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【Altro Paradiso】 ショッピングで疲れた体を癒す、 SOHOのシックなイタリアン。
ニューヨークでショッピングといえば高級デパートの集まる5番街も良いけれど、お店の豊富さで考えるとSoHo(ソーホー)もとても魅力的です。ユニクロからシャネルまで、ローもハイも全て一箇所で揃ってしまうので、私は服飾品の買い物であれば断然ソーホー派でございます。
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さて、どんなに楽しいショッピングでも、何軒もお店を梯子すれば疲れてお腹も空いてくるもの。ソーホーで定番の食事処といえば、どことなくフレンチが多い印象があります。有名どころでいえば、老舗ビストロの「Balthazar(バルサザール)」、ダニエルローズの「Le Coucou(ル・クク)」、クラフツマンシップ溢れる家具や食器が揃うホームグッズ店「Roman and Williams Guild(ローマンアンドウィリアムスギルド)」内に構えられたカフェレストラン「La Mercerie(ラ・メルスリー)」など。
上記レストランには全て行ったことがありますが、特にBalthazarとLa Mercerieは観光客が多くて忙しないのが欠点でもあります。そこで、観光客も少なめでゆっくりできる大人のイタリアンとしてぜひご紹介したいのがここ「Altro Paradiso(アルトロ・パラディーゾ)」。
いま、飛ぶ鳥を落とす勢いでノリに乗っているウルグアイ出身のシェフ、Ignacio Mattos(イグナシオ・マットス)による店として「Estela(エステラ)」、「Lodi(ロディ)」と並ぶ「Altro Paradiso」は、カジュアルながらも気の利いたイタリアンがいただけるお店です。
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シックで大人な空間は天井も高く開放的。天井近くまで積まれたワインの瓶や、大きな瓶に入ったオリーブやシトラスの塩漬けなどがインテリアの一部になっていて、高級感がありながらもとっつきにくい印象を与えません。
そして少し前の週末、旦那がAltro Paradisoに初めて連れていってくれました。物価の高いニューヨーク故、レストランで外食したのは去年の11月以来。貧乏夫婦にとって、外食は敷居の高いアクティビティなのです・・・
Altro Paradisoは私がずっと訪れてみたかった憧れのレストラン。私が尊敬する元上司が以前お店の近くに住んでおり、こちらに頻繁にお食事にいらしていました。
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今回私たちが案内された席は、オープンキッチンが見える真ん中のコーナーテーブル。これは特等席だね、とワクワクしながらメニューに目を通しました。
前菜には「フィノッキオ(フェンネルのサラダ)」をシェアして、メインにはパスタ2種類を頼みました。
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最初にサービスをしてくださったウェイターのお姉さんが「お水はスティル、スパークリングのどちらになさいますか?」と伺って下さり、スパークリングをチョイスしたのですが、ここで少しハラハラ。
といいますのも、去年ブルックリンのとあるお店で、ウェイターが開口一発同じ質問をしてスパークリングを選んだ際、お店でガスを入れただけの水道水になんとボトルで$5(600円!)も取られた苦い経験がありました。無料でないならその旨を先に伝えるのがマナーだと思うのですが、会計時に発覚したので非常に後味が悪く、それ以来この質問には敏感になっています(笑)。
もちろん、Altro Paradisoのような格のあるお店では、ハウスのお水にお値段をつけるようなことはありませんでしたよ(ホッ)。
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お料理が来る前にはサービスでパンを頂いたのですが、これがとっても美味しくて驚きました。お店で焼いているのか伺うのを忘れてしまいましたが、もちもちのルヴァンをリコッタとオリーブオイルに付けて頂きます。
そして、リコッタの上には結晶塩が、ピリッと苦味のあるオリーブオイルの中にはフルーティーなバルサミコ酢が数滴垂らしてあって、この細やかさに脱帽しました。これだけでも来た甲斐があると思ってしまったほどですが、お料理はこれからこれから!
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前菜のフィノッキオとは、フェンネル(ウイキョウ)のサラダです。一見、シェーブされた美しいフェンネルが山盛りになっているだけに見えますが、フォークで中を開けば大好物のカステルヴェトラーノ・オリーブとフェンネルの穂先がたっぷり出てくるではありませんか。こういう盛り付けの方法があるのか、と料理研究としても色々参考になる部分の多いAltro Paradiso。
我が家は旦那がヴィーガンなので、トッピングのプロヴォロンチーズは別皿に用意して頂き、私の取り皿に盛って頂きました。
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フェンネルの爽やかな風味と、チーズとオリーブのマイルドでふくよかな味、オレンジ系のシトラスゼストが爽やかなアクセントのヴィネグレットの組み合わせが美味しいサラダでした。家でも真似できるシンプルさで好感度が高い一品。
前菜の後、旦那はあまりの美味しさにパンをお代わりし(笑)、ほどなくしてメインのパスタが運ばれてきました。
旦那のチョイスはスパゲッティ・ポモドーロ、私はカンデーレのカチョ・エ・ぺぺ。
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カンデーレはイタリア語でキャンドルを意味し、そのユニークな太さ・長さは一本うどんさながら。ナイフで切りながら少しずつ頂きました。シンプルなカチョ・エ・ぺぺですが、フルーティーで爽やかなブラックペッパーの風味が良かったです。
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捻りのないポモドーロは直球勝負、ガーリックの効いたトマトソースはバジルのアクセントがありバランスが良かったです。シンプルなものほど、素材と技術あってのクオリティ。やっぱりお店で食べる味ですね。「これくらいなら家でも作れるでしょ?」と旦那はこぼしていましたが、再現性は高いのか否か・・・まずは挑戦あるのみです。
パスタに関して言うと、主張が控えめな麺だと感じました。故にソースの味が引き立てられるのかもしれませんが、普段Setaroのような個性の強い麺に慣れてしまっている我々にとっては、アメリカ人の好みに寄せて茹でているのかな?と感じました。
前菜とパスタで既に満腹だったのですが、せっかくなのでデザートもお願いしました。
旦那はヴィーガンもOKのソルベを、私はアッフォガートを。
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多くのレストランでヴィーガン対応のデザートの鉄板といえばソルベですが、こちらの自家製ソルベは他とひと味もふた味も違う絶品でした。
オレンジ・ネグローニ味の爽やかなソルベは甘さも控えめで、ちょっとアルコールの入ったオトナの味。一口食べる毎に粒々の塩がマイルドながら甘みを引き立てるアクセントになっており、容器に入れて販売してほしい!と思ったほど美味でした。
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アッフォガートは熱々のエスプレッソをジェラートの上にかけるデザートですが、ジェラートは多分リコッタ味だったと思います。濃厚なジェラートがエスプレッソの海に溶けていく様子を見るだけで楽しいデザートですが、ソルベもジェラートもスクープ(量)が多くてやっとギリギリ食べ切ったほど。このへんもケチケチしない、良心的なところが好感度大でした。
イグナシオ・エンパイアの三位一体の一部であるAltro Paradiso。丁寧なサービスとお料理は噂に違わぬさすがのクオリティでした。しっかり考えて作られているお料理と、シックでオトナな雰囲気なのに肩肘張らない空間。日曜日をソーホーで過ごすことも少なくない我々にとっては、頼もしいお店としてまた利用させていただくと思います。
今日はここでおいとま致します。
ごちそうさまでした!それではまた次回。