカウントの事情に配慮したチューニングができる:「こういうルールで生成したい」などの個別要望への対応も可能?
弱み
管理画面で取得できるデータまでしか活用できない:媒体社が提供しているデータで学習する必要がある
媒体の入稿規定に沿ったものを生成できるかどうかは、それぞれの努力次第で解決できるので入れていません。クリエイティブ入稿の工数に関わる部分なので、重要度はかなり高いですけどね。
また、外部DMPなどとの接続も同様ですね。
現時点での広告文自動生成って正直どうなの?
これは完全に個人の感想ですが、正直言って「生成されるテキストが雑すぎて、チェックの方が大変」という感想を持っています。
自動生成された広告文をどのように活用するのか?という前提条件にもよりますが、ちゃんと運用したい(もしくは運用する能力がある)チームほど、確認工数に足を引っ張られてしまい、二の足を踏むだろうなぁ、と感じています。
元々、広告文の自動生成は「手が回らない人たち」向けに用意された機能なのでしょうがないですが、それだけで終わったら夢がないよね、と。
なので、以下のような明確な使い分けができるようになってくれたらいいな、と切に願います。(開発工数が見合うかは知らん)
用途1:とにかくゴリゴリ生成してPDCAを回しまくる
現状の広告文自動生成ツールの大半がこちらだという認識です(でないと、成果報酬形式なんてとらない)。とにかくたくさんクリエイティブのバリエーションを作ってあたるも八卦でPDCAしまくる。
一応、各社さん「スコア」による事前評価は行っているみたいですが、正直マユツバだと思っています。(スコアの精度が高いなら、それを喧伝するはずだけど、聞いたことがないため)
「ブランドイメージ」とか「仮説・検証」とかどうでもいいんじゃい!とにかく数字が良くなればいいのだ!
忙しくてそんなこと気にしてられないから、細かいことはいいよ。やっちゃおう
「確認工数?無料でしょ」とりあえずいい感じに入れておいて!
というアカウントにはこちらが合っているかもしれません。
というか、外部製ツール提供社が自主的にツールを使って成果改善に取り組むことをしていない=工数的にお金をもらわないと割に合わない なんだろうなぁ。
用途2:一定のルールに沿って自動生成する
これができたらいいのにな、の類ですが。例えば、以下のような指定をして、出力された広告文にラベリングされた状態で生成するだけで、精査がだいぶ楽になると思うんですよねー。
メッセージのバリエーションを増やす:現行クリエイティブではカバーできていないニーズに対応するメッセージを追加
表現のバリエーションを増やす:語順や言い換え、CTAなど表現方法のバリエーションを増やす
対応できていない訴求を増やす:季節のイベントや言語など、対応できていない分野を補完する
「とある目的」に対して生成したクリエイティブに対し、仮説と検証を行うことができるので、配信結果から成果の数字以外のもを得る難易度がグッと下がるはずです。
検索連動型広告の成果改善にとどまらず、LPやデイスプレイの改善など幅広くノウハウを活用できる見込みがあります。
まぁ、大変だけど。
まとめ
色々と言いましたが、どの道、テキスト広告原稿を人が作ることはどんどん無くなって行くんだと思います。現にRSAの出現でETAは(ほぼ)無くなりましたし。
ディスプレイ枠も随分前からフィードによる自動生成の割合が増えてきました。もちろん、バナーの自動生成も活発です。動画は、、まだあんまりないのかな。
人が対応する領分が減るのは、原則とても喜ばしいことです。ですが、人の手を離れれば離れるほど、「判断のための情報」からも離れてしまいます。それは、「検討」の繰り返しで蓄積されていたものが少なくなるからです。
だからより一層、「自動生成」や「自動最適」を利用する際には、「なぜそうなったのか」「どうなる見込みなのか」をしっかりと考えいくのが重要だと思っています。
もしくは、「空いた時間でしっかり休む」とかね。
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