ソードの10(SS)

 私の足には足枷がついている。
 その足枷の先は、深い深い海の底にある十字架。
 陸にある身体さえ海に沈んでいるようだ。

 足枷を叩き壊そうにも、私は腕や手は拘束されていて、自由に動かすことが出来ない。

 何故、こうなってしまったのか……。
 誰に聞いても答えはない。
 誰に助けを求めても、誰も助けてくれない。

 当たり前だ。
 この足枷も、腕に巻かれたロープも全て自分でやったのだから。

 自分の不要なプライド。
 弱さ、脆さ、不安定な心が作り出したもの。
 全ては幻想なのだ。

 今日、波がきている。
 一番大きな波。心の波。
 それは、私の心の幻想を全て洗い流してくれるだろう。

 嗚呼、波がきた。
 心の変化という波が。
 さぁ、全ての不要なものを洗い流し、生まれ変わろう。

 今日から私は、幻想人ではない。
 今日から私は、純粋な自分に戻るのだ。
 今日から私は、自由になる。

 今日から私は、生きたいように生きていくのだ……。

 過去の私がそうであったように。

**

さようなら、過去の私。
 ありがとう、過去の私。

 お誕生日おめでとう、新しい私。

 こうして私はまた
 ソードが10本突き刺さるたび、
 心の誕生日をお祝いするのだ。

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