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その後の作品に見る「逆転裁判4」

はじめに ~当記事について~

※逆転裁判シリーズのネタバレしかないです!

この記事はX(旧twitter)やDiscordの個人サーバーに投稿した、逆転裁判4とそれ以降の同シリーズ作品(主に逆転裁判5)の「繋がり」の考察を再構成してまとめたものです。(本記事を書くにあたって新たに書かれた考察もあります)

考察の掲載順は基本的に考察をした順番になります。

考察の対象となる「繋がり」は主に「4の《この要素》があの作品の《あの要素》の元になったのでは?」というようなもので、細かい過去作ネタや商業的な都合などは含みません。

また、自分が考察したいのは「4の要素を《逆転検事以降の開発チーム》がどのように調理したか」であるため、4と同じライターによる作品群である大逆転裁判シリーズは対象外となります。

敬語はここまで。


王泥喜法介のキャラクター性

逆転裁判4と言えば、新主人公「王泥喜法介」である。

公式でアピールされていたポイントは、「声が大きい」「熱血漢」「《みぬく》能力を持っている」あたりだろうか。

「どんな真実が待っていても」

それら以外に自分が「4の王泥喜法介」から感じ取った要素は、「真実を追求する強い意志」「ウラ切りを受けても前進する強い心」だ。

逆転裁判4、その第1話で彼は被告人の証言を要求することになり、その際「最も尊敬している先生」である牙琉霧人と以下のような会話をする。

ガリュウ
「オドロキくん。この私を
 ウラ切るつもりですか?」
オドロキ
「そういうモンダイじゃありません。
 ”真実”を知るためです!」

逆転裁判4

‥‥最終話ではなく第1話でのやりとりである。
彼は(もう一人の尊敬する人物である成歩堂元弁護士の誘導があったとはいえ)最も尊敬する先生にウラ切り行為と見なされようとも、真実を追求する手を緩めないのである。

バチバチに敵対しだす牙琉霧人と成歩堂龍一に若干の恐れは抱きつつも、そして推理を成歩堂に誘導されつつも、彼は審理を進めること(=牙琉霧人を追い詰めること)から逃げようとはしなかった。

では彼が「先生」に対して持っていた尊敬は嘘だったのか?
それとも失われたのか?

答えは同じく第1話で牙琉霧人自身が語った言葉にあるかもしれない。
裁判の序盤で王泥喜が尋問をした結果、かえって弁護側に不利な状況になってしまったときの言葉に。

ガリュウ
「‥‥大切なのは”真実”です。」
ガリュウ
「そこには、かならず。
 なんらかの”イミ”があるはず。」

逆転裁判4

そしてその後、王泥喜は逆転裁判4で「依頼人・被告人がなんらかの罪を犯したという真実」を暴いていくことになる。もちろん真犯人の罪も暴くのだが‥‥

第1話にて牙琉霧人を「ウラ切った」王泥喜法介。
だが牙琉霧人の方も「王泥喜法介に尊敬される上司の弁護士」という立場でありながら、殺人の罪を犯し、さらにはそれを他者に擦り付けようとした。これは王泥喜法介にとってはウラ切りであると言える。

続く第2話では、一度失業した王泥喜に「また弁護ができる」と希望を与える依頼人(被告人の婚約者)・並奈美波が弁護の依頼に現れた。
しかし彼女の素性は事件の真犯人であり、王泥喜に弁護を依頼したのは「間違いなく被告人を有罪にしてくれるだろう」と思ってのことだった。
彼女の目論見は失敗。依頼人でありながら(みぬきや牙琉検事のサポートを受けた)王泥喜に罪を暴かれることになる。

このように、第1話と第2話で王泥喜法介は連続でウラ切られることになる。
ちなみに第3話と第4話ではライバル検事である牙琉響也がウラ切られる。
王泥喜法介という人間にとって、「真実を追求した先に待っているのがウラ切りであること」は珍しくはないのだ。

「ウラ切りをウラ切りであると認め受け止めた上で前に進まなければいけなかった人間」、それが4における王泥喜法介。
ウラ切りを受けても共に過ごした日々を信じ続け、それが正しかったことが最後の最後で判明した3の成歩堂龍一とは対照的である。
どちらもウラ切ったのは毒薬を扱う1話の犯人だったというのに。

さて、話を逆転裁判5に進めよう。
逆転裁判5では4とは打って変わって3までのような「信頼関係」を重視したストーリーが展開されていく。
そして、王泥喜は初めて成歩堂から「依頼人を最後まで信じること」を教わる。

成歩堂が指導する立場に収まったこともあり、4とはまた違った経験を積んでいく王泥喜。

しかし、信頼関係に重きを置いた本作において彼はあまりにも分厚い壁に阻まれる。

それは、本作で信頼関係を育んでいた後輩・希月心音への拭いきれない疑念しかも王泥喜の親友・葵大地を殺害したのではという疑惑である。

1度生まれた疑念はどんどんどん膨らんでいき、夜も眠れぬほど悩むように。
彼は上司である成歩堂の意向に背き事務所から離れ、一人で事件を調査することにした。上司に反する行動をするのは4でもうやってるのでこいつは元からそういう男である。
まあ、成歩堂の方はすぐに王泥喜の意思を尊重して離脱を許してくれたが。

調査を進めたものの、出て来たのは心音の犯行を裏付ける証拠だけだった。

ここで投げ出してしまえば、心音への信頼はグレーのままになるだろう。
疑惑はあくまで疑惑のまま、彼女が犯人である確証も無実である確証もどちらもない状態である。
しかし彼は、葵のジャケットに「必ず犯人を捕まえる」と誓っている。
投げ出すのは葵へのウラ切り行為である。
それに、心音への信頼をグレーのままにするのは「心から信頼している」とはとても言えない。疑惑の心に蓋をしてしまっているだけだ。

だからこそ彼は、成歩堂と心音のいるUR-1号事件を審理する非公式の裁判に乗り込み、葵大地殺害事件の心理を要求し、希月心音を告発した
成歩堂に自身の推理と疑惑を打ち破ってもらうために。
そして自身の疑惑から目を背けないために。
事実彼は、告発の理由について「自分の中に生まれた疑惑を無視することはできない」「本当の意味で信頼するため」などと語っている。

そして彼は、続けてこんな言葉を口にする。

オドロキ
「どんな真実が待っていても、
 恐れちゃダメなんです!」

逆転裁判5

さて、彼の言う「恐れてはダメな真実」とは何だろうか?
疑惑をグレーのまま放り出さず、告発という行動に出ることによって、「明らかになってしまうかもしれない真実」とは何だろうか?

「ウラ切り」だ。

この告発は、自身と成歩堂の推理をぶつけ合うことによって、希月心音がシロかクロかはっきりさせてしまうもの。
成歩堂が突破できる余地があればシロ、そうでなければクロ。
後者の場合、希月心音の「ウラ切り」を確定させてしまう行為になるのである。

しかし、告発しなければ彼の中で希月心音はシロにもならない。
彼の考える犯行の可能性が、疑惑が打ち崩されていないからだ。


>王泥喜法介という人間にとって、「真実を追求した先に待っているのがウラ切りであること」は珍しくはないのだ。

>「ウラ切りをウラ切りであると認め受け止めた上で前に進まなければいけなかった人間」、それが4における王泥喜法介。

先ほど、自分はこう書いた。
要するに、彼はそういう覚悟のある人間だ。
だからこそ、このようなストーリーが5で展開されたのではないだろうか?

ちなみにあのセリフは、
6の第5話では「真実」の意味を「受け入れがたい真相」に変えて王泥喜法介本人にぶつかってくることになる。
どんなにつらい真相でも、先に進むためには彼自身の手で明らかにしなければいけなかったのである。

「真実を恐れずに進まなければならない」というのは、456に共通する王泥喜法介への「課題」ではないだろうか?

「みぬく」に付加された物語上の意味

さて、この「告発」までの経緯を語るに当たって外せないのが王泥喜法介の「みぬく」能力である。

そもそも希月心音に疑念を抱くようになったきっかけは何か。
心音が葵大地殺害事件に触れるたびに「腕輪」が反応するようになったからである。
つまり心音は事件に関して何らかの隠し事をしており、それを無意識のうちに王泥喜が感知したのを腕輪が教えてくれていたことになる。

4の時代、王泥喜はこの腕輪の反応に大いに助けられており、腕輪の反応を目印に「みぬく」能力を発動し数多くの嘘を暴いてきた実績があった。時には、真犯人の嘘も。
そしてこの能力を裁判に活かすように促したのは他ならぬ成歩堂だ。

この「みぬく」能力は4においては彼のルーツを示すものだった。
本人は知らないままだけど。

一方5は王泥喜が疑念を抱き始めた説得力のあるきっかけとしてこの能力を使い、物語に絡ませてきたのである。
5ではゲーム中でみぬくを使う回数が大幅に減っているが、このような手法でその存在感を保とうと試みたのではないだろうか?

法曹界に訪れた「暗黒の時代」

ナルホド
「今‥‥法曹界には
 暗黒の時代が訪れている。」

逆転裁判4

ナルホド
「ぼくたちは、それを
 ただしていかなければならない。」

逆転裁判4

この二つは、逆転裁判5のオープニングムービーに引用された逆転裁判4の第1話のセリフである。

5は初っ端から4と繋がっていたというわけだ。(今更)

5における「法曹界に訪れている暗黒の時代」は「法の暗黒時代」と呼ばれており、5の7年前‥‥すなわち4の6年前に訪れたとされている。

きっかけは5の8年前から7年前にかけて起こった、法曹界の信頼を失墜させる二つの出来事。
4で描かれた「成歩堂龍一弁護士による証拠品捏造」と、5で描かれる「夕神迅検事による殺人」である。もちろん両方(その件に関しては)無実だったが。

一方、4では二つのセリフの間にもう一つセリフがあり、「何を理由に法曹界に暗黒の時代が訪れたのか」が語られている。

ナルホド
「”序審法廷”‥‥現在の制度が
 生み出した”ゆがみ”のようなもの。」

逆転裁判4

そう、逆転裁判ではおなじみトンデモ法制度「序審法廷制度」である。
雑に説明すると、「犯罪多すぎるから捜査も裁判もパパっとやっちゃおうぜ!」みたいな感じ。

事件発生からあまりにも早い裁判の開始。
目立ちすぎる警察の捜査と検察の立証の粗。
現実にあってはならないが、ゲームを成り立たせているこれらの要素は序審法廷制度が生んだものである。

4と5では直接的に語られている「暗黒の時代」の到来の理由が異なっている。
これはムジュンなのだろうか?

4の方は抽象的な理由であり、5の方は具体的な理由である。
4の理由が5の理由に繋がっていると考えれば、ムジュンは起こらないと考えた。

5で語られた理由、二つの冤罪は「序審法廷制度ではない通常の裁判制度が適用されていれば起こりえなかった」としたら?

夕神迅の方の事件、UR-1号事件は簡単だ。
序審法廷制度に基づいた日程で捜査などが行われたこの事件は、余りにも監視カメラ映像の検証がずさん過ぎた。
アカラサマに怪しい真犯人が映っていた部分が全く見られていなかったのである。
もっと警察にじっくり事件を捜査する時間があれば、裁判は違ったものになったかもしれない。

成歩堂龍一の方の事件、或真敷天斎殺害事件はどうだろうか?
もしかしたら、天斎の点滴パックから注射の痕跡が見つかったかもしれない。
そもそも死亡断定時刻などというものは採用されなかったかもしれない。
となると最有力容疑者は或真敷ザックではなく或真敷バランになるのだ。
(それも真実ではないが、セリフが第1話時点の成歩堂のものであること、
そしてバラン自身が告白するまで成歩堂視点でもバランが怪しかったことを考慮すると仕方ないだろう)
そしてそもそも捜査がじっくりされていればよくわからん証拠品が用意されてそれを使う余地など本来はないはずなのである。

本来、事件の事実関係を明らかにして真犯人を断定するのは警察と検察の仕事。
それがまともにできなくなってしまっているのが序審法廷制度のある逆転裁判世界なのだ。
頑張れ弁護士たち。

これは個人的な感想だが、
「現在の制度が生み出した”ゆがみ”のようなもの」というセリフから、
法曹界の歪み、ユガミ検事こと夕神迅が生まれたと考えると面白い。

「MASONシステム」とテクノロジー

逆転裁判4最大の謎要素と言ってもいい「MASONシステム」(以下、メイスンシステム)。

裁判員に成歩堂の独自調査を追体験させるための「ゲーム」だと思われるが、ゲームそのものがメイスンシステムなのか、それを成り立たせるOSやプログラム、もしくはハードに当たるものがメイスンシステムなのかもはっきりしない。
だって誰も作中でメイスンシステムって言葉を使わないんだもん。

とりあえず、一旦「ゲーム」に焦点を絞る。
この「ゲーム」を考察するにあたって重要なのは以下のポイントだ。

  • 成歩堂の7年前からの調査を元に作られていること

  • 「ゲーム」中の視点は成歩堂のものであること

  • 調査できるのは「7年前」と「現代」の限られたタイミングの限られた地点(それぞれ4か所)のみであること

  • 裁判1日目より後の時系列の調査ができる(=そのタイミングのデータが入っている)こと

  • 全てを事実と受け取ると時系列上でムジュンが発生すること

これらを踏まえてメイスンシステムとは、「ゲーム」とは何なのかと考察した結果、自分は一つの結論に至った。

メイスンシステムは「入力された情報と条件を元にほぼ一瞬で探索型ゲームを出力できるプログラム」であり、
「ゲーム」は「成歩堂の調査記録を、時間短縮のためプレイヤーが調査できるタイミングと場所を極限まで絞って簡略化して追体験できるようにしたもの」だ。

まずメイスンシステムについてだが、出力されるのが他人にプレイさせる「ゲーム」である以上は1度はテストプレイが必要だろう。
その点を考えると、中央刑務所を訪れてから情報を入力して「ゲーム」を作ることができる時間はあまりにも短い。(元々滅茶苦茶短い気もするが)
ほぼ一瞬でゲームを出力できると考えたのはこれが理由である。

次に「ゲーム」についてだが、裁判員は法廷2日目が始まるまでにこれをクリアできていなければならない。とすると、短時間で調査を終えてもらう必要がある。ある程度の「簡略化」があったと考えるのは容易である。
そして、もう一つ。
「成歩堂龍一は本当に7年前と現代でしか調査を行っていないのか?」という疑問がある。
本当の調査期間は7年前から現代までの7年間ではないかという話だ。
6~1年前の調査で手に入れた情報までも無理やり7年前と現代に押し込んだため、時系列上のムジュンが発生したのではないだろうか?

さて、上記の通り自分はメイスンシステムを「入力した情報を元に、ほぼ一瞬でゲームを出力するプログラム」だと考察したが、この考察のヒントになったものが4より後の作品に存在する。
逆転検事シリーズに登場する「ぬすみちゃん」と、逆転裁判5以降に登場する「モニ太」である。

「ぬすみちゃん」は、「一条美雲が入力した情報を元に、一瞬で現場を再現した立体映像を出力する装置」である。
入力時間はかなりの短時間であるにもかかわらず、かなり細かいところまで現場再現がされる。

「モニ太」はホログラムのディスプレイが特徴的な、多機能な小型コンピュータ。
特筆すべき機能は「ココロスコープ」に使用されるものだろう。
これは、「希月心音が読み取って入力した情報を元に、一瞬で証言の内容を再現した映像とそれに合わせた感情表示の出力をする機能」である。

もうお分かりだろう、あの世界には「入力した情報を元に、一瞬で高度な生成物を出力する技術」が存在しているのである。
4のメイスンシステムもその類であり、開発資料にも情報があったがプレイヤーには開示されず、「技術の存在」のみが検事シリーズ以降に受け継がれ、それらはプレイヤーに簡単な説明が行われるようになった‥‥のではないだろうか?

正直、「ゲーム」については検事シリーズを遊んだ後の方が「再現物」だと理解しやすいとは思う。3までにはなかった要素だからね。

「法のムジュン」と着地点

逆転検事2では、度々「法のムジュン」が描かれる。
目の前の真犯人を、現行法に則っていては正式に裁けない‥‥

このような状況は、逆転裁判4でも見られた。
他ならぬ牙琉霧人である。

忘れられがちだが彼はボロこそ出すものの、決定的な証拠は全て隠滅しており、現行法に則っていては裁くことのできない存在である。
第1話からして、彼の犯行を暴くために主人公サイドは捏造証拠を使わされている。
そして第4話では法律を盾に立ち回りついに犯行は立証されなかった、が法に置いてけぼりにされてプライドをズタズタにされた
成歩堂を失脚させたことも含め、極めて悪質で恐ろしい犯人なのである。
イレギュラーに計画潰されまくってるけど。

第4話が通常の裁判であれば、被告人の絵瀬まことの無実は立証できず有罪になってしまっていただろう。
目の前の無実の人を、現行法に則っていては救えない‥‥
検事2とは逆の立場ではあるが、法のムジュンを描いているのが4の第4話である。立場が逆なのは「本当に立場が逆(検事と弁護士)だから」だろうか。

4はこの法のムジュンに対し裁判員制度がテスト段階に入るという形で、「法も変わっていくべきである」という答えを示した。(第1話で序審法廷に触れたのも今後への布石だったのだろうか‥‥)
検事2は4の後に作られた作品だが、時系列的には4の前の作品でもあるため、4で既に用意された答えに向かって制作された‥‥と考えるのも面白いかもしれない。

ちなみにさらに極端にして「こんな悪法今すぐ変えろ」にしたのが逆転裁判6だと思われる。
(本当に法を変える展開をやるには弁護罪くらい極端な悪法でないと厳しかったのかもしれない)
3作品に共通するのは、「現行法が絶対に正しいとは限らない」というテーマを抱えている点だろうか。
(5の特別編もマシンガン関連で一応このあたりに触れていそう)


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