子宮頸がんは「ウイルスが原因」と書かれることへの違和感
子宮頸がんに関するニュースの一文目に「子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症する」と書かれている。
私はこの書き方にものすごい違和感を覚える。
HPVはありふれたウイルスで、女性でも男性でも9割の人が感染する。そのうちの90%の人は、免疫によって消える。しかし10%の人は、ウイルスが長期間持続してしまい、何らかの理由(ストレスとか食べ物とか運動不足とか)で免疫が下がった結果、がんになる。だから「免疫力の低下によって」って書くべきなんじゃないの?
そして「早いうち(12歳~16歳)にワクチンを受けよう…」と記事は続く。
「12歳~16歳、そんな若さで、リスクのあるワクチンを?!」と私は思ってしまう。「いつかがんになるよりいいじゃないか」という意見もある。
「HPVの感染は、HPVワクチン接種で防ぐことができ、それにより子宮頸がんの原因の50~70%を防げます(厚生労働省HP)」
先日、子宮頸がんワクチン接種集団訴訟のニュースを見たところだった。
私は普段は見ないヤフコメを覗いた……
(改変しています)
「最近やたらとHPVワクチン推してるよね」
「ドラマ『海のはじまり』の影響でしょ。あとCMもやたら流れてる。HPVワクチンの無料接種が9月30日までなんだって。プロパガンダじゃない。本当に打つ必要があるの?」
「ニュース記事にしてまで、ワクチン接種啓蒙をするなんて」
「ワクチンて、めちゃくちゃ副作用が出て、一時期辞めてたんじゃなかったっけ?」
「子宮頸がんワクチンは、2009年12月に開始され、2013年4月から定期接種化、健康被害が理由で2013年6月14日中止となった。その後、問題は改善されないまま2022年4月再開したって経緯があるよ」
「ワクチンの怖さはコロナで散々見てきたからな」
「友人に、子宮頸がんワクチンの副作用に苦しむ娘さんがいる。痙攣や嘔吐、手足のしびれや、記憶障害まであってほんとうに辛そう。自分の娘に打たせようかどうしようか迷ってる」
「HPVワクチンを打つ打たないは、周りがどうこうゆう問題では無いだろう。がんになる確率と副作用がでる確率から判断すべき」
「確かにワクチンの後遺症も怖い。娘にはどちらもリスクがあると伝え、娘に決断させました。親が決めるよりは、自分自身で納得し決断することが大切なのかなと思います」
「自己負担だとワクチン費用は10万か…」
「既に発症した人はワクチンの意味がないんだって?」
「30代でも接種はできるけど、効果は薄くなるとか。 10代の時に知っていたら、打ちたかった」
「いや、不特定多数と性接触のある女性でもなければ必要ないと思うけど」
「だーかーらー、HPV感染イコール不特定多数と性交渉をもつ女性という思い込みは、正しい知識ではないですよ!」
「男性ですが、移されるのがイヤで先日HPVワクチンを接種しました」
「移されるって何。 男性のせいでなる場合もあるのに」
「知り合いの中には、昔男遊びをしてたせいで子宮頸がんになったんだろう、と心無い事を言う人もいます」
「マッタク。セックスしたから子宮頸がんになったとか、ワクチンを打っていないからなったとか言ってる人がいることに心底辟易とする」
「それから何でも自己責任論に結びつけないで欲しいよ」
「ワクチンを打てば子宮頸がんに罹らないと勘違いしてる人がいるけれど、 そんなことはないです」
「日本の子宮頸がん発生率は、176カ国のなかで87位。G7の中ではワースト1位。日本以外の先進国では、ほぼ撲滅に成功している。その理由はHPVワクチン接種の低さ。未だに子宮頸がんに苦しむ人が多い国、本当に恥ずかしい」
「日本で癌を無くすためには、添加物、遺伝子組み換え食品、農薬、ホルモン剤を無くさないといけないのに」
「それ関係なくない?」
「免疫が下がって、がんになるのだから関係なくもない」
「とにかく日本の癌利権は凄まじい。 アメリカの癌保険会社の売上の大半は日本。これは日本人ががんに罹患しやすいと言うより、他国では禁止されている農薬や食品添加物を、アメリカの圧力で平気で摂取させられてるため」
「陰謀論者だ」
「そういうネガキャンで検診も受けない、ワクチンも受けない、ワースト国になっちゃったんだろ」
「定期的な子宮がん検診をわたしは推奨します」
「あの精神的に苦痛な椅子ね。罹る時は罹るのだから、精神的負担になるなら受けなくていい」
「よくそんなお花畑なことが言えるね」
皆それぞれの「正しさ」が
ゴロゴロぷぎゃぷぎゃボコボコボコ
ツーツーツー
ツーツーツーツー
……
私は2年前に子宮頸がんが判明した。
『海のはじまり』では水季は子宮頸がんを発症しておそらく一年ほどで亡くなった。ドラマはシングルマザーの貧困も描いていたが、親に頼ることもなく、入院シーンはあれど治療をしていた描写もなかった。
治療ができないくらいまで腫瘍が拡がってしまっていたのかもしれないし、水季が、抗がん剤治療をするくらいならと緩和ケアを選んだのかもしれない。
その選択は抗がん剤治療が辛かったからかもしれないし、治療費が払えなかったからかもしれない。(そこも描かれてはいなかった。ドラマの主のテーマではなかったからね、いいのだけど)
私はひどくドラマに没入し「もっと親に頼って治療してもう少し長く海ちゃんといようよ」と思った。ステージ4で転移してもがんが消えた人もいる。手術で子宮を取ってその後再発もなく何十年と生きられる人もいるのだ。しかし、それは私のごくごく個人的な視点でしかない。
私は抗がん剤治療否定派の友人に聞き齧りの情報で「もう、抗がん剤なんて辞めなよ」と肩を組まれたが、私の場合は他に治療法がなかった。「よくそんなことが言えるね?」と思った。腫瘍の発見に関しても「定期検診していれば」とはよく言うけれど、私の場合「複雑なところに出来ていたため、検診しても見つからなかっただろう」と医師に言われた。本当に色々なケースがあるのだ。
最終回、水季は「海、産んでよかった」と言った。
大竹しのぶ演じる母は「海、産んでくれてよかった」と言った。
私は子どもを産めなかった。
家族を持てない人生だった。
子宮頸がんになって、私は真っ先に「もう子どもを持ったりとかできないんだな」と思って、泣いた。母に「おばあちゃんにさせてあげられなくてごめん」と言った。そんなこと言わなくてもいいのにねって今になって思う。
がんのことも何も知らなかった。
私も、かなり誤った認識を持っていたと思う。
いま、私が若い人に言えることって何だろう?
宇宙にとって何かいいことをするならば?
ワクチンを受けるか受けないべきかは
「自分で、ちゃんと、選んでね」と言うしかない。
でもちゃんと選べるのだろうか、12歳~16歳の子どもに。私だったらその判断する力がなかったように思う。もし私がワクチンを受けられる時代にいて、母に強制させられていたとしたら、私ならゾッとする。
だからこそ、子どもにちゃんと伝えなきゃならない。いやちゃんとって何だろうって思いながら。
そして自分にも言ってあげたい。
傷つくことばに出合っても、だからって「自動思考」に陥らないことが、本当にたいせつって。