【体験談】はじめてシャンプーを食べた話

こんばんは。ついさっき起こったことが家族みんなのツボに入ってしまったため、みなさんに共有したくて今緊急でnoteを書いています。

今日は夏休み期間二度目のオープンキャンパスの日だった。
課題のため友人の付き添いだったとは言え、現場で知らないことを体験したり実際に先生や学生の話を聞くのは貴重な時間で、とても楽しかった。
キャンパスのある場所は自宅から遠く、最寄りの駅から小一時間かけて移動した後バスを乗り継ぎせねばならず、帰宅した時には足が棒になるほど疲れ果てていた。
すぐにお風呂に入って髪を洗おうとした刹那、昨日買った新しいシャンプーのことを思い出した。
いつもなら一刻も早くお風呂を出て着替えたかったが、数時間前の専門学校で猛烈に感覚を刺激された私はどうしても新しいシャンプーの質感を味わってみたくなり、やむなくボトルの詰め替えを始めてしまった。
詰め替え用の大ぶりのパックからそそがれるシャンプーは美しい流動を描き、それを持つ私はさながら、かの名画『牛乳を注ぐ女』を彷彿とさせた。
ここで、ついに事件が起きる。
炎天下の中見知らぬ土地を歩いた疲労からか、あるいはそのシャンプーのあまりの美しさに本物の牛乳と見紛うたのか、私はボトルの縁からこぼれ落ちる結構な量のシャンプーの雫を、あろうことか舌ですくって舐めた。
瞬間、舌先から全身に今まで感じたことの無い衝撃が走る。
一拍遅れてゾクゾクッと身体中に怖気が立ち、ようやく事の重大さを理解した。パニック。
なぜ急にそんな奇行に走ったのかはわからない。運命のイタズラか、もしくはこのシャンプーを買った時から全てが罠だったのか。
ただ新しいシャンプーを試したかっただけなのに、私が何をしたって言うんだ。
肌の上ならまだしも、問題のモノがへばりついているのは口の中。取って払おうにも指は既にシャンプーまみれ、そもそもシャンプーもまともに詰め替えられない限界脳みその私が蛇口をひねってシャワーを出すなんて発想にたどり着くはずもなく、舌の上で分泌したことの無い液体と共に鎮座するそれは徐々に私の心を蝕んでいった。
一人ではどうにもできないと判断した私は、羞恥心も理性もかなぐり捨てて風呂場から身を乗り出し、キッチンで料理をする母に助けを求めた。
よもや手塩にかけて育てた一人娘が涙まみれでえずきながら生まれたままの姿で飛び出してくるのを見た母の気持ちは察するに耐えないが、必死の形相で訴える私にとんでもないことが起こっているのを察した母は、すぐに料理の手を止めてこちらへ駆け寄ろうとした。
しかし床は風呂場の水と娘の体液で水浸し。水滴を踏みしめた母の体は宙を舞い、空中で綺麗なトリプルアクセルを描いた。五輪選手のごとき母の知られざるフィジカルに驚く猫、爆音のあまり目を覚ます父。見れば、先週掃除したばかりの床に鬼の形相で舌を拭う娘と大洪水。カオスである。
しばらくして落ち着きを取り戻した私はなんとか水道水で口をすすぎ、悶絶する母と困惑する父に事の経緯を説明した。
しかし説明すればするほど私の超常現象的ポンコツさが露呈し、それが両親のツボと私のツボを激烈に刺激した。
何が起こったのかひとつも説明できないまま、最悪な状況の中ひたすら笑いが込み上げる。人間が狂っている証明である。

平和な家族の日常が一夜にして阿鼻叫喚と化してしまった今日。床掃除に明け暮れる最中も、各所で起こる思い出し笑いが絶えることはなかった。
飼い猫はすっかり怯え切ってしまって、未だに姿を見せてくれない。

fin.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?