何かをギューっと抱きしめる
ピーナッツというチャールズ・シュルツさん
の漫画の中にライナスといういつも毛布を持
ち歩いている男の子がいる。
このキャラクターを目にするたびにいつも
移行対象という言葉が浮かぶ。
移行対象とはイギリスの小児科医、精神科医
のドナルド・ウィニコットの提唱した考えだ。
乳幼児は母親と一体、未分化だった状態から
だんだんとしつけなどを通して、少しずつ分
離分化してゆくが
子供はとてもストレスフルな状況へ放り出さ
れる。
その際、母親の感覚を思いださせる特別な愛
着のある毛布やぬいぐるみやタオルなどで欲
求不満や不安を落ち着かせたりする。
お気に入りのぬいぐるみという、移行対象を
ギューと抱きしめることで
お留守番ができたり母親を一人で待つことが
できるのだ。
このところ、伊藤絵美さんの著書「セルフケ
アの道具箱」を患者さんと一緒に学んでいる。
その心を落ち着かせるワーク9番目
何かをギューと抱きしめる
パートナーや友人、毛布やクッション、ぬい
ぐるみ、自分自身も抱きしめましょうとあ
る。
いつも誰かとハグするような習慣はないけれ
ど、ハグする、されることでお互いのドーパ
ミンやオキシトシン、幸せホルモンが増える
という研究結果などもあり、そのことはとて
もよくわかる。
肌や皮膚に触れることを仕事にしていたりす
るからなおさらだ。
傷ついたり、関係が切れてしまったり、つな
がりを感じられなかったり、大人だって
たくさんの分離不安を抱えていたりする。
そんな不安定な自分の弱さにも自尊心がまた
傷ついたりもする。
たとえば
大人の心の中にも
子供を抱っこするマリア像や観音様のような
母性のイメージの元型みたいなのがあって、
それは人間の成長と深い関係があることを述
べているのはユングだったり
水のような
柔らかく脆弱なものが一番強いという老子
のように
何度も何度も
母性的なものとつながってケアされることな
く人は自立することなんて決してできないと
しみじみ思うのだ。