2024年 48th 埼玉綜武道大会 part.1
「埼玉大会は、個の力を高めることに主眼を置いているんだよ」
豊嶋館長はそう言って机上のコーヒーを飲み干し、ジャケットに袖を通した。
今日は埼玉大会当日、令和6年2月26日。
僕の場合、前日会場設営➡️道場に前泊させて頂く➡️翌朝大会会場に向かうパターンが多い。
まだまだ冬のため、極寒の朝である事には変わらないが、埼玉大会というワードを聞くと心なしか「もう春かあ…」と思えるのは気のせいだろうか。
この大会はとにかく、種目数が多い。
現在の所は8種目だが、竹杖打込乱取や剣術乱取、手裏剣術などを加算していくと優に10種目は超えてしまうだろう。
選手も忙しいが、審判側も忙しい。
更に会場の関係で時間の制約もある。
…とは言うもの他の大会にはない解放感がある。
お祭り騒ぎ、何でもあり、今日は楽しんだもん勝ちっしょ!みたいな。
そんな埼玉連合(豊嶋館長の?笑)の色が盛りだくさんの埼玉大会を振り返ってみよう。
※合気道以外+自由型編は後日。
0.模範演武について
現在の競技化した武田流中村派技法を、師範や師範代が実演披露した。
捕技乱取、綜合乱取技法だけでなく合気之術の祖先である剣術初伝、中伝技法も佐藤師範、菊地教範によって実演された。
受返の途中、菊地教範の袋竹刀が割れたように見えた。袋竹刀の産みの親、井上先生は「袋竹刀MARK .Ⅱの開発が必要かな…」とニヤリ。
剣術模範試合では菊地教範と私の立ち合いを、豊嶋師範が裁いた。
模範演武、と呼ばれるものに出たのは2回目。
はじめて模範試合に出たのは2019年の学生大会だった。あの時は全日本選手権7回優勝の松下教範がお相手の、綜合乱取の模範試合だった。
ぺーぺーの私は恐縮しながら
「あの…きょ、今日はどうされるおつもりですか?」と声を掛けさせて頂いたのだが、
「えっ?普通にやるよ?」との反応。
(普通?ってことはガチンコの綜合?
やばくね?)
「……今日俺は死ぬんだな…」と戦慄したことを今でも覚えている。
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菊地教範は一個上の方だが、未だに雲の上の存在。初めてお会いしてから、もう8年になる。
ずうっとお世話になりっぱなしの憧れの先輩。
そして、言わずもがな…豊嶋先生。
腹の底から、「三本勝負!!」の掛声。
背筋が震えた。一瞬にしてスイッチが入る。
選手の集中力を最大値に引き出し、素晴らしい試し合いに導くのが主審の役目なのかもしれないと改めて感じた。
何事も体験が宝になりますねえ。
だから大会は出たくなる。
これからはきっと、立教の後輩たちも前に出て模範演武をバンバンやる時代が遠からず来るだろう。
「模範」という言葉から恐らく最も掛け離れた男の実感。
間違いないと声を大にして言いたい。
1.女子打込について
上の写真たちを観て欲しい。
間合、機先、差合、足捌などギュッとポイントポイントが詰まっている。
…ってか青木先輩改めてすごいな。
何を伝えたいのか、その決定的瞬間を感じる写真を撮って下さっている。
やや間合が近くなり、相討が異常に多くなるのが女子打込乱取の特徴ではあるが、今回は山が進むにつれ、駆け引き、フェイント、インファイトの連続打など様々な展開を見せてくれた。
個人的には二年生の菅野選手×鎌形選手の同期対決と決勝戦。
五十嵐選手×石井選手の対決が見応えを感じた。
胴の差合、連撃、そして勝負を制したのは引きの大きい菅野選手の右胴打ち。見事でした。
決勝戦は貫禄すら感じる2人の対戦。
上背を生かした受返打でポイントを稼ぐ五十嵐選手に飛込面で応酬した石井選手の正面打!
グッときちゃったね。
判定で五十嵐選手が優勢なのは皆納得。
も…延長して欲しかったなあ!
(大人の事情も分かりますよ)
2.男子打込について
男子打込では鈴木選手が躍動感たっぷりの試合を披露。
とにかく残心が菊地教範そっくり。
変わらないなあ……
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彼とは7年位前、坂戸の少年部でよく一緒に稽古していた。
真っ直ぐな眼をして、菊地先輩が大好きで、尊敬しているのがよく分かる、そんな少年だった。
彼がひょっこり道場に現れたのは先月のこと。
少年の面影を残したままスーっと背が伸び、
優面の青年になっている。
聞いてみると、大学が決まったというではないか。
時の流れは恐ろしい。
今度は僕が見上げるようになってしまった。
なんと、大学の合気道部を復活させるとか、
させるとか。
何とかサポートしてあげられる体制を作らなきゃなと思ったよ、おじさんは。
立教の菊池選手、桝井選手は胴打でそれぞれポイントを取れた。
同じ胴でも取り方が異なるのが面白い。
今度、それぞれ折を見て話がしたいですね。
3.組手乱取について
組手は技に入るスムーズさという点でリードしている(慣れている)道場生が勝ちやすい傾向がある。
ただ、結果だけでなく一年間やってきたこと…例えば投げきること。残心を取ること。手の返しをしっかりやって受を崩すこと。
受身で怪我をしないこと。などなど。
大会に出て、怪我をせずに帰れるということは実はかなりすごいことなんだよと言いたい。
とは言うもののどうしても同期同士と当たりやすい組手乱取は白熱しちゃうもの。
どうして、何が原因だったのか…
自分なりには分析したのでもし今度機会があればお声掛けください。
ぼく?
捕 技 乱 取 初 戦 敗 退 ですが何か?
……
4.捕技乱取について
近年苦しんでいた浦田選手が見事、4年ぶりに王座奪還!おめでとう!めでたい!!
準決勝は足捌、手捌、駆け引き、どれもばっちりでしたね。
準優勝は松本選手とこれまた同期対決。
すげえ世界線だな、おい。
現役生、特に4年生が成長したなあと感じるシーンが多々あった。
例えば大野選手や藤島選手の投込の最後のキレ、捻り込みはスピードもパワーも感じられ、素晴らしかった。
ベテランの佐藤選手は気合十分も空回り。
冬まで辛抱…かしら。
優勝候補の一人、五十嵐主将は松本選手の攻撃、打受(止め)の点で翻弄されたか。
動画が上がり次第しっかり確認したい。
俺? 聞く?
(自重)
5.綜合乱取について
優勝はわたし。2連覇。
準優勝は恩田選手。
3位は片山選手、河辺選手。
練習してきたことを、各々発揮出来た試合だったんじゃないかな?
特に川口選手の潜り技(足取逆内刈)は2本とも素晴らしかった。
ずっと稽古していたことが試合で出るのは非常に尊いことです。
バチバチに打ち合って楽しそうな藤島選手、
またもやおっさん同士で試合してしまった私たち、
左対策が要るなこりゃ、って感じる河辺選手など様々なことがごちゃ混ぜで楽しい綜合乱取ターンであった。
……
試合後に恩田選手に一言だけ伝えた。
夏までにどうなるか。
はたまた、彼を超えるものが現れてくれるのだろうか。
※番外編:中学生男子綜合乱取について
素晴らしい決勝戦が展開された。
内刈捨身に遠間からの連続打、引き十分の右胴打ち。新しい選手層が徐々に育ってきている。
楽しみなので、いつかの為にここへ遺しておこう。
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