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大嫌いなはずだった

人生において、プロ野球を実際に球場で見る日が来るなんて、中学高校時代の私には想像もつかないだろう。あの頃はとにかく野球が嫌いだった。吹奏楽部だった中学時代。野球応援が大嫌いだった。吹奏楽部の顧問は怒っている自分に酔うタイプの熱血教師で常に怒鳴る為に粗探しする人だった。野球応援のための楽器の搬入のスピードが遅いからと怒鳴り散らかされた3年間だった。灼熱のなか吹くトランペット。仲良くもない野球部。野球部の奴らと来たら「応援なんて別に頼んでないし」「実際試合してても試合に集中してるから聞いてないし」などと宣ってくる。野球応援は吹奏楽コンクール前の大事な時期に無理やりやらされる嫌な行事で、野球応援で無理して演奏した結果アンブシュアを崩していい音が出なくなったり、野球応援用の音質とコンクール曲の音質で求められるものが全然違ったり。吹奏楽部側にメリットなんてなかった。少なくとも私の中学時代は。だから、野球のルールも知らなかったし、知る気もなかった。


大人になってから出会った大好きな人は、中学時代からずっと野球に打ち込んでいた人だったらしい。草野球も最近までやっていたとか。らしい、というのは彼は19歳年上で年齢的にもう野球をプレーする体力が無いため出会った頃には既にユニフォームを脱いでいたから。彼が打席に立つところも三塁を守る姿もついぞ見ることは出来なかった。それでも、私の大好きな人がキラキラと目を輝かせながら教えてくれる野球のルール。知識、奥深さ。膨大な練習の数々。野球嫌いの私が恥ずかしくなるくらい彼はずっと野球にひたむきで尊敬した。だから、彼の解説付きで野球の試合を見るようになった。そして思ったことは、「プロって凄い。」ということ。野球が上手いだけではダメなのだ、言い方は悪いがエンタメを提供してお金を貰っている人達なのだから、上手なのは当たり前。魅せるプレーをするのがプロなのだなと実感した。テレビの前で手に汗握り思わず大声で応援するまでになった私を見て、大好きな人は、「東京ドームで見ようよ」と私を外へ連れ出してくれた。

あんなにも野球に良い印象がなかったのに。初めて東京ドームで野球を観て鳥肌が立った。凄くかっこよかった。言葉にはできないけれど、肌で感じた。嗚呼だから野球が好きな人ってこんなに沢山いるのだなと納得させられた。

あの頃の私が聞いたらびっくりするかもしれない。今の私はプロ野球の大ファンであることを。

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