愛しく想えること~映画「余命10年」感想~
「余命10年」を観た。
私は「泣ける」とか「難病モノ」なんてくくりが苦手で。感動大作!ってキャッチコピーについ及び腰になってしまう。押し付けられるとひいてしまう、めんどくさい性格だ…。
でも、今回観ようと思ったのは、最近気になってる俳優さん(坂口くん)がダブル主演なことと、予告で流れた映像とRADWIMPSの曲があまりに美しかったから。私が初めて見た予告はただただ幸せそうな二人と美しい音楽に彩られていた。
原作を先に読むか後にするか悩んで、結局読んでから映画を観た。
映画は原作とだいぶ違うのだけれど、映画はリアルだった。映画の茉莉は原作者の小坂さんに似ていたんじゃないかなぁ。映画のなかで茉莉が執筆していた本が、私が読んだ小説の「余命10年」だと思うとなんだかしっくりくる。
和人も、映画の方がリアルだった。小説のハイスペックイケメン和人も素敵だけど、それを映画でやっちゃうと現実的じゃない。藤井監督が自分を投影したようなことを話した記事を読んだ気がするけど、だからこそ映画では和人に人間味が出たんだと思う。頼りなくて自信無さげで無気力で今にも消えちゃいそうな和人。茉莉に出会って、茉莉を愛して、和人はどんどん頼もしくなっていった。坂口くんの顔付きも捨てられた仔犬みたいだったのが、どんどん男らしくなっていった。目が全然違うの。すごいね~役者さんって。
小松菜奈ちゃんは茉莉そのものだった。茉莉が「死にたくない」って母親に吐露して初めて家族の前で涙を流すシーンが忘れられない。
脇を固める俳優さんたちも皆いい。リリーフランキーさん演じる焼き鳥やさんの親父さん、家族と疎遠になってしまった和人が出会えて良かったとしみじみ思った。
日本のどこかに茉莉も茉莉の家族も、和人も、焼き鳥やさんの親父さんも、友達も、みんな暮らしていそうな気がした。
余命の物語だったけれど、死よりも生きることを感じた物語だった。
愛しいと想える人に出会えるって奇跡だ。精一杯生きよう。大切な人に、愛しさを伝えたい。
号泣はしないけど、時々涙ぐみながら観ていた。そして、エンドロールでRADWINPSの曲が流れたらまた涙…でも不思議と清々しい気持ちになれた。
映画館をでたら、眩しくて目を細めた。
春はもうすぐ。
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