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「すずめの戸締まり」みたいな話が読みたいと

 そう言われたらどうしますか?
 相手は7〜8歳の女の子で、小説版の新海誠作品を勧めるにはまだ早い。他に読んでいる作品は国語の教科書に載っているスイミー、がまくんとかえるくん、スーホの白い馬など。
 キーワードは「泣ける」「悲しい」「感動」。

①震災の話を勧める
つなみてんでんこ、震災を駆け抜けたノラ猫など。

②家族との別れの話を勧める
おじいちゃんがおばけになったわけ、このあとどうしちゃおうなど。

③友達を助ける話を勧める
おちびさんじゃないよ、ともだちのしるしだよなど。

④何らかの犠牲が残る話を勧める
八郎、泣いた赤鬼、ごんぎつね?
年齢的に早い気もする。

 それで結局、私がその女の子に勧めたのは

「かわいいこねこをもらってください」

 という本です。

 え。どこがすずめの戸締まりなの?
 と思うかもしれないけど、「飼いたいと言った猫を手放してしまう」「悲しいけどバッドエンドではない」「猫が白い」と、三つも共通点があります!
 これはもう、すずめの戸締まりそのものと言ってもいいですね!←

 そんなわけはなかった。
 でもその女の子はすごく喜んでくれたし、泣けると太鼓判も押してくれた。

 結果オーライだけど、すずめの戸締まりは猫を手放すことの悲しみや後悔をあまり描いていないのです。背後にある使命や過去の出来事や因果のほうがあまりにも大きい。
 だからこそ、地震や家族との別れや人助けよりも、猫を手放した結末が私の心に引っかかっていたのかも。

 心理描写や感情表現の少ない部分ほど心に残る現象、なんなんだろうね。書き手側が重要視していない場合と、敢えて描写を抑えてる場合がありそう。自在に抜き差しできる文章が書けたらいいよね。引き算しながら作る作品が好き。

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